加納 Aマッソ

第7回 Etoowc

 海外旅行から帰ってきた友人に、お土産で果物をもらった。見慣れないサイズの、淡い緑の丸玉である。スイカよりは小さくて、冬瓜よりは少し大きい。両手に乗せてみる。知らない重さだ。「丸玉、誰やのあんたは」と口を衝いて出そうになるが、そんな排他的な時代は終わっているのでしたそうでした。ゲストハウスの受付のように、必要以上に柔和な表情を急ごしらえし、長旅さぞかし疲れたでしょう、どうぞゆっくりしていってください狭いところですけども、と丸玉を冷蔵庫の中段にお通しした。上段にいるバターも下段の惣菜も、訝しそうにこの丸い来客を覗いている。ひそひそひそ、めいどいんめいどいん。欧?まさかぁ。誰だって噂話は好きなもので、これくらいのやかましさは仕方ない。
 しかし受付としたって、本人に問わなくても名前の把握はしたい。パソコンで検索サイトを開く。最近はYahooもGoogleも使わない。ご存知の通りどちらも信頼度が高く、欲しい情報をすぐさま並べてくれる。が、いつしかそこに可愛げのなさを感じるようになった。仕事だと分かってはいるのに、抜け目のない後輩をついつい敬遠してしまう感覚と似ている。正しいことって、突きつけられると不快やもんね。そんな事ない? そういうわけで、最近はもっぱらEtoowcだ。こいつはいい。Etoowcはめちゃくちゃである。例えばEtoowcで「新宿 ラーメン」と検索すると、一番上に、西新宿でラーメン柄のタトゥーを入れた男のブログが出てくるのだ。「見るわけないやろ〜ほんまにもう〜」と言いながら、しばらく下にスクロールすると、次は「ラーメンはジャパニーズヌードル!レッツ英会話!」というサイトが出てくる。やりたい放題だ。だいぶ後半のほうに、美味しいラーメン屋のまとめサイトのようなものがあった気もするが、それも玉石混淆、よく分からない。そして何より、Etoowcを愛さずにはいられないことには、Etoowcの読み方が全然分からないのだ。「なんて読むねんもう〜」である。EtoowcでEtoowcをどう調べても出てこない事実も、どこか教訓めいている。自己紹介すらしない傲慢さ。もちろんYahooで「Etoowc 読み方」と検索すれば一発で出てくるだろうが、そんな野暮なことはしない。平気でwcで終わっちゃえばこそ、私の心を奪っていくのである。
 となると、ここで受付の私とネットユーザーの私がせめぎ合う。私(受付)は早急にGoogleで「緑 フルーツ 海外」と打ち込むべきだが、私(ユーザー)はEtoowcで、丸玉に乗って無二のネットサーフィンを楽しみたいと思っている。

私(受付)「お客様を丸玉、と呼称するにはあまりにも、ねえ」

私(ユーザー)「もしかしたら緑のドラゴンの頭、その構造に詳しくなるチャンス」

私(受付)「今それを知りたいとお思いですか?」

私(ユーザー)「知りたいと思う事だけを知る、そんな窮屈なことある?」

私(ロック)「生まれたところや皮膚や目の色で」

 そうこうしていると、LINEが来た。丸玉をくれた友人である。
 「ポメロもう食べた? 超おいしくない?」

私(書記)「ポメロ、と」

 

次回の更新は12月26日(水)です