ちくま新書

ようこそ! 物理の世界へ

難しいイメージがある高校物理。それを図と文章で説明し、数式は最低限の確認のみにまとめた画期的な物理の本が登場しました。 それが『やりなおし高校物理』。初心者はもちろん、物理を履修していた人も学びなおしにも最適な一冊です。 「はじめに」を公開しますので、ぜひご覧くださいませ。

 宇宙は、およそ138億年前に生まれました。地球が誕生したのは約 46 億年前です。これに対して、現生人類(ホモ・サピエンス)が出現したのは約20万年前。言うまでもなく、宇宙は人類が生まれるずっと前からありました。自然界の法則は、人間が発明したものではなく、気がついたときにはすべてそこにあったのです。人類は長い時間をかけてそれらを少しずつ「発見」し、あるときは「まさか!」と驚き、あるときは「さもありなん」と納得しながら、自分たちをとりまく宇宙を理解してきました。物理というのは、そうやってわかってきた自然法則=「物の道理」を体系化してまとめた学問です。
 物理学の対象は文字通り森羅万象に及び、力学、熱学、音響学、光学、電磁気学、素粒子物理学、天体物理学、物性物理学など多岐にわたりますが、本書では、高校の物理の主要4分野である「力学」、「熱力学」、「波動」、「電磁気」を扱っています。
     
『やりなおし高校物理』というタイトルの本書を書かせていただくにあたって、私が特に気をつけたのは次の4点です。
 
①読み物として面白いこと
 できるだけ教科書的にならないように気をつけました。また身近な例を用いることで、読者の方の興味を惹きつけ、先を読みたくなるように留意したつもりです。また各節の終わりにはこぼれ話的な「コラム」も設けました。
 
②数式を極力使わないこと
 全編にわたり極力数式を使わずに説明してあります(もっとも苦心しました)ので、数式アレルギーをお持ちの方にも楽しく読んでいただけると思います。ただ、物理を通して数学を見ることで、数や数式の意味と意義がとてもよくわかるようになるというのは、物理を学ぶ醍醐味の一つです。そこで、時々「数式の博物館」と名付けた横書きの頁を挟ませてもらいました。本文で説明した物理現象のイメージをもって数式を眺めてもらうことで、物理的にも数学的にもきっと新しい気づきが得られるはずです。
 
③図を多く用いること
 数式がない分、どうしても図によってイメージを膨らませていただくことは必要だと考えました。こうした縦書きの新書としては図の分量は異例なほど多いと思います。
 
④物理法則が発見された経緯(科学史)を紹介すること
 科学史に多くの頁を割いているのは本書の特徴のひとつです。人類がどのようにある自然法則を見つけたのかを知っていただくことは、どうしてその物理法則が必要になったのかという疑問にお答えするだけでなく、ひとつひとつの法則に人間の血を通わせることにもなると思います。過去の天才たちが苦労の末に偉業を成し遂げるまでのドラマをどうぞお楽しみください。
 
 本書の読者対象は主に、高校時代に物理を選択したものの、あまりよく理解できなかった方や、現役の高校生の方を考えています。学校の授業や教科書とはひと味違った角度から改めて紹介することで、物理に対する立体的な理解を提供し、物理という学問の魅力を再発見していただくきっかけになることを目指して書きました。
 また、本書は現在小学生や中学生のお子さんをお持ちの親御さんにもきっと役立てていただけると思います。中学受験の理科で問われる内容や、中学の理科で学ぶ内容は、高校物理の内容を小出しにしている面が多々あるからです。お子さんが理科に躓くのは、全体像が見えないせいであることが少なくありません。そんなときは、是非本書で得られる知見を教えてあげてください。きっと、喜ばれると思います。
 
 さあ、それでは始めましょう。
 「力とはなにか」、「温度とはなにか」、「光とはなにか」、「電気とはなにか」といった素朴でかつ根源的な命題をひとつひとつ解決しながら、これまでに人類が摑んだ宇宙の真理にせまっていきます。結果――すべての科学者がそうであるように――「ああ、自然界というのはなんて美しいのだ」と感じていただければ、筆者としてこれ以上の喜びはありません。 

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