ちくま文庫

脳みそぱっかーんとなる本
伊藤洋志×pha『フルサトをつくる――帰れば食うに困らない場所を持つ暮らし方』

定住でも移住でもなく、多拠点居住(あちこちに住むこと)で自由に生きるこの本について、東京から九州に移住し、バイトをやめても大丈夫なナリワイを考え実践してきた山下陽光さんに書いていただきました。

 読んでると脳みそがどんどん開いていくのがわかる。脳みそぱっかーんとなる本。二人の著者が交差しまくってて素晴らしかったので、抜き出してみましたので、まずはそちらを。

 p.43熊野に共同で家を借りませんか?

 実際に訪問してから家を借りることが決まるまで二カ月、と、わりとトントン拍子で決まった感じだ(pha)。

 p.97 pha氏は、イトウが「熊野におもろい場所があるんやけど行きましょう」と言ったときに「おっ行ってみたい」と二つ返事だったし、最初のシェアハウスを見学したときに「ここ借りて共同運営するのどうですかね」と言ったら「いいですね、面白そう」と即答した。この即答できる瞬発力はフルサトを見つけるときにとても大事なことだ(イトウ)。

 二人ともノリの良さを自覚しているし、この本を読んで、この二人だったらできるけど、俺は、私には無理っす、と思う方はココを思い出してほしい。どうなるかわからないけれど面白くなるかもしれない。というのは毎日誰にでも起こっていて物事が好転するチャンスがゴロゴロ転がっている。いつもの帰り道を変えることかもしれないし、この本をよんで感想ブログを二千字くらい書いて作者の二人に送れば、あなたがどこで何をやったら良いかをこたえてくれるかもしれない。例えば、英語を教わりたい人と英語を教えたい人はいる。そこにお金が発生しなくても成立するけれど、誰なのか? 何かあったら? という不安と責任に間の仲介としてお金が発生して英会話スクールが出来る。そうではない方法を見つけるための考え方と実践を本書は教えてくれる。帰れば食うに困らない場所を持つ暮らし方というのは、金を払って消費者になる暮らしと距離を置くと、新たなフルサトが見つかるということかもしれない。

 次に最高だったのが、コチラ。

 p.117普段会わない人たちと普段と違う場所で定期的に会うのは良いものだ(pha)。

 p.163一度も地元を出たことがないという人は、地元が都市であろうが田舎であろうが、ぜひ一度は数カ月単位で違う環境で暮らしてみることが大事なのではないかと思う(イトウ)。

 田舎に住むと人間であるだけでめちゃくちゃ評価されてビビる。お年寄りは一人では電球の交換も出来ない。ソレが出来なくて何年も二階の部屋に行ってないってことがザラにある。

 自分にとって当たり前のことが年齢や場所が違うだけで感謝されて肯定されると嬉しい。

 友人が新宿二丁目のゲイバーに行ったらお通しが美味しすぎてご飯ありますか? と聞いたら「炊く」と即答されて、とんでもなくモテたと。女好きの友人だけど、こんなにモテるんだったらゲイになろうかと思ったし、アリです、と。こんな感じで置かれた環境が変わるだけで自分を肯定されまくることがあるので、移動したり移住したり、新たにフルサトを作るのは違う環境に置かれた時に発揮する新たな自分を見つけることができる。

 p.135具体的にどちらも得することを見出すことが、仕事をつくることである(イトウ)。

 例えばニラの収穫量は高知、栃木、茨城、宮崎、群馬で全体の六六%を占めている。ニラと言えば歯に詰まる。爪楊枝なのか糸ようじなのか?この五県で集まって歯に挟まったニラサミットをやると面白いだろうし、毎年各県で開催すればニラ農家同士の交流が生まれる。近所のニラ農家とは情報共有出来るけれど、四国と関東では作り方も挟まり方も変わってくるだろう。具体的にどちらも得を見出せる。

 p.214昭和二十三年に早稲田の学生七人が温泉を掘り起こした話→こういうチャレンジリストはたくさんストックしておくと人生に飽きないですむ。

 この本が何よりのチャレンジリストなのでストックして読み直したい。

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洋志, 伊藤

フルサトをつくる (ちくま文庫)

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¥814

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