パンケーキフレームワークで変化をとらえる 

パンケーキフレームワークで変化をとらえる

「自分のやり方」を変えるのは難しい。でも、今の複雑で曖昧な時代には「試さずに否定派」は危険かもしれない。どうしたら変えられる自分になるか、『地頭力を鍛える』や『「具体→抽象」トレーニング』などのベストセラーで知られる著者が、パンケーキ思考で解明します! 注目の新連載のスタートです。

 

はじめに

 いまはVUCAの時代と言われています。VはVolatility(変動性)で、株価の変動や企業業績の変動などリスク(振れ幅)が大きいこと、UはUncertainty(不確実性)、つまり不確実で何が起きるかわからず、必ずしも「いつも通り」でやればよいとは限らないこと。次のCはComplexity(複雑性)で社会の事象が複雑であること。最後のAはAmbiguity(曖昧性)で曖昧であることです。
  これらをまとめて表現すれば、変化が激しく、何が起きるかわからず、複雑で曖昧な世界で私たちは生きていることになります。 
 誰もが新型コロナウイルスとこの状況を結び付けるでしょう。ここ1年の間に世界中で起こっていたことはまさに教科書に出てくるような典型的なVUCAの時代であったといえます。またコロナ前においても、急速に進行するデジタル化の流れや世界情勢の変化等はコロナほどのインパクトはなくとも時代の進行とともにVUCAの時代が進行していることを思わせるに十分なものでした。
 ワクチンが徐々に普及し始めたにもかかわらずコロナ禍が依然として収束の方向に向かっていない現在、このような急激な変化に私たちがどのように対応すれば良いか考えることは必須と言えるでしょう。このような変化が激しい時代には、変化が少ない時代と比べて変化にうまく対応する人とそうでない人との差が大きくつきます。
 コロナ禍でも業績絶好調の会社はデジタル化の波に乗ったとか、コロナ禍におけるリモートワークの流れにいち早く対応した等、簡単に言えば環境変化やそれに対する最新技術による対応が早かった人たちであると言えるでしょう。
 逆に言えば、苦しい会社や人というのは、旧来のやり方を変えずに「遅かれ早かれいずれ終息するだろう」と考えて変化することをせずにひたすら事態の収束を待っていた人が多かったのではないかと思います。
 もちろん全てにおいて新しいものに飛びつくことが良い結果を生むとは限らないし、コロナ禍が当初の予想以上に収束が長引いているなど、結果として悪い方向に行ってしまったという運の悪さもあるでしょう。ただ一つ言えるのは、変化に抵抗していた多くの人たちは「変化に取り組むこともせずに否定していた」ことでしょう。「十分に対象を理解した上で反対する」のと「理解できないし、したくもないから反対する」という、いわば積極的反対と消極的反対があるということです。様々な変化に際しても、「やらずに否定派」が大部分を占めているように見えます。
 このような背景から本連載では、環境変化や技術の変化が起きるときの人々の反応をいくつかに分類したうえで、これからの新しい世界に取り組み、変化を実現していくためのモノの見方や未来を作っていくための創造的思考力はどのようにして発揮すればよいかを題材として取り上げます。コロナ禍の次のフェーズに向けて、これから次々と起こっていく様々な変化という波に皆さんがうまく乗れるようなヒントを提供できればと思います。
様々な事例を取り上げていく前に、それらに共通するもののとらえ方、すなわちフレームワークを始めにご紹介しておきます。図1を見て下さい。
 論理学などで用いられる「ベン図」と同様の形状ですが、これを価値観や技術の変遷の典型パターンを説明するという特定のケースに当てはめることと、それがあたかも2枚のパンケーキが左右にずれて配置されているようにも見えることから「パンケーキフレームワーク」という名称で、社会やビジネスにおける価値観や技術の進化に適用することとします。

図1
 

 これは、旧→新という形で技術や価値観が変化するときの様々な事象(仕事をどうやってすすめるか等)を4つの象限に分けたものです。また、左の円が従来の古い技術や価値観であり、右の円が新しい技術や価値観という関係です。

 そうすると、4つの領域というのは図にあるように
1 従来はできたが、新規にはできなくなった
2 新旧両方の場合でできる
3 従来できなかったが、新しい世界でできるようになった
4 両方ともできなかった

 このように分類してみると、変化に対して抵抗して「試さずに新しいものを否定する」という行動パタ―ンになる人はどのような思考回路になっていると考えられるでしょうか?

 それを変化を容易に受け入れていく人との比較で示したのが図2です。

 

図2
 

  図2の見方ですが、「変革への『踏み絵』」ということで上からの分岐に入り、変革に際した場合の先の2つの円に対する反応を下半分に示してあります。

 要は変化を歓迎しない人というのは、そもそも新しい技術や価値観という右側の円を過小評価しているため円が小さいことに加えて図2の左の「試さずに否定する」の部分のように、新しくできるようになることは考えもしません。

 対して図2の右半分の「変革推進派」に示された人は左右の円の大きさが逆で、新たにできるようになることを次から次へと考えることで、「実はこれまでできなかったことができるようになる」と、能動的かつ楽観的に自分なりの将来像に向けた変化を思い描いていくのです。

 次回から、この図の構図に様々な事例を当てはめてみていくことにしましょう。