ちくま新書

コロナ禍の今、何をどう考えたらいいのか?

前著『問い続ける力』は、「考える」ためには「問う」ことが不可欠という一冊だったが、この本ではいよいよ「考える」ことそのものを追求した。著者の「創造のスタイル」も一読の価値があるが、今回の対談相手も豪華な面々だ。世界が日本に誇るイノベーター、濱口秀司氏、大嶋光昭氏、小泉英明氏、これからの日本の行く末を誰もが聴きたい安宅和人氏、仕事を高い視座から考える篠田真貴子氏。
石川善樹の「思考シリーズ」第2弾の「はじめに」を公開します。

 はじめまして、石川善樹と申します。本書は「創造的に考えるとは何か?」がコンセプ
トです。大まかにいうと三つのパートからなっています。
パート1 私が憧れる創造性のスタイル(第一章)
パート2 創造的に考える上で私が強く影響を受けた方々(第二章〜第六章)
パート3 創造性に関する私の研究(長いあとがき)
 もしかすると、気の早い方がいるかもしれないので、まずパート1の結論を述べます。

「わたしが憧れる創造性とは、却来の境地に達することである」

 では、却来とは何か? 私はコトバの専門家ではないので、詳しい意味については誤解をしているかもしれません。しかし、いちいちコトバの正確な定義に立ち返っていたら、混迷だけが深まり前には進まないでしょう。あくまで自分が納得していればよい。とはいえ、あえて却来を定義するとすれば、次の通りです。

「却来とは、ある物事を新しくし、質を高めた後、また古くすること」

 そしてパート1でみていくように、この却来という形式こそ、日本が世界に誇る創造のスタイルなのではないか。私は今、そのように考えています。
 続くパート2(第二章〜第六章)では、五人の賢人たちによる創造のスタイルを扱っています。ちなみにこの五賢人は、次のような特徴を持った方々です。

(全く異なる複数分野で)何度も創造性を発揮している日本人

 後にも述べますが、ポイントとなるのは「全く異なる複数分野」ということです。もちろん、何か一つの分野で卓越した創造性を発揮できたら、それはすばらしいことです。しかし、それだけだと果たして天才の所業なのか、はたまた偶然なのかよく分かりません。ところが、いくつもの異なる分野で創造性を発露したというのであれば、その背景には何かしらのスタイル(方法論)があるのではないか。このように考えて、私がとくに尊敬する五人にお話を伺いました。
 そして本書の締めとなるパート3では、私たちが取り組んでいる創造性の研究についてご紹介します。もちろん研究なので、創造性を数式化しないといけないですし、また具体的な事例を通して「これは面白い!」といわれるものを実際に創り出さないといけません。詳しい内容はご覧いただくとして、ここでも気の早い方のために、結論だけ述べておきます。

 創造性= f(Novelty, Quality)

 Novelty というのは「新しさ」、Quality は「質」です。つまり、私たちは創造性を「新しさ」と「質」という二つの変数によって定義しているのです。勘のいい方はすでにピンときたかもしれませんが、「新」や「質」というキーワードはさきほどの「却来」の中でも出てきましたね。

 ……ということで、本書の全体像は以上のようになっています。あらかじめ誤解のないように申し上げておくと、本書は創造的に考えるための「型」なり「方法論」を提示するものではありません。あくまで「創造的に考えるとは何か?」というコンセプトに対して、「私はこのように取り組んでいる」というプロセスを示したにすぎません。
 しかし、あえて未熟な私の取り組みを示すことで、読者の一人ひとりが「創造的に考える」上で相対的に自分の立ち位置が明確になるのではないか。そのように考えて本書を執筆しました。たった一つの言葉でもいいですし、一つの図表でもいいです。何かみなさまの思考にひっかかるものがあれば、これほど嬉しいことはありません。

 それではさっそく、はじめていきましょう。まずは、「私が憧れる創造性のスタイル」について、世界に誇る日本の偉人たちを見ていくことにしましょう。

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