佐藤文香のネオ歳時記

第35回「ホームパーティー」「卒業論文提出す」【冬】

「ダークマター」「ビットコイン」「線状降水帯」etc.ぞくぞく新語が現れる現代、俳句にしようとも「これって季語? いつの?」と悩んで夜も眠れぬ諸姉諸兄のためにひとりの俳人がいま立ち上がる!! 佐藤文香が生まれたてほやほや、あるいは新たな意味が付与された言葉たちを作例とともにやさしく歳時記へとガイドします。

【季節・冬 分類・生活】
ホームパーティー
傍題 宅飲み

 年末は愛媛に帰省し、マイホームを建てた友人Yさん宅に大人4人と、私以外の3人の子供が2人ずつの計10人が集まってお茶会。代々木八幡の高級チョコレートを大人用にちょっとだけ持参したら、舌の肥えた子供たちがどんどん食べてしまったがそれもよし。家主のYさんは息子に、「アレクサにジャスティンビーバーかけてって言ってや〜」と言っていて、そうか、別に子供がたくさんいるからといってアンパンマンを聴く必要はないんだな、と納得する。
 大晦日は伊勢丹から発送しておいた燻製詰め合わせで実家飲み。クラフトビール2種、赤ワイン2種、日本酒2種、焼酎。赤ワインではカベルネソーヴィニオンが好きだと言っていた親が、いつのまにかジンファンデルに鞍替えしていて、私はピノノワール側に守備範囲を変えてきているから、思ったより親と味の好みが違うことが判明した。元日は両親と夫と香川の叔父の家へ。叔父叔母、いとこ家族たちと会い、総勢16名、牡蠣を食べまくる。ここの家では、新年は蒸し牡蠣を食べるのだ。中学生くらいのころは20個以上食べていたかもしれない。牡蠣は飲み物。私と同い年のいとこ(男)はどんどんファッションセンスがとがってきておりお洒落メガネに髭。「King Gnuっぽいやろ」「いや、長岡亮介やない?」「そういや東京事変復活したな!」、という会話ができるのはありがたい。
 妹夫婦とは帰省がすれ違いだったため、東京に戻ってから我が家で新年会。料理にハマった妹がローストビーフやケークサレを持参してくれ、夫がうまいフランスパンを買って帰り、先日いただいた美味しい日本ワインなどともに夕方からご飯。宝塚(推し)のDVDを見せ、解説。そして先週は神戸時代の友人EちゃんとRちゃん、Rちゃんの娘が集まってピザパーティー。かねてからイギリス人の彼氏と付き合っていたEちゃんの結婚が決まり大盛り上がり。その報告のインスタグラムの投稿が、きらめくクリスマスツリーの前に指輪の薬指、コメントが「I said YES!」だったことから、2020年の我々内での流行語大賞は「I said YES!」に決定した。
 最近結婚した高校時代の同級生Iくんの家へもお邪魔した。結婚パーティーに呼んでもらったのだが、Iくんの妻は地元から出てきたから東京でのパーティー出席者はIくんの友人や仕事仲間に限られており、それがほとんど男性とのことで、それなら参加者のうち数少ない女性である私が、さきに妻の方と仲良くなっておくのがよかろうという配慮である。炬燵で鍋。ふたりともにこにことしていて、伊予弁での会話。実家感がある。素晴らしい夫婦だ。友人として「Iくんをありがとう……!」という気持ちになりました。
 年末年始は家で過ごすことが多い。自分の家でも友人の家でも、家というだけであったかいかんじがある。プライベートなことも好きなだけ話せるし、二時間で追い出されて寒い中二次会の店を探す必要もない。外での飲み会より会話が雰囲気ごと思い出に残る気がする。とにかく私自身この年末年始だけで6つもホームパーティー(宅飲み含む)をやっているのだから、かなり実感のあるネオ季語である。ただ、その人の性格や人生のどの時期かによって開催や参加の程度にはかなりばらつきがあるだろうことは気に留めておきたい。

〈例句〉
雨や今ホームパーティー町にいくつ  佐藤文香
宅飲みにルンバのおとなしくありぬ
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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