加納 Aマッソ

第30回「一旦13時で」

 日頃から付き合いのある人たちに動画撮影や制作を手伝ってもらう時、決まって13時集合にしてしまう。本来ならその日の作業にかかる時間を逆算して集合時間を決めるのが親切ではあるが、たいてい内容のことで頭がいっぱいで、「明日何時からですか?」と連絡がきたら、条件反射的に「一旦13時で」と返事をしている。前日の夜に聞かれているのだから「一旦」もなにもないが、これは特に意味があるわけではない。「ほな」「じゃあ」ぐらいのことである。
 ただ、13時集合の理由もあるにはある。芸人をはじめカメラマンや作家、メイクさんなど、それぞれの職業柄夜遅くまで仕事していることもあるので、よほどじゃない限り朝からの稼働は頼みにくい。あと普通に自分も眠い。ということで、ひとまず午前中は避ける。眠いときの集中力の低下が作品に及ぼす影響はいやというほど知っているので、これは正しい判断だと思っている。
 それなら12時集合にするかと言われると、それもしない。なにせ「12時」という言葉に含まれる「ついさっきまでは午前だった感」があまりにも強い。12時はおそらく「午前中のことなら何でも聞いて」と思っているし、その心意気は「午後のルーキー」でなく「午前の大トリ」なので、そうなると12時はおのずと「集まってもらうには気をつかう時間」にカテゴライズされる。
 14時以降に開始すると作業が終わらなくなるので、13時集合。13時が完璧な集合時間であるはず。なのに今度は、別の問題が浮上する。昼ごはんである。この時間は、食べて来ている奴と来ていない奴が絶妙に分かれる。これも、前日に一言「お昼食べてから来てな」と言っておけばいいのに、そこまで気が回らない。現地に向かう道すがらに思い出し、慌ててみんなに「お昼食べた?」と聞く。食べてきた奴には準備を頼み、食べてきていない奴には弁当を買っていく。集合すると、弁当を食べている奴の醸し出す和やかなムードが一同を包み、準備していた奴も手を止めて、缶コーヒーを飲みながら談笑する。結局作業を開始するのは14時。14時は一瞬で15時になる。そして16時。アララ17時のオロロ18時。その後も「もう日ぃ暮れた? 前のカットと繋がる? やばい」「これ今日で終わらんくない? 来週にする?」「一回休憩はさむ?」「みんな終電何時?」「朝からやっといたらよかった? それ今言う? 今? 今何時?」など、時間に翻弄されまくって一日が終わる。
 今年の七夕は「時間の教科書ください」と、短冊に書いた。

 0時の「だからなに?」感
 1時の「この時間やともう連絡したらあかん」感
 2時の「こんなはずじゃなかった」感
 3時の「やってもうてる」感
 4時の「だれもいらん時間」感
 5時の「この辺からが今日」感
 6時の「エセ優等生」感
 7時の「分刻み」感
 8時の「分刻み」感②
 9時の「正しさを強要する」感
 10時の「社会は私なしでも回ってる?」感
 11時の「後でも考えられるしな」感
 12時の「ついさっきまでは午前だった」感
 13時の「とりあえず」感
 14時の「良くない落ち着き」感
 15時の「今日のハイライトはここではない」感
 16時の「どっちにも転ぶ」感
 17時の「お腹すいてはいけない」感
 18時の「もう18時?まだ18時?」感
 19時の「子供と大人の境目」感
 20時の「ここ充実してないとあかん」感
 21時の「『今日中に』って言ったこと後悔してる」感
 22時の「明日に向けての思考」感
 23時の「感覚だけで物言ってもうてる」感
 

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