加納 Aマッソ

第26回「チョロギです」

 チョロギはシソ科の植物の茎の部分だそうで、真っ赤なイモ虫、と形容するのがぴったりなモムモムっとした見た目をしていて、ぎゃっとするほど気持ち悪い。大きさは、大きいやつで「まあまあ大きいといえば大きいネジ」くらいの大きさ、小さいやつで「まあまあ小さいといえば小さいネジ」くらいの大きさ。要領を得ないが、とにかくストレスなくつまめるサイズ。指はちょっと汚れる。それがチョロギ。
 味はよくある梅のお菓子だけど、フォルムの奇妙さと食感の裏切り具合は他の追随を許さない。お菓子とは思えない心がざわつくその見た目に、おそるおそる口に入れると、ぷにっとした感触が舌と歯の先に伝わったのも束の間、すぐにカリっとした食感がやってくる。その時誰もが気づく。チョロギというのは、梅のグミとカリカリ梅、最強の二つを続けて味わえる、両A面シングルだということに。そして感動しながら思う。「テンポ早めの拍手してぇ〜!」実際にはみんな、ギリギリのところで我慢する。
 私とチョロギの出会いは突然だった。夜遅くに作業場で企画の打ち合わせをしていた時、机の真ん中にはそれぞれが持ち寄ったアメやらラムネやらが無造作に置かれていた。アイデアが煮詰まって、ふといつも食べているお菓子を手に取ったとき、その下に見慣れない水色のパッケージが見えた。
「チョロギ? なにこれ?」
 すると持ってきた本人が「チョロギです。美味しいです」と答えた。本来なら「説明になってへんがな」というところ、チョロギという謎の響きに誘われて黙って手を伸ばした5秒後、私はチョロギの虜になった。
 次の日、近所のコンビニに数軒寄って探してみたが、チョロギは売っていなかった。前日チョロギをくれた彼女に「チョロギってどこに売ってんの?」とLINEしたら「チョロギです。美味しいです」と返ってきた。だめだ。これは自力で見つけるしかない。私は、お菓子屋や百均や死にかけのスーパーを回って、ようやくチョロギと書かれた商品を見つけた。がしかし、昨日みたパッケージとは違っている。私は一瞬だけ迷ったが、チョロギを見つけた喜びが上回り、結局3袋買って帰ることにした。
 家についてすぐに食べてみる。ん? 美味しいのは美味しいが、食感がただのカリカリ梅で、最初のぷにっがない。見た目も昨日食べたチョロギと比べてイモ虫感が少ない。これだと話は変わってくる。カリカリ梅だけを食べたいなら、あのまんまるふくよかなやつを買えばいいのだ。残念に思ってネットを調べると、私が初めて食べたのは、いくつかあるチョロギのうち、村岡食品のチョロギだった事がわかった。
 ムラオカのチョロギ。私は口に出して言ってみる。良い。ただのチョロギより、ムラオカのチョロギのほうが、思いを寄せる相手としてふさわしい気がする。友達に好きな人のイニシャルを打ち明ける時も、CよりMのほうが選択肢が多くて盛り上がるに違いない。嗚呼、ムラオカのチョロギ。こんなウキウキした気持ちは久しぶりだ。仲のいいお菓子たちにはムラチョロと呼ばれているんだろうか。それともムッチョ? 次はいつ会えるだろう。もういっそ、募るこの想いを曲にしてリリースしたい。もちろん両A面シングルで、タイトルは「つまめ、恋」と「チョロゲット」。
 リリースついでに、ムラオカのチョロギのCMに出たい。ウクレレで奏でるスローテンポの「つまめ、恋」が流れる。晴天の下、畑に風が吹いて草の間から私が顔をだす。キョロキョロとあたりを探している。遠くで土を耕している日焼けしたおじさんがこっちを向いて「お〜い!なに探してんだい?」すると私はカメラを見てにっこり微笑む。「チョロギです。美味しいです」