佐藤文香のネオ歳時記

第24回「ズッキーニ」「ゲリラ豪雨」【秋】

「ダークマター」「ビットコイン」「線状降水帯」etc.ぞくぞく新語が現れる現代、俳句にしようとも「これって季語? いつの?」と悩んで夜も眠れぬ諸姉諸兄のためにひとりの俳人がいま立ち上がる!! 佐藤文香が生まれたてほやほや、あるいは新たな意味が付与された言葉たちを作例とともにやさしく歳時記へとガイドします。

【季節・秋 分類・天文】
ゲリラ豪雨

傍題 局地的大雨 短時間強雨

 ゲリラ豪雨は集中豪雨の一種だが、予測しにくく・局地的に・短時間で・大量の雨が降ることに対して使われる言葉である。「ゲリラ」という表現が不適切であるという指摘があったりもして、気象庁やNHKなどでは用いないようだが、比喩としてはドンピシャだ。2008年に『ユーキャン新語・流行語大賞』でトップ10入りし、以降も廃れることなくそういった気象状態を表す言葉として一般化した。今まで用いられてきた夏の季語では「夕立」にあたるが、最近の局地的大雨はそんなキレイ目な言葉で表せるシロモノではない。水はけの悪い都会では道路が冠水するなどの被害が出ることもある。日本では多くの地方で最も暑くなる7月上旬〜8月中旬の発生率が高い。
 しかしなんと言っても「げりらごーう」という音が、この言葉のキモだろう。真っ先に思い出されるのは下痢とゴリラだ。下痢は急に襲ってくることとその水分量においてゲリラ豪雨と近縁であるといえるし、ゴリラの力強さやドラミングの音などとも類似性が見出せるではないか。言語学には「音象徴」という考え方があり、ある音が特定のイメージを想起させることを言う。日本語においてガ行音(濁音)は強いイメージ、ラ行音と組み合わせると、げろやゴキブリなどなんとなく嫌われるムードがあり、ゴジラやガメラなどの強い悪者の命名はどこかでそれを意識したのではないかと考えられる。かつて放送されていた幼児番組「にこにこぷん」に「じゃじゃまる」・「ぴっころ」・「ぽろり」というキャラクターが出てくるが、この「ぽろり」がもし「げろり」だったら、不人気キャラNo.1間違いなしだろう。……話が逸れた。ゲリラはスペイン語のguerrillaだが、日本語として考えると実にいやなかんじが現れた音となり、「豪雨」との接続とあいまって、ゲリラ豪雨という言葉は〈声に出して読みたい日本語〉となっているのである。
 とにかく急に・局所的に・すごい量降るので、ゲリラ豪雨はできるだけ避けたく、私はアプリ「weathernews」の雨雲レーダーを愛用している。1時間前から現在までの雨雲の動きと降水量がわかり、1時間後までの予想を見ることができて、かなり正確だ(課金すれば3時間後まで見られる)。たとえば自分の家の最寄駅に到着する時間帯に、その付近だけ16mm以上降っているようであれば、1時間半程度帰りを遅らせる、といったことができるのでぜひ試してみてほしい。あと、32℃を超えるような日は、基本的に晴雨兼用傘を持ち歩くようにしている。暑い日は積乱雲も発達しやすい。

〈例句〉
今ゲリラ豪雨の中に幾古書店  佐藤文香
ツェーデーエーエフゲリラ豪雨は赤羽へ
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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