素晴らしき洞窟探検の世界

第2回 探検仲間、砂堀り作戦、グーグルアース

『素晴らしき洞窟探検の世界』(ちくま新書)刊行記念

『素晴らしき洞窟探検の世界』(吉田勝次著、ちくま新書、2017年10月)の刊行を記念し、著者で洞窟探検家の吉田勝次さんと俳優の石丸謙二郎さんの対談を公開します。 ケイビングの師匠・竹内さんに出会い、洞窟探検を始めた吉田さん。第2回は、より洞窟探検の具体的な話に入っていきます。

安家洞の砂堀り作戦
吉田 そうして人生でたまたまやり始めたことが、どれも洞窟探検に、とても役に立っていて。特に、仕事の建設業は直結しています。どれくらいの傾斜で掘ったら崩れないか、とか。
石丸 建設業の人で洞窟探検している人は、なかなかいないよね。
吉田 そうなんですよ。日本最長の洞窟「安家洞」はいま23kmで、そのうち5km分が一気に延びたとき、その入口を見つけたのは僕なんです。それは、建設業の経験を使って、砂の中を掘り始めたことが大きくて。
 それまでは、人が通れるくらいの穴しか掘ってないから砂が引き出せなくて、人の背丈分くらい掘ったら行き詰まってたんですよ。それで、建設業の視点から、「なんちゅう効率の悪いことをしているんだ」と思ったわけです。そう話したら、じゃあ「掘るリーダーは吉田さんやってください」ということになって。それで「とりあえずこれくらいの穴を掘って行きます」と言ったら、大ブーイング。でも構わず、図面を書いて「傾斜を30度にします。なぜならそれ以上の角度にすると砂は崩れて穴が埋まるから……」とホワイトボードに書いてきちんと説明して。あまり納得はしてもらえなかったけど、なんとか現場まで行って、掘り始めたんです。大量の砂を出すから、掘り進むスピードは遅かったわけですが。
石丸 どうやって砂を外に出すの?
吉田 最初はスコップで、狭くなると子供用のソリの上に砂を載せてロープで引っ張って出します。
石丸 映画「大脱走」といっしょですね。
吉田 スコップは、柄の部分を切ってコンパクトにした、取っ手と掬うところだけしかないものを作って。「ファイヤー!」って言ったらソリを引っ張って出して、という約束で。穴は真っ直ぐじゃないですから、途中に人を置いて、「ファイヤー」「ファイヤー」「ファイヤー」と伝言で伝えて、一番外の人が聞いたら、思いっきり引っ張っる。すると、子供用のソリがボブスレーのように一瞬でヒューン! って外に引っ張り出されて、砂が捨てられるわけです。それで大型ダンプ三杯分くらいやったかな。
石丸 ひょえー。
吉田 ソリを一杯にするのが5秒くらい。シャ、シャ、シャ、「ファイヤー!」の繰り返し。3日目でみんなから「続かないよ、やめよう」と言われ始めて……「貴重な正月休みをこんなことに使ってはもったいない」と。みんな先が分からないし、やりたくないんですよ。でも僕は掘るのが好きだし、先がありそうな気がしたので、やりたくて。半分嘘なんですけど、「もうすぐ抜けそうな気がする」とか言ってごまかして続けました(笑)。
石丸 ふふふふふ。

ついに貫通!
吉田 僕はそこを見て、なんでここに砂があるのかをわかってました。要するに、水が砂を運んでくるんだけど、水の勢いがだんだん小さくなってきて、砂のあいだをちょろちょろ流れて、しまいには水が見えなくなる。「これだ! 絶対に向こう側に空間がある」と思って。
 そしたら、掘り始めて6日目に抜けたんですよ。岩に沿って掘っていて、髪の毛に風がふわっと当たったような気がしたんです。「あれ? 近いぞ!」それで、いかんせん一週間近くも掘ってるから、早くしなきゃと焦りながら懸命に掘って。
 で、いきなり「抜けた!」って言ったら、皆がパニックになるので、ちゃんと抜けてから言おうとガマンして。それで掘り進めたら、どさっと崩れて! その瞬間に風がぶわーっと来て、「抜けた! 抜けたーーー! みんな来い、来い!」と。でもそのときは既に「あいつは何を言っているんだ」と愛想をつかされている感じで、誰も本気にしてくれないんですよ。
石丸 あはははは。
吉田 しばらくしてようやく本当に抜けたことがわかったら、「ギャー」ってなって、もうみんなパニック(笑)。
石丸 距離は?
吉田 20mくらいでしたか。これ後でわかった哀しい事実なんですけど、夏に水が増えると、そこが砂でまた埋められちゃうんです(笑)。パイプでも通せばいいんですけど、すごく狭い洞窟の奥なので、それもできず。でも、この発見で安家洞は5km延びたんです。
石丸 それ覚えているなあ。安家洞がそれで1位になった。15年くらい前?
吉田 それくらいですかね。で、この発見をしたときに、洞窟探検ってめちゃくちゃ面白いなあと思ったんですよ。あと、このときカメラも持ってたんです。あまりいい写真は撮れなかったんですが、そのとき撮った写真を現像して、見たらシビれちゃって。まばゆい白い鍾乳石ばかりだったから。

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