苦手から始める作文教室

第9回 「書き出し」を語ろう

「つかみが重要」と言われるように、文章の「書き出し」は難しい。今回はバリエーションを挙げながら「書き出し」を考えてみます。

 今回のテーマは「書き出し」です。作文の最初の文をどうするかについてです。一般に、文章の書き出しは難しいものと言われています。作文もそうですし、小説もそうです。

 この文章の書き出しは、〈今回のテーマは「書き出し」です〉という非常に工夫のないもので、連載だからといってラクをして! と自分に対してちょっと怒りのようなものを感じます。そんなことで君は「書き出し」について語れるのか?

 ならば「書き出し」についてべつの書き出しを少し考えてみることにします。すぐに思いついたのは下の四つです。

1)書き出しは難しいです。
2)一般に、書き出しはとても難しいと言われています。
3)わたしは書き出しが苦手です。
4)書き出しが得意な人なんているのでしょうか?

 1)はとても普通ですが、自分の実感を書いていますね。2)は、この文章の3個目の文をそのまま書いています。3)は1)と似たような内容ですが、わたし自身の苦しさをさらに前面に押し出しています。4)は、書き出しの難しさのあまり逆ギレのようなことをしている感じがします。

 とりあえず気が付くことといえば、すべての文に「書き出し」という言葉が入っていることです。このことで判明するのは、「とにかくその作文でメインとなっていることについて文に書いてしまうと、書き出すことはできる」というみもふたもないことです。

 試しに「書き出し」という言葉を使わずに、書き出しの文を考えてみると以下のようになりました。※「最初の文」「文章の始まり」「書き始め方」といった、「書き出し」と似たような意味の言葉は使わないようにしました。

5)どう始めたらいいのかわからなくて、ずっと悩んでいます。
6)みんなどうやっているのでしょうか。
7)ずっと手が止まったままです。

 いかがでしょうか。十分間考えてみたのですが、ヨボヨボです。もう惨敗という様子です。ずうずうしくも、みなさんに作文の書き方について話そうという職業の人間が、このていたらくです。もっと上手に書ける作家さんは星の数ほどいるのかもしれませんが、わたしにはこれが限界です。

 なので書き出しの一文には、素直にその作文のメインとなることについて書くことをおすすめします。小説の書き出しとなるとまた違ってくるのですが、この連載は作文についての連載なので、まずはシンプルに、書きたいことの主な内容についてを、書き出しに書いてみるとよいと思います。

 たとえば、わたしは月に1回書いているエッセイ(作文と変わりません)の一番最近の仕事で、部屋に長い間コバエがいるということについて書いたのですが、その内容なら「わたしの部屋にコバエがいます」という書き出しにします。実際は、引っ越しと関係した内容を少し書いたので、違う書き出しになっていますが、基本はこれでよいと思います。その前の回は、氷を毎日たくさん作っているので、氷の生産量に自信が出てきたため、「自信が持てることは常にないのだが、最近氷の生産量に関してだけは自信が持てるようになった」という書き出しになりました。「自信がもてることは常にないのだが」が余計ですが、これは文章の飾りのようなものと思っていただいてかまいません。べつになくてもよいものです。

 この二つの書き出しは、大まかに言うとそれぞれ「わたしの部屋」・「コバエ」、「氷の生産量」・「自信」という二つの要素で構成されています。整理してみると、二つの要素の間にも、「主」・「従」のような関係があることがわかってきます。前者だと、「コバエ」が「主」で、「わたしの部屋」が「従」です。後者だと、「氷の生産量」が「主」で、「自信」が従です。

 そんなね、ただでさえ書き出しなんてプレッシャーがきついのに、二つのことをほぼ同時に取り出して書くなんてできないよ、という感じもしないでもないです。もっと少ない労力とプレッシャーで書き出しを考える方法はないだろうかとも思います。時間の制限などがあって、とにかく作文を書き出さなくてはならない、という場合、いったいどういう文から書き出せばよいのでしょうか。

 その場合は、少しだけ落ち着いて、作文用紙を裏向けてみてください。それで、わたしのコバエに関する文章を例とすると、以下のようにうすく書いてみます。「今からコバエについて書きます」。

 次回はこの、「今からコバエについて書きます」という文をどのように発展させるかについての例を書きます。

 

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