上田麻由子

第14回・まぼろしの2017年

2017年2・5次元舞台ベスト10

幻想という理想郷へ
 2・5次元舞台のもうひとつの華であるアイドルものは作品数を増やし、いよいよ群雄割拠の様相を呈してきた。強引な言い方をすれば、元となる2次元のアイドルと、2・5次元の約束事を承知しているキャスト、歌とダンス、何より見る側のそのアイドルへの強い思い入れさえあれば(そういう意味では筆者にとって一番のアイドルステージは目下のところ「あんステ」である)、ある程度は上手くいくのではないかと思う。そのくらいフォーマットが固まってきたし、もともと2・5次元舞台とアイドルというジャンルとの相性の良さもある。「あんステ」で培ったメソッドをふまえ、読者モデル出身などさまざまな出自の若者を集め、俳優としてはまだ荒削りな部分があったとしても、アイドルの輝きをアイドル自身に表現させる『B-PROJECT on STAGE「OVER the WAVE!」』などが後に続いている。

 そのなかでも、青春活劇としての『スタミュ』(第6回・まぼろしの高校生[ハイスクール・スター])のバランスの良さ、上品さ、美しさがあったいっぽうで、その対極にあるような観客を全力で驚かせ、笑わせ、楽しませることに文字どおり全身を賭けた『キンプリ』(第13回・まぼろしの時空を超えて)の原作由来のチャレンジ精神は強烈な印象を残した。キンプリは2・5次元にきてもやはりセンセーショナルなのである。

 そんなふうに、原作の強みに寄り添うようことで舞台化を成功させた作品が多いなかで、『うたプリ』の「劇団シャイニング」シリーズは、アイドルものというにはあまりに次元がこんがらがっているのだが、しかしたしかに「初代」である「プリンスさま」たちの面影を追いながら、語りかけだった物語を一つの完成された作品として見せてくれた(第12回・まぼろしの仮面舞踏会)。「オートマータ」というモチーフを使いつつ、「アイドル」という表象について探る試みにもなっていたという意味でも、やはりアイドルものの一つに数えられるべき作品だ。

無限大な夢のあと
 そのいっぽうで、原作とじっくり向き合いつつ、舞台というメディアならではの表現を模索し、丁寧につくられた秀作もいくつかあった。あまりにも2・5次元舞台が多いため、そういった作品が華々しい作品の影に隠れてしまうのは勿体ないことである。

 たとえば『デジモン』は少年少女向けアニメが原作だが、モンスターたちとの子どものころの心躍る冒険の「その後」を、決してノスタルジーに陥らない、今の目線から描いていた(第10回・まぼろしの8月1日)。いっぽう『ACCA』は、クラブexというコンパクトな円形劇場を活かして、原作における2人のキャラクターの「見る/見られる」というスリリングな関係の共犯者に観客を引き入れつつ、ベテランの役者陣のにじみ出るような渋さもあいまって、静かで大人な世界観を表現していた。プロジェクションマッピングや派手なオープニングのついた2・5次元に馴れてしまったいま、あくまでアナログに、人力でやりきる上記のような作品が、あらためて新鮮に映る。

 考えてみれば2017年における2・5次元のおもしろさをまさに体現していた『刀剣乱舞』が強いのは、ミュージカル版(刀ミュ)が2部として導入したライブステージや「真剣乱舞祭」がアイドルものの要素を持ちつつ、役者の身体能力を、殺陣という一種のスポーツ的な要素で十分に発揮できること、そのうえで無限と思えるほどのキャラクターのバリエーション、組み合わせを持ち、なおかつ物語的に大胆な挑戦が許されるほどの余白があるおかげだろう。他にも少し視野を広げてみれば、アイドルライヴの亜種として、CGによるヴァーチャル・ライヴ(『あんさんぶるスターズ!DREAM LIVE -1st Tour “Morning Star!”』など)や、舞台を皮切りにアニメなどへメディアミックスしていく自称「逆2・5次元」の『錆色のアーマ』、2・5次元で名を馳せた役者を取り込んだ「下弦の月」バージョンを追加した劇団☆新感線の『髑髏城の七人』など、すぐ近くで気になる動きも少しずつ始まっている。来年もこのジャンルがどこへ向かっていくのか注視していきたい。

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