海をあげる

ひとりで生きる

『裸足で逃げる』に登場した、春菜さんの恋人だった男性の話です。

――沖縄には帰る?

和樹 貯金が貯まるまでは、沖縄帰らないって決めたんで。とりあえず2000万。実家をリフォームする。お父さんもうあれなんで。かわいそうなんで。だって。お母さんがなんもしないんで、お父さんのこと。だから、かわいそうだなって思って。いま、弟がずっと見てる状況なんで。で、弟もいま彼女が居て、17歳、いや18歳か。いまいちばん遊びたい時期だし、お金必要だし、そんなお父さんの面倒見てるっていうか、買いたいものもいっぱいあるだろうし、服も買いたいし、遊びたいし、飲みに行きたいし、っていっぱいあるじゃないですか。弟にそれをやらすのは違うなって思ったし。
 妹も妹で、旦那さんいて、子どもいて、家庭持ってるし、20歳なんすけど、「お金ないお金ない」って張り合うんで、「コレほしいアレほしい」みたいな。別に、いま、僕、彼女もいないし、お金に困ってるわけでもないから、買ってあげてるんですけど。今日も買ったんですけど、昨日も買ったんですけど、財布欲しいって言ったら財布買ってあげたし、沖縄帰ったときも10万くらい渡したし。

――妹にもあげたの。

和樹 はい。で、あとお父さんに5万くらいあげて。

――なんで? うーんー、なんでって変かな。

和樹 僕のお金の使いみちっていうか。なんだろう。別に貯金が貯まるまでは東京いるつもりだし。5万も10万も変わんないかなって。今しかできないかな。

――そんなおうちのこととか背負わなくてもいいのになって。

和樹 えー、うーん、家族思いなんだと思います。僕。長男だし。お母さんのきょうだい7人いるんすよ。お父さんのきょうだい6人で。そのなかの子どものなかで僕いちばん上なんですけど。だから、みんな下がいっぱいいるし、みんなが見てるし。……プライドっていうか。「財布欲しい」って言われて、「いくら?」って聞いたら「5万」っていうから、「安っ、じゃあ買ってあげるよ」ってなんかなるんで。わかります? 自分のプライドなんですよ。それが。

――お兄ちゃんだからやってあげるって?

和樹 たぶんでも普通に一般的に5万って高いと思うし。僕も別に気にならないからそこまで触れてないし、高いと思うんですけど。プライドっていうか。

――「安っ」って言って、買ってあげるのが。

和樹 やっぱホストだし、ナンバーワンだしとか、お金儲けてるでしょ、みたいな。

――嫌にならない? そうやってさ、ひとりで東京で戦ってるわけじゃない? 生活もぜんぶ自分でやってるし、入院したって、家族が助けてくれるわけでもないし、ぜんぶひとりでやってるでしょ。なんか、それでもやってあげたいって思うの?

和樹 お母さんにはやってあげたいとは思わないです。なんでかっていったら、電話来たら、「お金送って」の一言しか言わないんで。でも、お父さんから電話来たら、「ご飯、大丈夫? 野菜食べてるか?」とか、そういう心配してくれるんですよ。お父さんは。「お前、ちゃんと貯金しないと」とか、「お前、またパチンコとかいくなよ」とか。「遊ぶなよ」みたいな。「別に、遊んでないから、遊ぶけど(笑)」みたいな。「若くていましか稼げないんだから、いま頑張って貯金しとかないと、終わって、あとからでも遊べるから、いまは貯金しれ」ってお父さんが言ってるんですよ。「身体だけは気をつけて、俺もいま、こんななってるから余計に思うし」、「野菜は食べないと」とか「酒飲みすぎてアルコール中毒なるなよ」とか。そういう心配してくれるからお父さんは。そういう心配してくれるから。
 沖縄帰ったときも、お父さんの姿見て、40キロくらいに痩せたんで。見てて「うわっ」てなったし。タバコ吸うんすよ。でも、仕事もできないからタバコも買えないし。それを毎回毎回、弟から1本とか2本とかもらってる状況なのかなとかいろいろ考えてて、「とりあえず少ないけど5万くらいあげるわー」とか言って。で、お年玉も、お父さんも長男なんですよ。で、弟なんかの子どもも来るし、でもお金ないから絶対きつそうだなって思ったし。だから普通に僕あげたんですけど、お年玉。「お父さんから」って言って、俺も「俺から」ってあげるから、お父さんも「お父さんから」ってあげてって言わせたし。でも、そのとき、お母さんは沖縄帰ったときにも会ったときに、普通に「はい10万」、「はいお金」みたいな感じだったので。

――それは嫌だね。

和樹 なんかお母さん、お金にめっちゃ執着心が強くて。お母さんのきょうだいも全員。お金お金お金お金ーみたいな。……めっちゃ借金あると思うんですよ。お母さんも。……僕も給料100万超えないと送らないようにしたんで。毎月の給料が100万あったら送るよ、それ以上は送らないって。1回送ったらしつこいんですよ。まじで。鬼のように電話なるし。

                   *

――お父さんの、もらいタバコの話、してたけどさ。お父さん、かわいそうな感じがするのはなんで?

和樹 前までは、「自分で買えないタバコは吸うな」って思ってたし、お父さんにもそう言われたし、「人からタバコもらうくらいだったら吸うな」、「自分で稼いだお金、自分のお金でたばこに火つけれ」って。ずっと僕、中学校のときからもらいタバコはするなって。それでも、沖縄に帰ったら弟にもらって吸ってたし。いま、なんか仕事できない状態で、仕事したくてもできないし。

――倒れて、仕事やめたんだね。

和樹 そうですね。救急車運ばれて、入院なって、意識不明で。僕もずっと実家帰ってなかったんで。……(退院してからは)お父さんの実家にずっといて、お父さんの実家、おばあちゃんしかいないんで、おばあちゃんとひいおばあちゃんと、おばさんかな。おばあちゃんがなくなって、ひいおばあちゃん、うつ病っていうか、そっち系。頭おかしい。独りごと言うし、べらべら言うし。
 ……お父さんはお父さんで、その病気なったときに、おばさんが、次、頭おかしくなっちゃって。お父さんもおばさんもそんな頭おかしいから。ふたりとも。お父さんもなんか言ったこと忘れるし。もう180度、360度変わったっていうくらい人生なんで。お父さんは多分。カーッてなったら、物投げるし、カーッてなったらワーッて言うし、ワーッてなったらワーッてやる人なんですよ。でも、やるときはやるんで……やりますけど。でも、いまそれがそうじゃなくなって。いま、多分50キロくらいしかない。

――大きいひとだったんだね。

                   *

和樹 ……タバコ、吸っていいですか?

――いいよー。

和樹 身体は大事にだから、控えめにねー(笑)。

――こんなタバコがあるんだ(笑)。かわいい。

和樹 アイコスです。沖縄入ってないですもんね。東京はみんなコレですよ

――ふーん。……入院している間は吸わなかった?

和樹 いや、吸いました。アイコス。

――あはははは(笑)。だめじゃん(笑)。

和樹 さすがに、タバコはやめれないです(笑)。中学校から。タバコだけはマジ、やめられないです(笑)。

――ひとりでいたらさ、寂しくない?

和樹 ひとりじゃないです。ジョウ、いるんで

――いるけどさ。寂しくはない?

和樹 えーでも、ほとんど仲いい、従業員でも、友達の友達以上くらい仲良くなってるしー、みんななんか年齢も一緒なんで。イケメンじゃないと僕、仲良くしないんで。……

――鍋とかは、寮の子たち?

和樹 (携帯電話の写真をみせながら)この子としてました。

――え、なにお人形? 女の子みたいだね。

和樹 この子でーす。こいつ。

――あらま。

和樹 こいつがいちばん仲いいです。

――二人揃ったらお人形だねぇ。……今日、(スタジオ)8時?

和樹 7時25分、早め。

――見に行くのはダメなんだよね?

和樹 たぶん、入れないと思います。ガチのスタジオなんで。

――店の周りをウロチョロしたいな。ちょっとだけ案内できる?

和樹 いいっすよ。

録音日時 : 2017年2月28日 18時14分28秒
録音時間 : 1時間12分16秒 
場所:東京 新宿椿屋
 

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