ちくま文庫

お金の「使い方」を変えてみる

著者である藤原和博さんが、「自分が幸せになったお金の使い方」その18の方法を語った文庫『人生の教科書[おかねとしあわせ]』が刊行されました。解説の木暮太一さんは、「この本は、お金の使い方に革命を起こすかも?」と書いてくださいました。お金は額より使い方が問題だ! お金で幸せになるヒントをつかんでください。

 本書は、お金の使い方に「革命」を起こすかもしれません。

 どうすれば、もっと収入を増やせるか
 どうすれば、もっとお金が貯まるか

 そこに目を向けている人は大勢います。しかし、仮にその方法を知っても、ぼくらの生活は変わりません。お金を手にしても、その使い方を知らないからです。
 新入社員の時と比べると、だいぶ年収が増えている人が多いと思います。人によっては、額面が何倍にもなっているでしょう。でも、収入が増えた分だけの豊かさを実感している人は、ほとんどいないと思います。お金が増えただけでは、幸せにはなれない。大事なのは「使い方」なのです。
 お金の使い方に関し、経済学では「満足感を得るものを買うのが、合理的な消費活動」と解説されています。確かにその通りです。ただ、その「満足感を得るもの」は、社会の発展とともに変わっていくことを、ぼくらは自分自身で知らなければいけません。
 またそもそも、ほしいものがない、何がほしいかわからなくなった、という人も多いのではないでしょうか? 一生懸命考えないと「満足感を得られるもの」がわからない時代になりつつあります。
 藤原先生は「ぼくらはお金の使い方を習っていない」と指摘します。まさにその通りだと思います。だから、何にお金を使っていいかわからない。自分としては「ほしいもの」を買っているつもりではありますが、それが本当にほしいものなのか、自分自身がわかっていません。
 安心感を求めてブランド品を買ってしまうことがあります。それがほしいわけではなく、「ブランド」がほしいだけ。「ブランド品=他人に対するアピール」という見方もありますが、最近はむしろ「ブランド=自分に対する説得材料」という捉え方の方がしっくりきます。「このロゴがついているから安心」「いいもののはずだ」と、自分を納得させているわけです。
 かつては、モノが満足を与えてくれました。そして少し前から「モノより体験」になったともいわれています。ただ、いずれにしてもそれらは、誰かが用意してくれたものですね。
 お膳立てされた買い物になれてしまうと、本当に欲しいものを探したり、選んだりする力が衰えます。
 目の前に提供されたモノを買うのはとても簡単ですし、誰かが「これいいよ!」とお膳立てしてくれたサービスを買うのも簡単です。それで幸福感を得られた時代もありました。ですがもし、幸福感を得られていないのであればお金の使い方を変えなければいけません。
 自分自身が「自分にとって価値があるもの」を定義し、自分自身でそれを見つけ、買わなければいけません。
 こうなると、今やぼくらに求められるのは「お金を使う力」ということになります。お買い得品を買うという意味ではなく、そもそも何にお金を使う「べき」なのかを自分で考えていかなければいけない、環境にぼくらはいます。
 本書は、まさにその「お金を使う力」についての指南本です。
 本書を読んで、お金の使い方には「次元」があると感じました。
 まず、モノを買う消費は、対象がその「モノ」だけにあります。それはいわば、「点」としての消費活動です。サービスを買えば、他者が関係してきます。自分が他人とつながるという意味で、「線」の消費活動です。
 そして、いろいろな人が絡むコミュニティに対してお金を使ったり、誰か他の人のためにお金を使ったりしたら、立体的なお金の使い方になります。
これを三次元的な消費活動と定義すれば、将来のためにお金を使うことは、時間軸を考慮した「四次元的なお金の使い方」となります。本書で藤原先生が推奨されている「物語を語れるもの」にお金を使うのは、この四次元的なお金の使い方です。
 本書には、一次元的な「点・線」のお金の使い方から、三次元的、四次元的なお金の使い方に視野を上げる方法が書かれています。より高次元で、より質の高いお金の使い方を知ることができます。
 ただ、ぼくが本書から学んだのは、そこにとどまりません。
「人との絆を結ぶ物語でなければ、お金を使わない」
 藤原先生はそうおっしゃっています。これは「他人と仲良くするためにお金を使う」ということではありません。自分が心地よく感じるもの、その場にいて元気になれるものにお金を使うということです。自分に合った波長やエネルギーにお金を使うということですね。
 これは4次元を超えた「5次元」の世界です。
 物質的なモノを買うのではなく、他者からの行為(サービス)を買うのではなく、「他人との絆」を買い、将来に向けた「物語」を買い、さらには「自分好みのエネルギー」を買う話だと思うのです。
 もしかしたら、ぼくらはこれまで「楽な買い物」をしてきてしまったかもしれません。お膳立てされたものばかりにお金を使っていたら、店先に並んでいるものしか買えなくなり、本当に自分が望んでいるお金の使い方ができなくなるのも頷けます。
 幸福感を覚えなくなったら、お金の使い方を変えてみましょう。そして、何を買ったらいいかわからなくなったら、自分の目線を引き上げてみればいい。一次元、二次元の世界で価値を感じられるものがなければ、三次元、四次元に目線を移すことで新たな発見があるかもしれません。
 お金を使うのは、難しい。考えれば考えるほどそう思います。
 いきなり完璧にマスターすることはできませんから、まずはいくつかの尺度を取り入れるのがいいでしょう。本書にはその尺度がいくつも提示されています。
 

2018年5月31日更新

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木暮 太一(こぐれ たいち)

木暮 太一

1977年千葉県生まれ。慶應義塾大学経済学部在学中に自主制作した学生向けの経済学入門書が、大学生協や一般書店で累計5万部を突破した。卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。現在はビジネス書作家として活動しつつ、企業内・組織内での講演多数、メディアにもコメンテーターとして出演している。

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