ちくま文庫

光の柱が立っている楽になる本

ちくま文庫『あたしい自分になる本 増補版』解説

7月刊のちくま文庫、服部みれいさんの『あたしい自分になる本 増補版』に寄せられた、辛酸なめ子さんによる解説「光の柱が立っている楽になる本」を公開します。

 女子アナとか女優とか、きれいな人ほどやっている冷えとり健康法。その元ネタというか発信源は、服部みれいさんの著書や雑誌だと推測されます。


 多くの女性にあたらしい道を示した啓蒙の書『あたらしい自分になる本』。この本が出たとき、書店で素敵なデザインが目を引いただけでなく、本から光の柱が立っているような、世の女性にとっての希望だと感じました。今は女性にとって何かと生きづらい時代で、輝きながら出産しろとか、無理難題を押し付けられるだけでなく、ルックスを保たないと劣化とか言われるし、メイクやファッションも日本女性の高いクオリティーを守らなければなりません。前髪が変なふうに割れていただけで、ヒールがちょっと折れていただけで、ネイルがはげていただけで、女子失格の烙印を押されかねないシビアな現実。さらに経済的にも厳しくなってきて、税金も保険も上がっていくけれど国はたよりにならないし、世の男性は甲斐性がない。自分でなんとかしなければと焦燥にかられたときに、この本を読むとふっと楽になります。それと同時に、女性が本当の自分を探求することで、表面的なモテ術にはよらない、真の魅力が現れるという、ありがたい本。服部さんが本能と直感で選んださまざまな手法やライフスタイルはどれもまちがいない感じです。


 冷えとり健康法やアーユルヴェーダ、ホ・オポノポノ、瞑想、スペース・クリアリング、etc……。個人的にも興味があったりやってみたりした分野が多く(挫折もありますが……)、服部さんのフレンドリーな文体で紹介されると、よりいっそう身近に感じられます。「○○だよね」「○○なんだ」「○○かな」といったタメ口はまるで旧知の友達に語りかけられているようで、頭にすっと入ってきます。いつも敬語に囚われている身としては、こういう文章が書けるのがうらやましいです。オープンマインドでチャクラも開いてないと書けません。


 また、詩人でいらっしゃるので素敵な表現も多いです。冷えとり靴下の感触について「イメージでいうと、卵白にくるまれている感じ」「とてもやわらかいものに、ほわほわっと包まれているという感じなんだ」、類は友を呼ぶという話で「さみしいひとはさみしいひとを引き寄せ、傷ついたひとは傷ついたひとを引き寄せる」、瞑想している人たちについて「おおらかだし、やわらかい質あって、きまじめさがなくて、ふわっとしてるというか、ふにゃっとしてるというか」、生理用ナプキンに経血が広がる「むはーっ」という擬音など、二度見、三度見してしまう表現で、それにより潜在意識にインプットされます。ナプキンといえば、打ち合わせのとき、夜用のナプキンがなぜか3個机の上に出てきて男性に見られた話が鮮烈なインパクトでした。このエピソードだけでも、服部さんへの信頼感が高まります。噓をつけない、ほんとうのことしか言わない率直な方だということが伝わります。


 瞑想についての項で、「とにかく、ものをよく忘れるようになった」というのは、同じく瞑想をしていてもの忘れが激しいのでちょっと安心しました。3日前のこともだいたい覚えていないのですが、これからは、いまこの瞬間に生きているから、ということにします。「自分が自分らしくなっていくときに、黒を着なくなる」というのも納得させられました。黒はいきがっているとき、威圧感を出したいときに着るものかもしれません。モードはさびしさを引き寄せます。


 心に刺さったというか耳が痛かったのは、冷えについての項目です。
 「なんかぽちゃぽちゃして、ぶよぶよして、冷えて滞っている感じ」
 血や気がうまく巡っていない体の表現で、言い得て妙で、たしかにそんな感じです。1回冷えとり靴下に挑戦したことがあるのですが、5本指ソックスと重ねばきの難易度の高さに挫折してしまいました。5本指ソックスに対する妙な羞恥心も払拭できず……。効能のすばらしさを改めて知ったのでまた挑戦したいです。


 また、食事についても思い当たる節が。


 「つくってから時間がたつと、タマスという質が増えて、オージャスはなくなる」だそうで、デパ地下の作り置きの惣菜ばかり食べている私はタマスたまりまくりです。冷えとタマスをなんとかすれば人生が好転して、フレンドリーな文章も書けるようになるでしょうか? こうして解説のお仕事でまたこの本と出会えたのも運命な気がします。読者の方もこの文庫を手に取ったのはハイアーセルフの導きかもしれません。あたらしい自分にな
れば、潜在意識で皆とつながって、心強く生きていけそうです。
 

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