海をあげる

ひとりで生きる

『裸足で逃げる』に登場した、春菜さんの恋人だった男性の話です。

――どんな中学生?

和樹 どんな中学生かな。やんちゃしてました、確かに。

――やんちゃしてた記憶ナンバーワンは?

和樹 いちばんやばかったやつっすか(笑)。えー、工場入って、その工場のものをぜんぶしっちゃかめっちゃかにして新聞載って、罰金1000万払いました。友達4人でやったんで、250万ずつ割り勘で。……

――お母さん、お父さん、どんな人?

和樹 お父さんはめっちゃ怖いです。いまは怖くないですけど。病気持って仕事もできなくなったんで。僕が中学校のころはやばかったです。

――怖くて?

和樹 はーい。鬼のように。

――殴る系?

和樹 そうですね。殴る系だし、投げる系でしたね。……

――お父さん、おっきい人なの?

和樹 そうですね。いま、僕と変わんないくらいです。いまは病気になっちゃってて、変わんないですけど。

――なんの病気?

和樹 半身不随です。身体の左半分が動かないというか、負傷してます。

――脳卒中とか?

和樹 そっち系ですね。

――お母さんはどんな人?

和樹 お母さんはー、どんな人? どんな人。別に普通です。え、どんな人? どんな人なんだろう。怖いとかは思ったことないけど。すぐ泣くかなぁ。すぐ泣くイメージがある。

――じゃあ1000万事件のときは何か言われた? 泣いてた?

和樹 そのときは。250万の半分くらい、弟が払ったんで。僕の弟、鳥好きなんですよ。鶏の賭博してて。小学生で。お父さんも鶏が好きで。賭博系大好きなんで。鶏と鶏の喧嘩で赤白とかの闘いで。やるんですよ。お父さんが教えてくれて、貯金いろいろしてて。それで150万とか払ったんですよ。

――なんか言われた?

和樹 弟ですか? 「やー、ふらーやー(この、馬鹿野郎)」って言われて(笑)。

                  *

――東京に出たのは何歳のとき?

和樹 21歳。今年、24なんで、約3年。

――ずっと帰らなかったというのは、来てからずっといたの?

和樹 ずっといました。

――寂しくなったことは?

和樹 そうですね。そんな帰ってもすることないしな。東京のほうが楽しいなって思いました。

――春菜と別れてすぐ東京に来たっていう感じなのかな?

和樹 3カ月とか、いや半年くらいですかね。

――春菜とめっちゃ長かったでしょ。

和樹 5年くらいですね。

――長く付き合ったでしょ? 人生でいちばん長いくらいじゃない?

和樹 そうです。

――春菜の仕事、援助交際のことぜんぶ聞いてて。和樹と組んで客取っていたっていう話も聞いたわけさ。どんなして付き合った? どんな関係だった?

和樹 えー。どんなして付き合ったか、ですか。もともと、友達の彼女で。で、友達と別れて、春菜から告白されて。付き合ったのが16歳なんですよ。

――そのときは、別に誰とも付き合ってなかった?

和樹 僕ですか。はい。普通に、僕もそのとき、高校行ってたんで。毎週土日会ってる感じで。付き合って、そうですね。あいつも親とそっち系のゴタゴタがいっぱいあったんで。家出るって。そっから春菜のところに。僕も色々、親が嫌で。なんかそのとき。16のときに、高校そのままぶっちして。
 友達と福岡行ったんですよ。そのとき、約17歳で。そのときにはホストするってずっと決めてたんで。中洲、ホスト募集してるから行こうみたいな感じで、福岡でホストしに行って。その店がめっちゃクソ店で、そこでは1年くらい働いてました。

――なんでクソ店?

和樹 あ、もう給料とかめっちゃもらえなくて。

――え、なんで? とってるのにお客さん?

和樹 そうですね。その日暮らしで「はい、1000円」みたいな。働いてる従業員が「はい、1000円」みたいな。「タバコとご飯買えるじゃん。その1000円で」って。

――いやいやいやいや店出てるのに?

和樹 給料日も給料1万円とかで。まだそのとき17歳だし。家もあるし。寮もあるし。家もあるし、ホストできてるし、しかも17歳だし、っていうのもいろいろあって、なんも言えんくて。身分証も確認されない店だったんですよ。だから、年齢もずっと18歳って言ってて。
 ……いま考えるとバカバカしいですけどね。で、親から電話来て。福岡のとき、お金もなくて帰れなくて、沖縄に。「飛行機代出すから一旦帰っておいで」って。で、沖縄帰って。もうやめるって言わずに逃げたんですよ。友達3人とバラバラに逃げて。

――ヤクザかなんかだったの?

和樹 (ヤクザ)もいっぱいいましたね。やっぱ九州なんで。ヤクザとかそっち系多いじゃないですか。ぼこられるのも、めっちゃ目の前でも見たし。その逃げた人捕まってて、すっごいズタズタにボコボコにされてたし。それが怖くて、余計。でも、俺らそのとき17歳だし、イケイケじゃないですか。「別に、捕まっても怖くなくね?」みたいな。「別に、犯罪なのはあっちじゃない? 未成年雇ったほうが悪いっしょ」みたいになって。「え、逃げよう。飛ぼう」みたいな感じで、みんなで逃げました。
 そっから春菜といたんで。そのときは、僕も春菜とずっといて1年くらいかな。そんないないか。……そのとき、なんでだったかな。なんで家出たっけ。高校生になっても門限とかつけられてて、僕、バイトも仕事もなんもしてなかったんで、いろいろなんか。まわりみんな遊ぶじゃないですか。10代なんで。ウザくて。

――お母さんとの対立? お父さんとの対立?

和樹 お父さんです。

――お父さんか。まだ、怖かったときの?

和樹 そのときは。僕は、それ終わってからだいぶ落ち着きました。妹も荒れてて、弟も荒れたんで。……それで、「なんかお前のせいだよ」みたいなバーバー言われてて、「じゃあ出て行け」みたいな感じになって、お父さんはそういうの「上等上等、行け行け行け」みたいな感じなんで。「それができるんならいいんじゃない? どうせお前戻ってくるよ」みたいな。

――煽られたんだ?

和樹 お父さんもめっちゃイケイケなんですよ。話聞いてたら。イケイケだったんだろうな、っていう。

――やんちゃだったんだ。殴られたりもした?

和樹 はい。けっこう、逃げましたよ。僕は。テーブルもぜんぶひっくり返すし、あるものぜんぶ投げるんで。

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