ちくま新書

「もう一度乗りたい新幹線電車」第1位!
国鉄最後の名車の開発秘話に迫る

1985年に誕生、国鉄最後の名車として知られ、引退後も根強い人気を誇る「新幹線100系」。その開発にまつわる秘話を綿密な取材とともに描く、その魅力がぎっしり詰まった一冊。ちくま新書4月刊『新幹線100系物語』より「はじめに」を公開いたします。

記録よりも記憶に残る名車100系
 100系は、東海道新幹線開業以来活躍を続けた0系から20年ぶりのモデルチェンジ車として1985年に誕生した。1987年の国鉄民営化を目前に控えた大きな潮流のなか、100系は国鉄・メーカ技術陣が背水の陣で設計・開発に臨んだ車両で、「お客様第一」の設計思想が貫かれただけでなく、エクステリア・インテリアデザインに部外の工業デザイナーが本格的に参加した車両で、とかくビジネスライクな新幹線に旅の楽しさを提供した車両でもあった。
 民営化後に東海道・山陽新幹線を承継したJR東海・西日本が増備した100系は、カフェテリア車、グランドひかりなど新生JRのイメージアップに大きく貢献した。そして民営化間もない時期に100系を舞台としたJR東海のCM「エクスプレス・キャンペーン」は、日本のCM市場に一大金字塔を打ち立てた。しかし黄金時代が短いのは世の常、100系誕生の7年後には走行機能全般の改良をはじめ最高速度270㎞/hを実現した300系が誕生し、主役の座を後継車両に譲ることになった。
 100系は0系と300系の間にはさまれ、技術的には「つなぎの車両」だったように見えなくもないが、国鉄末期から民営化初期にかけてのフラッグシップトレインとして輝きを見せた。鉄道関係のニュースサイトが「もう一度乗りたい新幹線電車は?」のアンケートを実施した結果、100系が1位で「歴代車両のなかで一番華やかな存在だった」などの意見が寄せられたというが、まばゆいばかりの輝きが人々の記憶に残っているからこそ、多くの人々から支持されるのだろう。
 2階建て食堂車・グリーン車を組み入れて富士山麓を颯爽と駆け抜ける姿は絵になる存在で、100系は記録よりも人々の記憶に残る名車だったことは間違いない。そんな名車の足跡を、基礎資料や関係者への聞取りを基軸にまとめたのが本書である。

本書の構成
 100系の構想が本格的にスタートしたのは1980年のこと、営業運転は85年から2012年までの27年間にわたった。本書ではこの32年間を時系列に全8章で紹介している。
 第1章では、1964年の東海道新幹線開業以来増備が続けられた0系の後継車両として、2階建て車両を組み入れたモデルチェンジ車の構想がスタートした当時の背景、そして検討の経過を紹介する。
 第2章では、それまでの0系では回転できなかった普通車3人掛シートを回転可能にし、このためシート間隔を広げたにもかかわらず0系16両編成の普通車定員を確保した経緯、100系の「目玉商品」でもある2階建て車両は食堂車1両で構想がスタートしたが、その後グリーン車1両を2階建て車両(したがって16両編成で2両)に変更した経緯などを紹介する。
 第3章では、0系をブラッシュアップした先頭形状と外部色決定の経緯、コスト低減を追求した主回路システム選定の経緯などを紹介する。また100系は部外の工業デザイナーが車両デザインに本格的に参加する先駆けとなった車両でもあり、先頭形状や外部色だけでなく、落ち着いてくつろげる空間を目指したインテリアの実現に大きく貢献した経緯などを紹介する。
 第4章では、85年3月に完成した100系第1陣の量産先行車が10月から営業運転が開始された経緯、車両基地で量産先行車を専任で担当する試験科の発足、営業運転開始後の初期トラブル克服に奔走した関係者の苦闘、100系にとって国鉄時代では唯一となったお召列車運転の経緯などを紹介する。
 第5章では、民営化後に投入が計画されていた量産車を、民営化までに前倒して投入されることになった経緯、大窓に変更など量産車の設計変更の経緯、そして東海道・山陽新幹線の速度向上と100系量産車が営業運転を開始した86年11月ダイヤ改正の経緯などを紹介する。
 第6章では、民営化間もない時期に100系を舞台にしたシンデレラ・エクスプレス、クリスマス・エクスプレスなどエクスプレス・キャンペーンが放映されるまでの経緯、一連のキャンペーンを企画した担当者の思いなどを紹介する。
 第7章では、JR東海・西日本が増備した100系カフェテリア編成とグランドひかりが誕生するまでの経緯、そして100系の全盛期だった92年3月ダイヤ改正までの動向を紹介する。
 第8章では、「のぞみ」が運転を開始し100系がわき役に押しやられる契機となった93年3月ダイヤ改正、その後の落日を経て、最後まで残った山陽「こだま」運用からも引退し、営業運転を終える2012年3月ダイヤ改正までの動向を紹介する。
 100系は国鉄民営化前後、つまり1980年代後半から1990年代前半という日本に活気のあった時代に光り輝いた車両だった。その足跡の一端を本書から読み取っていただければ幸いである。

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