漫画家入門

第12回 カナダ

2018年5月

今月来月は、編集部の都合で、番外編のエッセイをお届けします。

 イベントの最終日、それまでバタバタで手が回らなかったのだけど、昼にようやく「カナダに来てるよ」という報告ツイートをした。すぐに何個かリプライをもらったが、ほとんどが英文の中、一つだけ日本語のリプライが混じっていて見に飛び込んで来た。
「Yo,Asano.ヒマならここに連絡くれ」
 自分の日本の読者はたまにすごく馴れ馴れしいのだけど(それはそれで楽しいと思っている)、リプライ欄で呼び捨てされることは珍しい。少し違和感を覚えて一瞬「もしかして」と、ある人物のことが頭をよぎった。
 午後からのサイン会を終え、同行者のみんなと会場を後にした。その日は日曜だったので会場から離れてもそこは都会。どこもかしこも人が多い。ホテルへ荷物を置きに戻る道すがら、急に「おい浅野!」と声をかけられた。振り返ると二人の男性が立っていた。そのうちの一人は見知った顔、中高時代に同級生だったA君だった。実に10年ぶりだ。まんまとさっきの「もしかして」が的中したのだ。
 A君とは中学時代、特に接点はなかった。しかし学区外の高校に進学して、同じ中学校の出身者が少なかったこともあり、その面子は大体みんな仲が良かった。その中でも特に僕はA君ととにかく話が合い、二人で行動することが多かった。彼は中学からエレキギターを弾いていて、僕は憧れもあり彼の家で初めてギターを触らせてもらった。彼の勧めで最初に練習したのはDeep Purpleの「Black Night」で、洋楽知識のない僕にとって、当時の僕の音楽知識は大体彼の入れ知恵だった。ストラトキャスターを借り、半年ほど練習したが、その後ベースに転向した。ちょうどその頃、また別の中学時代の友人がドラムを始めたので、ドラム演奏のために部屋の壁がダンボールで敷き詰められた蒸し風呂のような部屋に三人で集まり、メタリカのコピーなどをした。もちろん防音効果は皆無で、演奏の音は外にダダ漏れだ。田舎とはいえ今考えるとさぞ近所迷惑だっただろう。
 高校までは電車と自転車で片道1時間半もかかった。僕は毎日のようにA君と通学路を共にした。今思うと二人ともドロップアウト願望が強かったように思う。両者学校の成績は芳しくなかったが、高校生らしく全方位に悪態をつきながら、お互いの足を引っ張り合いながら、馬鹿話をした毎日はとても楽しかった。あまり昔話を美化するつもりはないけれど、高校時代は良い思い出しかない。ある一つの出来事を除いて。