苦手から始める作文教室

第2回 自由作文は、自分が書けることを書けばいい

1回目で決めた自由作文のテーマ「家賃が高いからおやつはPBとうまい棒しか食べていない」「でも別に不満はない」。これを、そこそこ分量のある作文にするためにはどうしたらいいでしょうか?

 前回は、わたしの日々のおやつ事情に関して友達に言いたいことと、友達に言いたいようなことならだいたい、作文の授業で「自由に書いてください」と言われた場合、書いてもよいのです、ということについて書きました。今回は、わたしのおやつ事情について一定量の文章を書く場合、「家賃が高いからPBとうまい棒しか食べていない」と「でもべつに不満はない」の間にいろいろ書かなければならないのですが、それはどうしていきましょうか、ということから話を始めたいと思います。

 結論から言うと、「家賃」「おやつ」「PB」「うまい棒」に関することなら、何を書いてもいいと思います。もちろんそれ以外のことを書くこともできますし、発想に優れた人、作文のうまい人は、どれだけ脱線してもちゃんと着地できますが、前回書いたようにわたしは作文が下手になってきています。この話の流れで言うと、「家賃が高いからPBとうまい棒しか食べていない」のあとに、「家賃」「おやつ」「PB」「うまい棒」のことについて書くのは、山登りにたとえるなら、初心者ルートであると言えます。安全な、無難なルートです。それ以外のことを書くのは、中級者、上級者のルートということになると思います。

 作文は、山登りで言うと、ふもとから頂上へ行ければなんでもいい(※)ので、べつに崖を登ってもいいですし、ヘリコプターで吊り下げてもらう手もありますし、できる人はどんどんやったらいいのですが、あまり難しいことをやって、やりきれなくて投げ出してしまいたくなるのは作文をすすめる者として悲しいので、まずは初心者ルートを選ぶことをおすすめします。

 初心者ルートを選ぶとして、わたしが考えた「家賃が高いからPBとうまい棒しか食べていない」と「でもべつに不満はない」の間に書けるなと思うことを、以下に箇条書きにしてみます。

・それまで食べていたおやつの値段(おやつ)

・自分が好きなコーンポタージュ味が売り切れていることが多い(うまい棒)

・うまい棒は包装の内側においしい粉がたくさん付着しているため、ゴミを捨てる時に洗うのが大変だが、それでも買う(うまい棒)

・PBを買うときは必ず裏面の「製造元」を見る。有名な会社なら「いろいろなことをしてるな」と思うし、知らない会社なら「覚えておこう」となる(PB)

 「家賃」も初心者ルートだと書いたわりには、わたしは家賃の話はしたくなくて、どちらかというとうまい棒の話をしたい、ということがよくわかります。なのでこの場合は、素直にうまい棒のことを書けば良いと思います。そういうわけで、わたしの日々のおやつについての作文に関して、書くことの順番は、

・家賃が高いからPBとうまい棒しか食べていない

・うまい棒はコーンポタージュ味が好きだが売り切れていることが多い

・うまい棒はゴミを捨てる時に洗うのが大変

・でもわたしはうまい棒が好きなのでべつに不満はない

 だいたいこんな感じになります。あとは「コーンポタージュ味を買うのにどういう努力をしているか」「コーンポタージュ味がなければどうするのか」とか「どう洗う時に大変なのか」について細かいことを書いているうちに、原稿用紙は埋まっていくと思います。

 わたしはうまい棒のことを考えるのが好きなので、うまい棒がメインの作文の計画になりましたが、家賃の話をするのが好きな人や、PBに関して言いたいことがある人はそのことを書けば良いと思います。

 作文にうまい棒のことなんて、と抵抗を感じられる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、わたしが中学生の時に作文で賞をもらった時に書いた内容は、「外出先で注文したカレーが思ったより辛かったので、その後にやってきたプリンが普段の何倍もおいしく思えて幸せを感じた」という、うまい棒と大差ないものでした。これまで、学校の授業の作文で良い評価をされた時に、友情についてとか、努力についてとか、部活での成果についてとか、ステキな出会いについてとかいった「もっともらしい」内容で評価されたことは一度もないように思います。だいたいカレーとプリンの食べ合わせとか、毎朝通る横断歩道で青信号が点滅し始めるとものすごく急ぐけれども、いつも間に合うので毎朝ちょっとだけうれしい、みたいなことです。

 友達に言いたいことがあれば作文は書ける、と書きましたが、それを一段下げて、友達に言いたいけれどもしょうもないので言うか言わないか迷っていること、を作文に書くのも良いと思います。そんなことを書く意味があるのかと思われるかもしれません。けれども、その人の心に浮かんだことなら、書く意味がないということはないのではないかとわたしは思います。作文を受け取る国語の先生の方も、もし「自由に書いてください」と生徒さんたちに告げたのであれば、どんな内容でも受け入れていただければと思います。

 

※そもそもふもとから出発できればなんでもいいとも言えるのですが、そのことについては回を追って説明します。

 

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