ちくまプリマー新書

「地方」に人と人がつながる「場」をつくる

ウェブマガジンが生みだした新しいコミュニティ

いま、余白がある「地方」にこそ可能性が広がっている。これまでの居場所を違った角度で見つめなおすと、新たな面白さ、そして課題と魅力が浮かんでくる――。ちくまプリマー新書『地方を生きる』より本文を一部公開します! 福島テレビを退職して上海に移住した著者は、刺激的な経験を経て、地元・いわき市小名浜に戻ります。培った経験をもとに「ローカル・アクティビスト」として現場の課題に取り組むことになり…。(写真撮影=橋本栄子)

 いまのようにウェブ広告も発展しておらず、契約先があるわけではないので、このサイトでは一円も稼げません。むしろ、サーバー代や取材費用など出費ばかりで、もはや「副業」ですらなく完全に「趣味」です。けれども、ウェブマガジンの運営が収入につながらないなんてことは、帰国する前からわかっていたこと。好きなことでは稼げないし、むしろ稼がなくていいんじゃないかと思っていました。稼ぐ稼げないは問題じゃない。問題は、活動をいかに長続きするものにしていくかです。「好きなことを好きにやる」を目指す時、それで稼ごうとすることはむしろ障害になり得ます。だから、ぼくは初めからメディア運営で稼ごうとは思っていませんでした。

 そもそも地元のいわき市は製造業のまちなのでメディアの制作会社は数件しかなく、メディア企業への就職もほとんど諦めていました。いや、製造業がメインだとすれば、多くの場合、勤務時間は朝八時から一七時まで。仕事が終われば一七時から二四時まで七時間も余裕があります。ならば、昼間の仕事は食い扶持を稼ぐことに集中し、夜間や休日に自分の好きなこと、興味のあることをやればいいじゃないか。むしろ、そうしたライフスタイルは製造業がメインで朝八時始業の会社が多い土地だからこそ輝くのではないか、と考えていました。結局、ないものねだりをしても仕方ないんです。すでにあるものの見方を変えて、どうすればポジティブに変換することができるかを考えるほうが圧倒的にヘルシーです。

 そう割り切ったぼくは、地元で開催された地元企業の就職説明会に参加しました。そこで、運よく中国とも取引があるという木材商社のブースを見つけました。同世代の専務、常務との面接は反応もよく、中国語を話せるなら仕事にも生かせるはずだということで、すぐにその会社への就職が決まりました。自宅から事務所へは車で一〇分。勤務開始時刻は予想通りの朝八時。定時であれば一七時には退勤です。夕方五時までは木材商社の広報・営業担当として働き、それ以降は自分の好きなことができる。そう割り切れると、昼間の仕事にも集中できそうです。ぼくは、そのようなライフスタイルを「晴耕雨読2・0」と呼ぶことにしました。四字熟語の「晴耕雨読」よろしく、昼は食い扶持を得る仕事(晴耕)に徹し、仕事がない時間にクリエイティビティを発揮し、本来やりたい活動(雨読)に取り組もうというものです。ないものばかりの地方都市だからこそ、ライフスタイルは、こうして「自分で作る」ことができるんです。

ウェブマガジンの効能

 ウェブマガジンを自分で作ってみて初めて気づいたことがあります。それは、ウェブマガジンが新しいコミュニティを作るということです。取材で知り合った人たちが記事で可視化されることで、新たな地域の担い手が生まれ、これまでとは違う人のつながり、コミュニティが生まれるんです。

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