ちくま新書

英語を身につけるために知っておくべきこと

文法、会話、単語、音読、シャドウイング、多読、精聴……世の中にはいろいろな英語学習法があるけれど、どれを、どうやるべきなのか? そもそも、どうして英語の力が伸びないのか? 30年以上にわたって予備校で英語を教えてきた人気講師が学習のコツを伝授する、里中哲彦『日本人のための英語勉強法』の「まえがき」を公開します。これを読むと、本書のエッセンスがしっかりわかります。

「自前の英語3カ条」
 人生は有限です。
 そして、それぞれの人生には、おかれている環境、残された時間など、さまざまな制約があります。
 くわえて、英語を学ぶ動機や理由はさまざまで、掲げている目標もそれぞれに異なります。
 しかし、残された人生で、英語を学びなおそうと考えているのなら、次に掲げた「自前の英語3カ条」をぜひ肝に銘じていただきたい。これを遵守してくれたら、あなたはきっと英語をわがものにできるでしょう。

(1)ネイティヴ英語を崇拝しない。
 日本で生まれ育った者は、どれほど努力しようが、ネイティヴ・スピーカーのようにペラペラと英語を話せるようにはならないし、またそうなる必要もない。ネイティヴ英語を崇拝していると、劣等感、屈辱感、敗北感を否応なく味わうことになる。英語がうまくなる早道は、「ネイティヴ英語崇拝」から脱却することである。

(2)日本人であることに誇りを持つ。
 日本人であることに誇りをもてないと、軽蔑の対象になるばかりか、薄っぺらで「他者本位」(英米かぶれ)の“国際人”になってしまう。英米人的な論理や態度をすべて無批判に称揚して真似るのは、二流の英米人になろうとしているようで、たいへん愚かしい行為であるとの認識に立とう(しかし、英語の論理やマナーを知ること、時と場合によってはそれにしたがうことは大切なことである。第5、6章では、それらへのアプローチをこころみている)。
 真の国際人とは、日本人としてのアイデンティティを持つ者のことである。アイデンティティを持つとは、日本のことを知ること、愛すること、そして誇りに思うことである。多少なりとも批判すべきところもあろうが、ジョージ・オーウェルが言うように、「右であれ左であれ、わが祖国」(My country, right or left.)なのである。

(3)英語を極めようとはしない。「内容重視」の英語を目指す。
 英語のプロフェッショナルを目指しているのでなければ、「英語を極める」必要はない。英語を「道具」だとわりきって、道具の活用自在を考えよう。文法にのっとった英語であれば、発音にいくぶん難があってもちゃんとつうじる「有用な道具」であり続けるであろう。
 「英語を話す」のではなく、「英語で話す」という姿勢をつらぬこう。英語「を」勉強するのではなく、英語「で」必要な情報を受信し発信するという姿勢を堅持するのだ。中身のない「会話ごっこ」をするために多くの時間を割くのは大人げないことである。自負の精神をもって、「内容重視」の英語を身につけよう。
                    

関連書籍

哲彦, 里中

日本人のための英語学習法 (ちくま新書)

筑摩書房

¥924

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