佐藤文香のネオ歳時記

第31回「ポタージュ」「肩こり」【冬】

「ダークマター」「ビットコイン」「線状降水帯」etc.ぞくぞく新語が現れる現代、俳句にしようとも「これって季語? いつの?」と悩んで夜も眠れぬ諸姉諸兄のためにひとりの俳人がいま立ち上がる!! 佐藤文香が生まれたてほやほや、あるいは新たな意味が付与された言葉たちを作例とともにやさしく歳時記へとガイドします。

【季節・冬 分類・生活】
ポタージュ
傍題 コーンポタージュ クラムチャウダー

 ポタージュはもともとフランス語だそうだが、すっかりカタカナの日本語として定着している。日本では澄んだスープはコンソメ、どろっとしていればポタージュ、くらいの分類でよさそうだ。コーンポタージュ、じゃがいものポタージュあたりはお湯を入れるだけでできる粉のスープとしても馴染み深く、我が家では夫のために、いつもなんらかの粉が用意されている。が、自分で飲む分にはお湯を入れるだけではまったく物足りず、お湯を半分まで入れ粉を溶いて、残りは牛乳にして電子レンジで温めるなどする(が、めんどくさい)。私が好きなのはパウチでスープのまま売っているもので、しっかり濃厚そうなのをたまに購入する(が、ちょっと高い)。冷製なら夏のものだろうが、ポタージュは多くの場合温かく、冬の体を温めるのにもってこいだ。ポタージュに似ているものでいうと、クラムチャウダーはアメリカの料理で、こちらも冬っぽいので傍題に入れておこう。
 あるとき生協のランダム野菜配達で二回連続ゴボウが届き、和食に飽きたのでゴボウのポタージュをつくろうとしたことがある。もらったばかりのフードプロセッサーの構造をよく理解しないまま、牛乳とゴボウを入れて回したら、物凄い勢いで内容物が飛び散ってトラウマになり、以後家でポタージュはつくっていない。後進のためにお伝えしておくと、液体と固体を一緒に入れて回すのはしっかり煮てから、さらにプロセッサーは液体不可のものがあるので、両方あるならミキサーでやるのが無難である。
 やはりポタージュはフレンチレストランでいただきたい。豆のポタージュ、かぼちゃのポタージュ、きのこのポタージュなど、新鮮な食材が使われていればなんでもいい。シェフによる裏ごしのやさしさを感じたい。あたためた器におたまでとろっと注ぐ様子を見ることができるとさらに嬉しい。生クリームを最後にまわしかけていただけるなら追加で50円払ってもいい。クルトンもお願いできるならさらに100円払う。乾燥パセリは色どりとしてよい。コースであれば前菜のあと&魚料理の前の、前半のほっと一息コーナー。あたたかいポタージュが出てくると、高級なお店でも緊張がほぐれ、初対面の人とでも話が弾み始める。さて、そろそろクリスマスディナーの予約をする時期でしょうか。まだ予定が決まっていない方で、お財布の中身があたたかいというみなさんには、ぜひフレンチのフルコースで、なんらかのポタージュを味わっていただきたい。

〈例句〉
小器用な舌にアボカドのポタージュ  佐藤文香
ポタージュの湯気嗅ぎこの人の妻ではない
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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