単行本

"いしわたり淳治"

スピードワゴン 小沢一敬×作詞家 いしわたり淳治

PR誌『ちくま』1月号よりスピードワゴン小沢一敬さんによる『言葉にできない想いは本当にあるのか』(いしわたり淳治)の書評を転載します。 音楽好きで読書家でも知られる「セカイノオザワ」はこの本をどう読んだか?! あまり知られていない二人の関係も!!

 いしわたり淳治さんの三冊目の本が出た。
 自分の話で大変恐縮なのだが、僕がまだ二十代だった頃(はっきりした時も場所も、もう思い出せないのだけれどそう信じたい。僕はまだ二十代だった)、いしわたり淳治さんとよくご飯を食べたり、他愛もない話をしたりした。草野球とかもしたりしたっけ。
 決して仲が悪くなったとかはないのだけれど、少しずつ忙しくなってきてタイミングが合わなくなり、気がつけば随分と会えていない。
 今回はこの機会をいただいたので、昔のように「淳治くん」と呼ばせてもらう。
 
 淳治くんと初めて会ったのは多分、西寺郷太くんの紹介だったと思う。
 三人でよく遊んだ。
 淳治くんはあまり口数は多い方ではなかった。大体、郷太くんと僕が喋っていた覚えがある。口数は多くないがはっきりと物を言う人だった。そして笑う時いつもどこか照れ臭そうだった。その顔がとにかく恥ずかしそうでチャーミングだった。
 僕はずっと淳治くんを笑かしたかった。
 淳治くんにもっと話をしてもらいたかったのだ(三人の日と書いて春と読むのなら確かにあれはアオハルユースだった)。
 淳治くんの話はとても興味深いことばかりで、言葉の魔術師なんて言葉があるけど、そんな言葉じゃ足りないくらい彼の言葉に魅了されていた(手品も魔法も英語ではマジックだけれど淳治くんの言葉は魔法だった! なんて言うつもりもない。大体マジックって水性だったら消えてしまう)。

 僕はお笑いというものが好きで(みんなもそうだったら嬉しいんだけれど)「面白い」ものに夢中だった。
 大体が「面白い」で終わってしまうんだけれど「面白い」を誰かに伝えたい人がいて、淳治くんはきっとそんな人だと思う。――「面白い」に気づき「面白い」を伝えたい人。

 以前淳治くんが書いた『うれしい悲鳴をあげてくれ』(ちくま文庫)という本が好きで何冊も買った。
 なぜかというと、僕には好きな人や仲良くなりたい人にその時一番お気に入りの本をあげる習性があり、ある時期その本ばかりを持ち歩いては、その大切な役目を任せていたのだ(淳治くんの本の前は寺山修司の『ポケットに名言を』が多かった)。

 さて今作は、淳治くんが気になる言葉やフレーズなどを音楽、テレビ、映画、本などからピックアップして、それについて思う事を解説していくスタイルである。
 耳馴染みのある言葉もあれば、もう今では消えていった言葉もあるし、よくそんな言葉見つけてきたな、というのもある。
 普通なら通り過ぎてしまうところで立ち止まる。テレビを見ていて、普通なら笑ってしばらくしたら忘れていってしまう言葉に立ち止まる。また、これはひょっとしたらこういう意味なんじゃないか? こんな使い方をすることもできるんじゃないか? 考えすぎなんじゃないかというほど考えている。常日頃言葉と真剣に向き合っているから見過ごすことができないのだろう。
 笑ってしまう回もあれば、気づきと発見の回。たまにひょっとしたらこれは人生の真理なんじゃないか? なんて回もこっそり忍ばせて。リズムが良くて読んでいて気持ちがいい。気持ちがいいのに時折ゾワっとする。――やはり淳治くんである。

 寺山修司が昔言った。
「言葉を友人に持ちたいと思う」
 淳治くんはきっと言葉を友人のように大切に思い、友人のように笑い飛ばし、友人のように雑に扱ってみたりもする。
 大切な人にプレゼントしたい本がまた一冊増えました。
 ありがとう淳治くん。
 また昔みたいに下北沢や三軒茶屋あたりで飲めるといいな。

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