ちくまプリマー新書

マヤ文明の驚くべき天体観測と暦の話

『古代文明と星空の謎』より本文を一部公開

ストーンヘンジ、ピラミッド、古墳、数々の暦、民話――人類と星空の関係を読み解く一冊『古代文明と星空の謎』(ちくまプリマー新書)が好評発売中! 本書が扱う「古天文学」は、いにしえの人たちが星空をどのように眺め、何を見出してきたのかを歴史上の遺跡や記録などを手掛かりに読み解く研究分野です。今回の記事ではマヤ文明の宇宙観、すぐれた天体観測技術と暦の関係をひもときます。

 マヤ文明の宇宙観(図1)についてみてみましょう。

図1 マヤの宇宙観を示す神殿の浅彫

 マヤ文明の人たちが考えた宇宙は、天を13階層、地上を9階層に見立てて、大地は四つの神で支えられています。

 数字も特殊で、二十進法になっています(図2)。十進法の倍ですから、ある程度、合理的ではあります。

図2 マヤの数字。二十進法

 「0」を表す記号は特徴的ですが、1からあとは単純な点と線で表されます。

 1から4までは点の数で表され、5になると横棒になり、6から先はその上に点を加えます。10は5の横棒が2本です。11からは、この2本の横棒の上に点が加えられ、15は横棒が3本、16からはその上に点が増え、そして、20は「0」を表す記号の上に点が一つです。

 この20の上の点は1つで20を表していますので、30は横棒2本(10)の上に点が一つです。そして、40は「0」を表す記号の上に点が二つです。

 このように、数が20増えるごとに特徴的な「0」が出てきて数字表記が単純化されるので、二十進法と考えられているわけです。

太陽暦と優秀な天体観測技術

 マヤ文明の暦は非常に優れていました。

 暦は三つあります。

 1周期が地球の公転周期と同じ365日の「ハアブ」と呼ばれる「太陽暦」。1周期が260日の「ツォルキン」と呼ばれる「儀礼暦」。そして、紀元前3114年の基準日からの経過日数で表す「長期暦」です。

 太陽暦(ハアブ)については、エジプトのピラミッドのところでも解説しましたが、1か月が20日、1年が18か月なので、20×18=360で、それに5日を足して、1年を365日とします。

 日にちの数え方としては、各月は0(ゼロ)から開始します。先ほど紹介した二十進法は、このひと月の日数「20」が基本になっていると思われます。地球の公転周期は、正確には365・2422日ですから、1年ごとに0・2422日ずつずれてきます。その誤差は適宜、調整されていたようです。

この誤差の調整に四苦八苦していたエジプトに対して、なぜ、高度な文明を持つマヤの人たちは「適宜調整」などという悠長な方法ですませていたのでしょうか。

 エジプトでは、小麦や作物に甚大な被害を与えるナイル川の氾濫を精密に予測することが何より大切であったため、正確な暦が必要不可欠でした。しかし、マヤ文明が栄えた場所は熱帯雨林で、雨季と乾季の予測の必要性が多少あっても、作物を植える時期に関して非常に精度の高い暦が必要かというと、そうではなかったと思われます。

 ですから、エジプトのように細かな誤差の調整を必要としていなかったのではないかと推測されます。