花の命はノー・フューチャー

後編 未来をふみたおせ!

『花の命はNO FUTURE――DELUXE EDITION』刊行記念対談

後編です。今回は、アナーキーな愛で、あなたの心に火を付けます。 『花の命はノー・フューチャーーーDELUXE EDITION』(ブレイディみかこ著、ちくま文庫、2017年6月)の刊行を記念し、ブレイディさんに政治学者の栗原康さんと対談していただきました。8月24日下北沢のB&Bにて。

 

■『死してなお踊れ』は長渕剛入ってる

ブレイディ 私、『母の友』に栗原さんの『死してなお踊れ』の書評を書かせていただいたんですよ。野枝本は女性を書いているから女性目線が入っているじゃないですか。こっちは本当に……。

栗原 男子です。

ブレイディ ですよね。長渕が結構入っている感じがしたんですよね。栗原さんって文章上手いじゃないですか。この崩しの文体で、音楽ファンからしたらレイヴ感満載みたいな。仏教レイヴ本みたいな言葉で攻めてくるのでまずビックリしました。去年栗原さんにお会いしたときに、今、一遍について書いていると言われて、「でも一遍って憑依しちゃうと結構自分も危ないことになりませんか」って聞いたら、「いやあ、そうですかねえ」って。その辺はどうでした?

栗原 ヤバかったですね。一遍は真冬でも衣一枚でだんだん破けて素っ裸で歩いてたりするんですけど、本当にそれで風邪引いて死にそうになったりとかしてますね。それで一枚くらいはちゃんと羽織ろうって規則をつくったりする。僕も書くからには真似しなきゃと思って、真冬でもTシャツ一枚とかで……。でもすぐ死にそうになってやめました(笑)。家で暖房入れていれば大丈夫なんですけど(笑)。

 

■金子文子と伊藤野枝の生

ブレイディ 栗原さんの評伝って、憑依している感じで書かれてるじゃないですか。私も今、金子文子を書いているんです。金子文子は、亡くなり方について、自分で縊死したのかもしれないし、そうでなかったかもしれないと、諸説いろいろあるじゃないですか。けど、もしも自分で死んでいたとしたら、どうして死んだんだろうなという好奇心から書きたくなりました。私は何があっても生きていきたいタイプだから、金子文子とは逆だとおもうんですよ。伊藤野枝も、自殺とかは、考えにくいでしょう?

栗原 考えにくい。たぶん野枝はブレイディさんに近いと思いますね。這ってでも生きていくぞみたいな。

ブレイディ けど、そういう私もたまたま生き延びているんじゃないかというか、いまもすごいヘラヘラして生きていられるのは、きっとイギリスに行っているからなんですよ。もともと日本から出ていきたかったし。貧乏とかはまああるにせよ、私もやりたいように、わりとやってきてる。でも、もしずっと過去21年間日本に住んでいたとしたら、死にたい気分にフッとなったことはなかったかなあと最近妙に感じ始めてきて、こういうことを本気で感じ始めるとヤバいのかなと。

2017年10月6日更新

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ブレイディ みかこ(ぶれいでぃ みかこ)

ブレイディ みかこ

ライター・コラムニスト。一九六五年福岡市生まれ。県立修猷館高校卒。音楽好きが高じてアルバイトと渡英を繰り返し、一九九六年から英国ブライトン在住。ロンドンの日系企業で数年間勤務したのち英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始。二〇一七年、『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)で第十六回新潮ドキュメント賞受賞。二〇一八年、同作で第二回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞候補。二〇一九年、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)で第 七十三回毎日出版文化賞特別賞受賞、第二回 Yahoo! ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞受賞、第七回ブクログ大賞(エッセイ・ノンフィクション部門)受賞。 著書は他に、『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』(ちくま文庫)、『アナキズム・イン・ザ・UK』(Pヴァイン)、『ヨーロッパ・コーリング――地べたから のポリティカル・レポート』(岩波書店)、『 THIS IS JAPAN ――英国保育士が見た日本』(新潮文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『労働者階級の反乱――地べたから見た英国EU離脱』(光文社新書)、『女たちのテロル』(岩波書店)などがある

栗原 康(くりはら やすし)

栗原 康

1979年、埼玉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科・博士後期課程満期退学。東北芸術工科大学非常勤講師。専門はアナキズム研究。著書に、大杉栄伝―永遠のアナキズム』(夜光社)(第5回「いける本大賞」受賞、紀伊國屋じんぶん大賞2015第6位)、『はたらかないで、たらふく食べたい―「生の負債」からの解放宣言』(タバブックス)(紀伊國屋じんぶん大賞2016第6位)、『現代暴力論 「あばれる力」を取り戻す』 (角川新書)、『村に火をつけ,白痴になれ―伊藤野枝伝』(岩波書店)などがある。