ポラリスが降り注ぐ夜

マイノリティのリアルを誠実に書くということ

新型コロナウイルス禍の影響を受けて中止となった3月6日、日本橋・誠品書店での李琴峰さんと村田沙耶香さんの『ポラリスが降り注ぐ夜』刊行記念対談。場所をオンラインに移し、「こういうひとが真摯に描かれている小説をずっと読みたかった」と言う村田さんの『ポラリス』感想から、「どれも突拍子もないアイデアが秀逸」という李さんの村田作品への賛辞、そしてお互いの書法からマイノリティへの思いまで、たっぷりお話しいただきました!

■新たなチャレンジに向けて

村田 いまは新しい作品を書かれているんですか。
 書いていますけど、いつできあがるかはわかりません(笑)。
村田 わたしもそうです(笑)。
 たぶん二五〇枚くらいの中編になると思うんですが、これまでは現実の世界を背景に書いてきましたけど、今度は架空の世界を書いてみたいと思っています。自分のなかで、セクシュアルマイノリティの実相をリアルに書くのは『ポラリス』で一区切り着いた気がしていて、今度はもう少し違うものを書こうと思っています。
村田 わたしはへんてこな設定の小説をひたすら書いています。自分がこの日本という国で女の子であるという苦しさをずっと感じてきたことを書こうとしているんですが、自分なりにリアルに書いていくとやっぱりなぜかすごく変な設定になってしまって、おかしいなと思っています(笑)。
たとえば、わたしは料理が出来ないんですけど、それはこの社会で若い女の子が料理を作ることを誰かが喜ぶことの圧が異常に高いのがいやで、料理をするのが苦しかったんです。そういう類いのあれこれをぜんぶ書き留めておきたいと思って書いているのですが、どんどん設定が変になってしまって、担当さんを困惑させてしまっています。
 村田さんの小説は設定は突拍子もないけれども、実際に語られていることはこの社会のリアルな真理というところがあって、料理で言うと「素晴らしい食卓」にすごく共感を覚えました。わたしはとても偏食で好きなものと嫌いなものの差が激しくて、ひとが美味しいというものが食べられなかったりするので、ここで書かれた「食事をするということは文化を摂取するということだ」とか「いまは自分の好きなものを食べられるようになった時代だよ」ということを、たしかにその通りだと思いました。
村田 そんな風に読んでもらえるととても嬉しいです。
 新作も楽しみにしています。今日は有難うございました。
村田 私も楽しみにしています。近いうちに、リアルでもお話ししたいと願っています。有難うございました。

(2020年5月5日、Skypeにて収録)
 

 

2020年6月5日更新

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李 琴峰(り ことみ)

李 琴峰

1989年台湾生まれ。作家・日中翻訳者。2013年来日。2015年、早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程修了。2017年「独舞」にて第60回群像新人文学賞優秀作を受賞しデビュー。2018年『独り舞』を刊行(のちに自訳で台湾でも刊行)。2019年「五つ数えれば三日月が」が第161回芥川賞候補作となる。同年、『五つ数えれば三日月が』を刊行。2020年『ポラリスが降り注ぐ夜』を刊行。その他の作品に「流光」「星月夜」などがある。

村田 沙耶香(むらた さやか)

村田 沙耶香

1979年千葉県生まれ。2003年「授乳」で群像新人賞優秀作を受賞。2009年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞を、2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞を受賞。2016年「コンビニ人間」で芥川龍之介賞を受賞。2019年、劇作家の松井周と共同で原案を作った『変半身(かわりみ)』の小説版を刊行。その他の作品に『タダイマトビラ』、『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

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