海をあげる

ひとりで生きる

『裸足で逃げる』に登場した、春菜さんの恋人だった男性の話です。

――ずっと春菜が仕事してたさーね。そのことに関しては、どんなって思ってたの? なんかさ、普通、感覚的に言ったら、自分の彼女が援助交際で、客、取ってたら嫌かなーとか思ったりするんだけど?

和樹 そんな思わなかったです。あんま好きじゃなかったんで、春菜のこと。

――そうなんだ。……んー、好きな子だったらやっぱり嫌なの?

和樹 えー、どうなんすかね。僕、頭おかしいんで。いろいろと……。

――セックスの価値ってみんな違うさ。

和樹 はいはいはい。

――大事ーって思う人もいるし、そうじゃない人もいるし。

和樹 それが仕事と思って割り切れるんだったら、別にいいと思います。そのほうが。俺はそこを割り切れると思ってるんで。だから、別に女の子が風俗しようが、別にキャバクラで働こうが、酒飲もうが何しようが、そこらあたり、もう仕事って区別してて、仕事のセックス、仕事じゃないセックスとはまた違うと思うんで、それをまた同じと思うんだったら……

――自分のなかでは区別ができるって感じなのかな。……セックスの価値は低いのかな、和樹の場合は。

和樹 いや、セックスは最高だと思いますよ。それはホストでも最後なので。

――客とする? 

和樹 僕は選ぶ。選んでるんで、お客さんを。いまはそんなないですけど、前はめっちゃ「お金使うかも」ってなったら、「とりあえず一発やっとこうかな」って。

――なんだろう。やっぱり恋愛っぽい感じにしておいてっていうかんじ? やっぱ、そのほうがお金使うかんじ?

和樹 動くときは、0が変わりますね。

――いくらがいくらになる世界なの?

和樹 まぁ、簡単にいえば10万が100万みたいな。

――へぇ。

和樹 そのセックスをするだけで。

――店に来てくれる回数が違うの?

和樹 回数というよりも額ですよね。

――落とすお金が違う?

和樹 回数は、来ようと思えば来れると思うんで。仕事終わって来て、仕事終わって来て、っていうのはできる。ただ、誕生日とかイベントのときに、ドンッて使うか使わないかとか。毎月イベントはあるんで、そこで高級ボトル、200万、300万、500万っていうボトルを下ろせるかっていうのはありますよ。

――「いまは選んでる」っていうのはどういうこと。

和樹 え、「かわいくないからやらない」とか。「デブだからやだ」とか「お金使わなさそう」だったり、「お金使ってないからやだ」だったり、「こいつ、めんどくさいからな」って。

――めんどくさいってどういうやつ?

和樹 メンヘラ系です。「ねぇ、私のこと好き?」とか。「僕がいなきゃ!」とかなんですけど。

――聞くんだー。店で?

和樹 いや、電話とかLINEとか。「あたしのこと好き?」みたいな。そういうのがいちばん大嫌い。

――なんていうの?

和樹 それは、「好きだよ」って言いますけど、それがいちばん嫌いなの。あと、デブは嫌いです。お金使わないんで、稼げないんで。あと、性格ブスも嫌いです。ひねくれ者っていうんですかね。ホストって、お金も動くし、感情も動くし。すべて動くんで、ボロが出るっていうか。リスカ系も嫌いです。かまってちゃん的な。

――好きなタイプは?

和樹 僕のタイプは絶対ギャル系ですね。

――カラッとして楽しいの?

和樹 細いのは好きじゃないです。一緒に歩くのは細いほうがいいですけど

――ややこしい~(笑)。

和樹 僕、めっちゃわがままっすよ(笑)。……僕、基本的にホストで来るお客さん、全員嫌いなんで。ホストに通う女は好きじゃない。女としてみてないです。

――春菜もそんなに好きじゃなかった?

和樹 春菜は別にホストとして出会ってないから。うーん。もともと別に好きではないです。全然タイプじゃないし、もともとは。僕が春菜に化粧教えたし、「服装もこういうの着なさい」って言ったし、髪の毛も僕が選んだし、僕が理想の女に仕立てたんすけど。

――時間かけて、ずっと付き合って?

和樹 そうですね。でも別れるってなったときに、「あ、これって好きなんだ」って思いました。そのときに、やっと。「あ、俺って春菜のこと好きなんだ」って。そのときに、実感っていうか。「あー!」ってなって。

――寂しかった?

和樹 そうですね。僕、どうやって生きていこうかと思いました。いままで普通に春菜のお金で、要はずっと生活してたわけだし。僕の収入の18倍? いや25倍くらい?

――いくら稼いでたの?

和樹 誰がですか? 僕? パチ屋(パチンコ店の店員)してたんで、20万くらい。……10倍とか15倍くらいですね。

――そうやって、時間が経ってみたら好きになってた?

和樹 そのために東京来たんです。

――吹っ切るために?

和樹 うん。決めてたんで。春菜と別れたら、絶対東京行くって。それは春菜にも言ってて。「お前と別れたら東京行くわ、ホストするし」って、そう言ってて。

――それで、本当に来たんだ。

和樹 あいつも多分噓と思ってて、僕が最初、昼間働いたのも、春菜と付き合って、「俺、こいつと一生生きていくんだろうな」って思ったし。あ、その20歳のときに。「あ、俺こいつと結婚するんだろうな」ってガチで考えてて。普通に、そのときに、昼職しはじめたし、アパートも借りたし。一緒に二人暮らしっていうのを始めたし。そうですね。そのとき。
 そっから、ジョウっていう子が東京で新宿でホストしてて。……キラキラしてて会話してても楽しいし。やっぱりしたいなって思ったんですよ。どうせするなら新宿だなって思って。

――沖縄の子いるの?

和樹 けっこう多いんじゃないですかね。僕の店でも僕の3個上の人がいるんですけど。沖縄で、取締役なんですけど、僕の店のトップです。その人、1600万プレーヤーです。月ですよ。名古屋でなんですけど。で、いま東京来て。

――こういう先輩とかとの交流とかもあるんだ? どんなやって稼ぐかとか、どんなやってお客さんと接客するかとか、勉強会みたいなのとか?

和樹 ありますあります。

――どうやってやんの、勉強会?

和樹 え、「いまこういう状況でこうなんですけど、どうしたらいいですか」って。「俺ならこうするねー」とか。

――具体的に聞いていい? 全然さっぱり意味が分からん。

和樹 えー、じゃあ例えば、僕のバースデーです。誕生日で1000万売りたいです。で、Aちゃんに500万使ってもらいます。Bちゃんが300万使います。Cちゃんが200万使います。でも、Aちゃんは絶対シャンパンタワーじゃないとやりませんって言ってます。でも、Bちゃんもシャンパンタワーしたいって言ってます。Cちゃんもシャンパンタワーじゃないとヤダって言います。でも、シャンパンタワー、一基しかできないんで、どうしたらいいかっていうのを相談します。

――どうするの?

和樹 それは現金あるほうにやらせるしかない。別にシャンパンタワー500万っていうのと、最高級ブランデーっていうの、50万があるんですよ。1本500万か10本500万かっていう。バースデーはメインのシャンパンタワーがいて、高級ブランデーが、サブでいて、5万、10万の子が下にパーって。

――すごいお金が動くね。

和樹 そうですそうです。

――て、なったときに、先輩のアドバイスは? シャンパンタワーはまずひとつしかできないから?

和樹 ひとりって決めないで3人でやったら喧嘩なるし、「なんであたしのほうがかわいくないの?」「あっちの方がなんかおっきいのちっちゃいの」とか、そういうトラブルが生まれるんすよ。……女の子との関係性にもよります。彼女だったら。歌舞伎町からイロコイホスト、本営(本カノ営業)とかあるんですけど。本カノだけど営業するし、本カノだけど、一番エース使う。要するに擬似恋愛なんですけど。

――ホストはだいたいいるの?

和樹 そうですね。基本は。多いときは8人とか10人とか。

――大丈夫なんだ。付き合えちゃうんだ。こんがらがらないんだ。

和樹 アイドルなんでね。芸能人と付き合ってる感覚ですよ、女の子は。「その子と付き合ってる」っていう勝手なステータス。「あの店のナンバーワンの子と付き合ってるアタシ」っていうやつ……。

――ホストはエステとかも行く?

和樹 そうですね。脱毛は月イチで。

――ほかにもやってるの、ある?

和樹 あと、そうですね。整形とか。脱毛のついでにみたいな、店のあれでちょっと安くなるんです。

――店のお金が半分で、自分が半分くらい?

和樹 違います。店の売上に応じてです。

――厳しい。

和樹 要は、この子に投資しても売れなかったら意味ないんで。数字持ってる人に投資して。店もそう言う。「そうしたいなら売れるように頑張れ。こっちはそういう指導してるから」っていう。「俺の言うこと聞けば売れるから、それができてないのがお前。だから売れてないんでしょ」みたいな感じです。

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