ちくまプリマー新書

超ミクロカラー写真が明かす人体の神秘

坂井建雄『カラー新書 世界一美しい人体の教科書』――はじめに

私たちにもっとも身近な存在でありながら、いまだ解き明かされない神秘に満ち溢れた人体。第一線の研究と、光学顕微鏡や走査顕微鏡をはじめとする最新鋭の技術で撮影した100枚の美しい超ミクロカラー写真で、主要な臓器のなりたちと働きをわかりやすく解説。科学の力でからだの中身がここまでわかった! 驚異の世界へとご招待します。

 皆さんは、自分の体のことをどれほどよく知っているでしょうか?
 おそらく健康なときには気にすることもなく、体が働くのを当たり前と思っていることでしょう。ところが、体調を崩したり、どこかに痛みを感じて動かせなくなると、とたんに自分の体のことが気になり意識を向けるようになります。
 自分の体が健康なのは当たり前のように思っていますが、それを成し遂げるために、体内ではいろいろな臓器や器官がきちんと役割を果たしているのです。
 人間の体は、約37兆個の細胞でできているといわれています。その細胞たちが集まって臓器や器官をつくり、大切な機能を営んでいます。体には脳や心臓や肝臓などなど、役割の異なるさまざまな臓器がありますが、臓器の内部をミクロに見ていくと、そこには目をみはるような美しい世界が広がっています。まるで宇宙を見ているような錯覚に陥り、人体が「小宇宙」と呼ばれていることに納得させられます。
 そのミクロの世界からズームアウトしていくと、今度は生々しいマクロの世界が展開しています。ここでは、生命と健康を守るために、私たちが食べ過ぎたり飲み過ぎたり、無茶をしても正常な状態に戻そうとして、昼夜を問わず黙々と働いている臓器や器官の姿を見ることができます。
 それぞれの臓器や器官の働きを知ると、事故や不調を起こさずに体が正常に機能していることのほうが、むしろ奇跡であることを思い知らされます。
 人体は未だに謎が多く、神秘に満ちています。滑らかで無駄のない動きをつくり上げている骨と筋肉、生命を維持するために必要な物質を外界とやりとりしている内臓たち、不眠不休で拍動を続けている循環器、そしてこれらを絶妙な采配で統括している脳。体のどの器官を取り上げても驚くほど精緻で、洗練された生命の営みを見出すことができます。
 これほど見事なまでにつくり上げられているのが、私たち人間の体なのです。
 皆さんがいま、この本を手にとって読んでいるときも、体の中ではいろいろな器官が働いています。まず、手にしてページをめくるために、腕や手の指の骨や筋肉が働いています。眼は、活字を読むために焦点を合わせ、文字を追うために筋肉が眼球をしきりに動かしています。もしも揺れる電車の中で読んでいるなら、体のバランスをとるために耳も働いています。そして、内容を理解するために脳がフル稼働しています。何も考えずに、ただ歩いているだけでも全身の器官を使っているのです。
 このように、当たり前に行っている動作の一つ一つに、体のいろいろな器官がかかわっています。その体の部分にちょっと意識を向けて動かしたり、その部分に触って、体の働きを実際に感じてみてはいかがでしょう。
 自分の体を知ることは、生命の神秘に触れることでもあります。一つ一つの臓器や器官の構造や役割がわかってくると、人体を支える精緻なメカニズムに感動するでしょう。自分がいかに大切で、かけがえのない存在であり、家族や友人たちも同じように尊い存在であることに気づくことでしょう。
 それでは、神秘に満ちた小宇宙の旅に出かけることにしましょう。

 

2018年4月12日更新

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坂井 建雄(さかい たつお)

坂井 建雄

1953年生まれ。解剖学者。東京大学医学部卒。順天堂大学医学部・大学院医学研究科教授、日本医史学会理事長。人体解剖学、腎臓と血管・間質の細胞生物学、解剖学史・医学史をめぐる研究を通して、数々の驚きと感動を届けてきた。著書に『ぜんぶわかる 人体解剖図』(共著、成美堂出版)、『人体観の歴史』(岩波書店)、『プロメテウス解剖学アトラス』(監訳、医学書院)、『腎臓のはなし』(中公新書)、『面白くて眠れなくなる人体』(PHP文庫)、『面白くて眠れなくなる解剖学』(PHP研究所)、『人体キャラクター図鑑』(日本図書センター)など多数。