上田麻由子

第14回・まぼろしの2017年

2017年2・5次元舞台ベスト10

2017年2・5次元舞台ベスト10
 毎回、2・5次元舞台作品をひとつ取り上げる本連載だが、今回は番外編として2017年の2・5次元舞台ベスト10を選出したい。基本的には、筆者が自腹で観に行った舞台のなかで、2・5次元舞台としての新しさ、挑戦を感じたもの、厳密に言えば2・5次元ではなくても2・5次元の文脈なしには語れない作品を取り上げてきたので、バックナンバーをそのままベストとして挙げても良いのだが、落穂拾いも兼ねてあらためてこの一年を振り返りたい。

 筆者の2017年ベスト10は以下のとおりである(公演日順、表記はこちらで二重括弧に統一した)。

・ミュージカル『刀剣乱舞』 ~三百年の子守唄~(2017/3/4〜5/21)
・ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』“勝者と敗者”(2017/3/24〜5/7)
・ミュージカル「スタミュ」(2017/4/1〜16)
・ミュージカル『テニスの王子様』青学vs立海(2017/7/14〜10/1)
・超進化ステージ『デジモンアドベンチャー tri.~8月1日の冒険~』(2017/8/5〜13)
・『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ』〜Judge of Knights〜(2017/9/7〜9/24)
・劇団シャイニング from うたの☆プリンスさまっ♪ 舞台『マスカレイドミラージュ』(2017/9/28〜10/8)
・舞台『KING OF PRISM -Over the Sunshine!-』(2017/11/2〜12)
・舞台『ACCA13区監察課』(2017/11/3〜12)
・舞台『刀剣乱舞』ジョ伝 三つら星刀語り(2017/12/15〜12/29)

刀たちの「モノ」語り
 まずは総論として、2017年の2・5次元舞台を振り返ると「毎週どこかで新作公演が行われている」というくらい、ものすごい数の舞台作品がつくられているここ何年かの状況は変わらないなかで、劇場不足もあいまって、人気公演のチケット難がより加速した。映画館でのライヴビューイングやインターネット配信、BS放送などの増加により、公演そのものをタイムラグなしに観ることはたやすくなった反面、劇場で公演を観るという経験のかけがえのなさ、緊張感、あるいはそこにたどり着けなかったときのせつなさ、苦しさがより浮き彫りになったように思う。

 そういう意味では、今年はミュージカル2作、舞台3作、ライヴ公演2作が行われた『刀剣乱舞』にはじまり、『刀剣乱舞』に終わった一年だったといえるだろう。ゲームを原作として、名だたる刀剣に宿った付喪神である「刀剣男士」たちを主人公にした本作のメディアミックスにおいて、風向きを変えたのは『三百年の子守唄』(第8回・まぼろしの歴史)だった。それまでアニメ、ミュージカル、舞台では、刀剣男士が過去に派遣されて元の主と再会し、歴史を守るという使命と、忠誠心のあいだで揺れる姿が描かれてきた。そこにある苦悩は切実なものかもしれないが「史実を変えられない」という縛りがどうしてもあったなかで、『三百年の子守唄』は、刀剣男士たちが歴史上の人物に成り代わって徳川家康を赤ちゃんから育てるという大胆な設定を取り込み、また若手だけでなく2・5次元での経験を培った30代の俳優を迎えることで「刀剣男士」をつかった物語の可能性をおおきく拓いた。

 それを端緒とするかのように、舞台版のほうでも『義伝 暁の独眼竜』で「ループもの」に取り組み、『外伝 此の夜らの小田原』ではスピンオフとして行間を埋めつつ、さらなる行間を思わせる楽しみを、本物の小田原城の前でたった一夜限りの特別な公演として、大雨という天気のなか、役者たちが吐く白い息、髪に滴り落ちる雨粒のきらめきさえも味方につけて行われた。そのうえで、『ジョ伝 三つら星刀語り』は(公演中なので詳しくは明かせないが)、アニメなどの2次元からの影響を大いに受けた時間や歴史をめぐるSF的奇想を、2幕構成の舞台というフォーマットを大胆に活かして描き、かつこれまでの『刀剣乱舞』における禁忌(たとえば刀剣男士は正体を明かせない)に果敢に挑みながら、「刀剣男士と元の主」という関係性の一つのハッピーエンドを見せてくれた。「ミュ」と「ステ」で、刀剣男士という存在の手触り(人間寄り、神様寄り)が微妙に違うのもまた面白い。「三部作」と予告される物語の途中とはいえ、本作は現時点での 2・5次元というメディアミックスにおける一つの集大成といえるだろう。この公演が、東京ではたった3日間、6公演しか行われないというのは、需要と供給があまりにもアンバランスな例としても印象的だった。

高まり続ける熱
 役者の、そして観客の熱が集まる「場」としての2・5次元ということでいえば、熱の総量がもっとも大きかったのはやはり「ハイステ」ではないか(第7回・まぼろしのオーケストラ)。2・5次元舞台の華、そしてジャンルのなかでのフロントランナーはやっぱりいつもスポーツものであり、役者たちの跳躍する身体が、まるで音符のように舞台を飾り、生というメロディーを、チームというリズムを奏でる。

 また公演直後に行われた「ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』展」は、前例がないわけではないが、まとまった規模のものであり、舞台上の熱を直に感じられる試みだった。衣装や小道具だけでなく、本作のトレードマークであるプロジェクションマッピングが「八百屋舞台」に投影されるのを間近で見ると、とにかくその大迫力に圧倒され、たくさんの熱い試合が、思いがふたたび蘇ってきた。この八百屋舞台(実際に登れるのだが、想像以上の傾斜がついており役者陣の体力の凄さを思わせた)につけられた無数の傷は、なによりもこの作品にこれまで費やされた熱量を語っていた(その後、八百屋舞台は「ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』"進化の夏"」でついに廃止された)。

 本連載ではなかなか取り上げることが叶わないが、「テニミュ」もストイックな鍛錬を繰り返しながら、進化と変化のなか14年目を走り続けている。昨夏の『青学vs立海』からは、演出助手にあらたに『CLUB SLAZY』などを手がけた三浦香を迎え、演技でキャラクターを見せるという基本に立ち返ることで、歴代キャストが演じてきたキャラクターの魅力を今一度、捉え直している。ライバルの立海チームは歌唱力とハーモニーを武器に強さと切なさを表現し、なによりもミュージカルとしての「テニミュ」の原点に立ち返る。ベテランであり常にフレッシュでもある存在感は、いまだに他の追随を許さない。

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