佐藤文香のネオ歳時記

第27回「パーカー」「みなみのうを座」【秋】

「ダークマター」「ビットコイン」「線状降水帯」etc.ぞくぞく新語が現れる現代、俳句にしようとも「これって季語? いつの?」と悩んで夜も眠れぬ諸姉諸兄のためにひとりの俳人がいま立ち上がる!! 佐藤文香が生まれたてほやほや、あるいは新たな意味が付与された言葉たちを作例とともにやさしく歳時記へとガイドします。

【季節・秋 分類・生活(ファッション)】
パーカー
傍題 パーカ

 パーカーはふつう長袖で、フードと2本の紐、2つのポケットがある。頭からかぶるプルオーバーと、前びらきでジッパーがあるものがある。おしゃれな人はプルオーバーで、スケートボートに乗っているイメージだ。おしゃれな人ほどフードをかぶってもおしゃれである。男女で大きなデザインの差がないのがいい。
 しかし、外出用と思って買ったパーカーも、私が着ると必ず家着っぽくなってしまう。やわらかそうなのを買うとだいたいダメだ。持っているパーカーのうち、現在外出に使っているものはユニクロの「ブロックテックパーカ」のみ。秋も半ばを過ぎると、自転車を漕ぐには少し冷えるので重宝している。これは雨にも強い。
 ユニクロのパーカーでは銀座には行けないが、近所を散歩するにはちょうどいい。夜、Tシャツの上にパーカーを羽織ってあてもなく散歩に出るのは秋らしい。夜の散歩は家の延長である。ポケットに手を突っ込んで、サンダルで歩く。サンダルはもう寒いが、靴下を履くのはめんどくさい。コンビニで妙なジュースを買い、短い橋から細い川を見る。虫の声が聞こえる。ぱらぱらと雨が降ってきて、フードをかぶる。遠くに行く気力はないものの、家にも帰りたくないので、だらだらとそのへんを歩き続ける。といっても、だいたい1時間くらいのことだ。
『合本俳句歳時記(第四版)』(角川学芸出版)では、「カーディガン」は「セーター」(冬)の傍題となっているが、個人的にはカーディガンは春っぽいと思う。いや、厚さによるか。パーカーも最近はいろんな種類がある。先日ユニクロに行ったら、一番目立つところに秋の最新作として「ハイブリッドダウンパーカ」という完全防寒ができそうなものが吊られていた。畳んで小さくなるポケッタブルのものや、UVカットのものもある。同じパーカーでも通気性のよいエアリズムのものは夏、ボアスウェットは冬っぽいので、こういうものは別の季節の季語にしたい。女性用として「オーバーサイズパーカ」まであった。彼氏の服を着る彼女感が出そうだ。ここまででおわかりかと思うが、ユニクロでの商品名はすべて「パーカー」ではなく「パーカ」で統一されている。パーカの方がイケている気がするが、着ておしゃれかどうかは着る人に左右される。俳句においては、音数の調整が効く、使い勝手のいい季語だといえる。

〈例句〉
パーカーで歌ふ団地を背景に  佐藤文香
自分が自分の友達みたいだパーカ着て
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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