ちくまプリマー新書

新聞はどのようにしてニュースを「作る」のか?

『はじめてのニュース・リテラシー』より本文を一部公開

誰もが情報発信できる現代、ニュースの〈信用度〉を的確に評価することは、さらに喫緊で重要な課題になった。ニュースの作られ方から陰謀論の構造までを精査する――ちくまプリマー新書の最新刊『はじめてのニュース・リテラシー』より本文を一部公開しました。毎日新聞社に勤務していた著者が、新聞制作のプロセスを解説します。

新聞制作の流れ

 この世に無数に存在する出来事の中から、マスメディアはどのようにして「ニュース」を選びだしているのだろうか。この問題を考えるために、今からマスメディアの仕事の具体的な流れを簡単に説明したい。この流れが頭に入っていないと、記者や編集者がどのようにニュースを取捨選択しているかが分からないからである。以下、私が一九九五〜二〇一四年まで勤めていた毎日新聞社における新聞制作のプロセスを例に挙げて説明したい。

 毎日新聞社には記者で構成される編集局、新聞販売に責任を持つ販売局、企業などから広告の掲載を請け負ってくる広告局、スポーツイベントやコンサートや展覧会を開催する事業本部――などの組織が存在する。森羅万象の無数の事実の中から何を報道するかを決めるのは編集局である。

 毎日午後三時ごろになると、翌朝配達する朝刊の編集が本格的に始まる。この午後三時ごろまでに、編集局傘下の政治部、経済部、社会部、運動部、科学環境部、学芸部などの記者は本社デスクまたは記者クラブのリーダーであるキャップに、私が所属していた外信部の海外特派員は東京本社の外信デスクに、日本国内の地方記者は地方支局デスクに「自分は本日、こういう原稿を書いて出したい」という出稿計画を提出する。記者は所属している官庁や警察の記者クラブでの会見や発表資料などを基に原稿を書く場合もあるし、自分が独自に取材してきた事柄について書く場合もある。

 現場記者及びキャップからの出稿計画を受けた各部デスクはこれらを整理し、午後五時半からの編集会議に出席して、自分の部から出稿したい原稿をまとめて提起する。デスクとは、本社の各部副部長と地方支局次長のことを指す業界用語であり、現場の記者から出てくる原稿のリライトや取材の陣頭指揮に立つ要職である。

 この午後五時半からの会議には、その日の朝刊編集責任者の編集局次長、各部デスク、そして紙面づくりを担当する整理部のデスクたちが出席する。編集局次長とは、編集局トップの編集局長の下で働く数人の局幹部であり、ローテーションで毎日、朝刊の編集責任者を務めている。また、整理部とは、記者が書いた原稿に見出しを付け、新聞の各ページにニュースを配置して紙面をつくる人々である。

 編集会議では、どのニュースを一面トップに載せるか、社会面トップ記事を何にするか、国際面にはどの国のニュースを載せるか――といったニュースの取捨選択と「記事の扱いの優先順位」を決める。そして、ここから、翌日午前一時半ごろまで朝刊の紙面づくりがおよそ八時間にわたって続くことになる。