ちくま新書

植物たちの「おいしい」話題

「すごい」「おもしろい」「ふしぎ」がいっぱい!

私たちに身近な「食べる植物」(=野菜や果物、穀物)についての、「すごい」「おもしろい」「ふしぎ」と感じる「おいしい話題」が満載の一冊です。ラジオなどでおなじみの植物博士が、食材植物たちがもつ楽しい資質を、平明にやさしく解説します。

 人と話をするとき、何を話題にするかは悩ましいことがよくあります。根が無口で、人見知りの強い私のような人間には、その悩みは深刻です。そのようなときには、「天気の話をすれば良い」といわれます。
 天気の話題は、誰もが身近に感じ、人により好き嫌いが強くなく、人の心に差しさわりが少なく、無難なものです。天気予報には、誰もが少なからず、関心があります。そして、日々刻々と変化し、季節により移り変わるので、新しい話題がいつも生まれます。
 とすれば、植物たちも、天気に優るとも劣らぬ話題を提供してくれます。植物たちは、私たちのまわりに、いつもあります。身のまわりに生えている草花や樹木は、場所によって変わり、季節によって変化します。
 私たちは、毎日、いろいろな野菜や果物、穀物を食べています。これらには、旬があります。そのため、それらの味覚は、季節ごとに異なり、私たちを楽しませてくれます。また、それぞれの植物たちには、私たちに健康をもたらしてくれる栄養があります。ですから、身近な植物たちに、話題が尽きることはありません。
 私たちの食べものとなる植物たちの話題は、場所により、季節により、いつも新鮮なものになります。何より、食材となる植物たちの話題の多くは、明るいものであり、私たちの気持ちを和らげてくれます。
 また、食材植物たちの話題は、広がりをもっており、さまざまに展開していきます。なぜなら、時代とともに、私たちの期待に応えて、新しい品種が生まれてくるからです。昔は、食材植物は、私たちの空腹を満たしてくれればよかったのですが、近年は、おいしくなければならなくなりました。さらに、健康に良いことが、求められる時代に移っています。
 それぞれの季節には、象徴的な食材植物の話題があり、本書では、第一〜四章で、それらを取り上げました。夏には、夏バテを防いでくれる野菜や果物、秋には、季節の味覚となるサツマイモに抱かれる疑問や、宇宙に行った食材植物たち、冬には、温州ミカンや鍋料理に欠かせぬハクサイ、春には、季節の到来を告げる若ゴボウや誤食をおこす植物たちを紹介しました。
 また、野菜や果物、穀物などの食材となる植物たちの近年の話題を紹介しました。第五章では、次々と生まれるおコメの新しい品種、第六章では、野菜や果物の新品種の誕生、第七章では、食材植物の香り、第八章では、アルツハイマー型認知症を予防する植物たちの話題を取り上げました。
 本書で紹介する話題には、植物たちのかしこさ、生きるためのしくみの巧みさ、私たちの健康にもたらす効能などが秘められています。このような話題をきっかけに、食材植物たちがもつ資質に気づき、植物たちに興味をもっていただけたら、うれしいです。それが、私たちと植物たちが、共存、共生し、ともに栄え発展していくことにつながります。本書が、そのきっかけになってくれればとの思いが募ります。
 このような本書への思いを包括する適切な書名を模索するうち、紆余曲折を経て、タイトルは、「植物はおいしい」となりました。本書では、おコメの〝おいしさ〞はテーマの一つですが、野菜や果物の味の〝おいしさ〞には、直接触れられていません。
 でも、食材植物たちの〝おいしさ〞は、味覚だけではありません。本書で紹介された内容を、食材植物を味わうための〝おいしい裏話〞、人と会話するときの〝おいしい話題〞と考えていただければ、私には、望外の喜びです。

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