素晴らしき洞窟探検の世界

第2回 探検仲間、砂堀り作戦、グーグルアース

『素晴らしき洞窟探検の世界』(ちくま新書)刊行記念

『素晴らしき洞窟探検の世界』(吉田勝次著、ちくま新書、2017年10月)の刊行を記念し、著者で洞窟探検家の吉田勝次さんと俳優の石丸謙二郎さんの対談を公開します。 ケイビングの師匠・竹内さんに出会い、洞窟探検を始めた吉田さん。第2回は、より洞窟探検の具体的な話に入っていきます。

洞窟の見つけ方① 人に聞く
石丸 ところで、さっき1人で山をうろついていた話をしていたけど、今の吉田さんは洞窟をどんな方法で見つけるんですか?
吉田 詳しくは本に書いたんですけど、まずは人に聞くこと。村の生き字引みたいな人を教えてもらう。それで、洞窟について、その人自身に訊くか、詳しい人を紹介してもらう。そういう人はだいたい猟師さんですね。
 洞口は、こうした聞き取りがないと、簡単には見つかりません。大きな穴はもうすでに調べられちゃっているし、村の人もそれは知ってる。だから、イメージとして、針ぐらいの大きさの「点」とも言うべきものを探さなければならない。そんなだから、一から探しても、見つからないんですよ。
 でも、生き字引の人に「あの山の登ったところに大きな松があるから、そこの右側の沢をずっと登っていくとシャクナゲの群生地があって、その真ん中くらいにあるから」という感じのことを聞いたとして、実際に行ってみても、シャクナゲの群生地にすらたどり着かないんですよ。まず、どの松だという(笑)。
 自分たちで5回行って、でもまったく手がかりないときがあって。それで猟師さんに「連れてってください」って土下座する勢いで頼んで連れてってもらったら、穴は見つかったんだけど、教えてもらった道とは全然違って! なんと隣の山だった(笑)。
石丸 あはははは。
吉田 「教えた通り、あっただろう」「山一個、違うじゃん!」ってなりましたね。人の記憶って全然当てにならない。だから、とりあえず人に聞いて、案内してもらうところまで約束するんです。

洞窟の見つけ方② 地質と地形を見る
吉田 洞口を見つけるヒントの2番目は、地質と地形。むかしは地形図を見て、地質と照らし合わせて、ここにはありそうだって当たりをつけて、歩いて探しました。最近はグーグルアースを使います。高低差もわかるから、ここの窪みが何メートルだ、とか見て。地質図をグーグルアースに重ねたりもできます。それで、現地に行って、見るのは、やはり地形です。あと最終的には風、水の流れとか。
石丸 水の流れというと、川?
吉田 洞窟ができるためには、必ず水が流れ込む必要があります。水が流れ込むためには、そんな地形が地上に必要です。詳しくは本を読んでほしいんですが、「ドリーネ」と呼ばれる漏斗状の地形とか。あと壁なんだけど、いきなり川がはじまってるところとか。それと風が吹き出したり、吸い込んだりしているところとかも探します。
石丸 吸い込んでいるのは、どうやって見つけるの?
吉田 近くに行って、煙をだしてみたり(あんまりやらないですけど)。吹き出す方は、近くに行くと、ふわーっと冷気がでてきたりしてるからわかります。
石丸 「動物が落ちて死ぬ」とかの、昔からの村の言い伝えもあるんじゃない? 
吉田 縦穴とか? 日本の場合は姥捨伝説ですね。山の上に運ぶんじゃなくて、穴に放り込んじゃう。そういうのは聞きます。あと、枝折と書いて「しおり」という地名があったりする。枝を折るのは、帰りに息子が道に迷わないように、お婆さんが枝を折る。
石丸 本当ー!
吉田 骨は見つかりませんでしたけど。あと地名ですが「白石」、「白谷」といかいうところは「石灰岩」の場合がよくあります。石灰岩地帯には「白」がつくところは多い。
石丸 エーデルワイスが咲くところは洞窟が多いんでしょ?(注:エーデルワイスは、ヨーロッパアルプスの高度2000m以上の山にある石灰岩地帯に自生する)
吉田 石灰岩の地質って植生にも特徴があるんです。アルカリ性だから、咲きやすい花がある。
石丸 エーデルワイスはオーストリアの話でしょ。でも北海道にもあるから「未踏の洞窟があるんじゃないか」って、北海道の人が言ってた。
吉田 あ、北大の人たちが見つけた「北海洞」(ホッカイドウ)っていう名前の洞窟があります。
石丸 北海洞(笑)。
吉田 ドウの字は「洞」。北海道には洞窟が少ないから貴重なんです。
石丸 あと一か所、観光洞があるでしょ。
吉田 本の巻末で洞窟壁画研究者の五十嵐ジャンヌさんとの対談で話しているんですが、「フゴッペ洞窟」という洞窟で、そこには壁画があるんですよ。解読されてないんですが。

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