弱き者が見殺しにされる国 -新型コロナウイルスの猛威の陰で-

第二回 命綱を失った障害者家庭

障害者と就労崩壊(1)

五月中旬、築五十年以上経つ団地の2DKで、七十代の母親と四十代の息子が栄養失調に近い状態で発見された。最初に姿を見つけたのは障害者グループホームの職員。緊急事態宣言の陰で、親子ふたりはなぜ孤立に追い込まれていったのか――。障害者本人の陰に隠れ、その家族の抱える問題が取り上げられることはほとんどありません。コロナ禍において当事者だけではなく家族も孤立しないような状況を作っていくには、どういった支援が必要なのでしょうか。「就労支援」の視点から迫ります。


 わずか数日のうちに、宗義は母親から預かったお金をほとんどつかい果たしてしまった。日々の食事は、「節約」と称して二回に制限し、しかも菓子パンだけと決めた。母親がお腹が減ったと言えば、怒って大きな声を出した。
「今は特別な時だから節約しなきゃならないの!」
 弱っていた母親にしてみれば、強い口調でそう言われれば、従わざるをえない。そうこうするうちに、二人は栄養不足から急激に痩せていった。
 事態が発覚したのは、ゴールデンウイークの直後のことだった。
 宗義が働いていた事業所の職員が状況確認のために電話をかけた時、宗義の様子がおかしいことが気になった。そこで自宅訪問をしたところ、宗義と母親が目を疑うぐらい痩せ衰えていたのを見つけたのである。

 私にこの案件を教えてくれたのが、事業所の職員だ。彼は次のように述べる。
「休業が決まった後、事業所の職員も在宅や時短での仕事に切り替えていました。それでなかなか連絡が取れなかったというのが実情です。ただ、三月分の給料は四月に普通に支払っていましたし、休業中の四月分も五月に支払う予定だったので、我々としては家にいるようになった他は特に大きな変化はないだろうと思っていたんです。
 今回の件で、うちで働いている利用者さんたちはサポートがあって初めて生活が成り立っているんだということを改めて感じました。お金のつかい方、世の中の情報処理の仕方、心のコントロールの仕方……。この一件が起きたのは、コロナのせいでそういった一人では難しいことをやらせてしまったのが原因です。
 これ以降、うちではスタッフに二、三日おきくらいに利用者に連絡させて、LINEのビデオ通話で家の状況なども見てもらうようにしています。本人は『大丈夫』と言っても、映像で見れば変化に気が付けますので」
 これはまさに就労支援が、障害者にとっての生活を支える基盤となっていることを示しているだろう。

 次回はもう一つ別の例を見てみたい。

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