素晴らしき洞窟探検の世界

第2回 探検仲間、砂堀り作戦、グーグルアース

『素晴らしき洞窟探検の世界』(ちくま新書)刊行記念

『素晴らしき洞窟探検の世界』(吉田勝次著、ちくま新書、2017年10月)の刊行を記念し、著者で洞窟探検家の吉田勝次さんと俳優の石丸謙二郎さんの対談を公開します。 ケイビングの師匠・竹内さんに出会い、洞窟探検を始めた吉田さん。第2回は、より洞窟探検の具体的な話に入っていきます。
洞窟探検中の吉田勝次氏


石灰岩の山をうろつく日々
吉田 洞窟探検をやり始めて、竹内さんの元に通って色々教えてもらおうと思ったんですが、結局1人で毎週末、石灰岩の山を走り回って洞窟を探し始めました。「すごい縦穴があったらどうする?!」なんて思いながら、200mのロープをそのまま担いで歩いてました。ロープはカバンに入れて使うというのは後で知って……いま思えばバカなんだけど。
石丸 吉田さんはいきなり凄いことをするよね。普通の人なら、そんなことをしていると怪我したり、死んじゃったりするよ。それに、それを1人でやっているというのも変。
吉田 異常な情熱があったんですよね。登山やってるときに満たされなかったものが、そこにはあったから。東京にはケイビングをやっている人は少しはいたけど、地方にはほとんどいなかった。ネットで検索する時代でもないし、100%独学でした。
 竹内さんから教わったのは洞窟の自慢話と、「UFO観た」とか「森の中でオバケ観た」とかの話ばかりだったし(笑)。それでもっと勉強したいと思って、海外にも行くようになりました。「洞窟探し」というのもあるんだけど、フランスとか本場に行って、いろんな技術を直接現地で教わろうかと思って。道具を買って使ってみて、海外の人と洞窟探検して、情報交換もして。
 それで29歳になったころ、海外遠征したくなってきた。どうやって洞窟に行けばいいかはわからなかったから、とりあえず山に登りに行こうとマレーシアのキナバル山に行ったんです。ボルネオには世界最大のホールがあるので、何でそこに行かなかったんだと、今なら思うんだけど。
 そのとき向こうで知り合った日本人が、流暢な英語を話して楽しそうにしてて、「海外に遠征するなら英語が必要だな」と思った。それで帰ってきた後に英会話スクールに通うことにしたんですけど、それがまた洞窟探検に意外なところでつながって来るんです。

洞窟探検の仲間をつくる
吉田 
ところで、その頃に山で遭難したんです。沢だったのですが、増水して、すごい濁流で。そんなときに、ガケを下りてから、沢を向こう岸に渡らなきゃ行けなかったんです。一番手の人は渡れたんだけど、僕はガケをざーっと落ちて、渡ろうとしたら足がはまってしまって、バキッと骨が折れた。2、30メートル流されて、足をふったらブラブラして。「足が折れました!」って。関節がパカッと開いちゃって。
石丸 本当?!
吉田 で、その頃はさっき言ったみたいに洞窟探検は一人きりでやってたんですが、この経験で、仲間がいないと助からないなと思っていて。それで、英会話スクールの日本人の先生、アメリカ留学帰りで、2つ年下の人と仲良くなったので彼に洞窟探検の話をしたら、「それ、面白そうだね」となって。ノリがアメリカ人なんですよ。「じゃあ、クラスみんなで行こうか!」となって。それで行ってみたら、意外とみんな面白がってくれて。
石丸 観光洞じゃないところ?
吉田 そう。ヘルメットはホームセンターで買って。その噂が学校で広まって、多い時は50人くらい連れて行きました。
石丸 まだ本人もそんなに経験がないときでしょ?
吉田 知ってる穴だけ行くんです。このとき思ったのは、誘えば結構みんな来るんだなということと、ほとんどの人は続かないな、ということ。でも、最初に話した先生は来続けるようになった。それでメンバーを集めるために、彼がホームページも作ってくれて。すると、ホームページを見た東京の人が来るようになり、「来週も来たい」という人もいて。2回目からは、誓約書を書いてもらって隊員になってもらうことにした。そうしたら、1年目で多い時は70名くらいまでメンバーが増えた。
石丸 ほおー。

左:吉田勝次、右:石丸謙二郎、写真:畠山泰英(科学バー/キウイラボ)


吉田 メンバーはメーリングリストも作って、皆でやりとりしていました。そこに僕にも加わってほしい、となった。それで一式揃えてもらってコンピュータをやりはじめたら、なんちゅう便利なものだと感激して。仲間集めや海外の情報収集など、「あーこういうふうにやるのか」と。英語の先生だから、海外に問い合わせてくれたりもしました。人には色々と頼んでいるけれど、そのようにコンピュータと英語を「できる」というのは大きかった。
 そして、そのチームには、「ジャパン・エクスプロレーション・チーム」、通称JETという名前をつけました。訳すと「日本、探検、仲間」。全国区の組織にしたかったんですよ。
石丸 「探検」はあるけど、「洞窟」はチーム名に入ってないんですね。
吉田 洞窟はたまたまという感じで、探検がやりたいことだったんです。
石丸 え、洞窟探検家になりたかったわけじゃなくて?!
吉田 洞窟にはもちろん未知の世界を知る喜びがあるんだけど、でも「洞窟が好き」というよりは「未知なものが好き」。未開のジャングル、食べたことのない料理……洞窟がいまはメインだけど、ケイビングだけじゃない。