苦手から始める作文教室

第10回 書き出しは難しくない――ゼロ文目を書いてみる

前回に続いての「書き出し」がテーマ、今回は実作で具体的に考えます。誰でも書ける「ゼロ文目」に少し情報を足すことで、なかなか工夫のある書き出しに変身します。書き出しはそこまで難しくない!

 前回は、書き出しは難しい、それでも書き出さないといけない場合は、主題にしたいことを書き出しに含めるのをおすすめします、とまで書いて、最後に、作文用紙の裏か空いている場所に「今からコバエについて書きます」とうすく書いてください、というところで終わりました。

 本当は、「今からコバエについて書きます」と書き出してみてもいいのですが、作文を書くのは人生で1回というわけではないでしょうし、毎回これだと飽きてしまいそうなので、これをほんの少しだけ工夫していると見えるような文章に変化させてみましょう。

1)今からコバエについて書きます。
→2)わたしの部屋にコバエがいます。
→3)わたしの部屋にコバエが3日間います。
→4)コバエと3日間同居しています。

 上の文をよく見ていくと、1→2→3の順に情報が増えていっていますね。2)は「わたしの部屋」と「(コバエが)います」という要素が足されて、3)ではさらに「3日間」という情報が追加されています。字数を増やしたいのであれば、3)は「わたしの部屋にコバエがいます。すでに3日になります」というように分けてしまってもよいでしょう。

 4)は「わたしの部屋に××がいる」という状況を「××と同居している」と言い換えてみて、ちょっと、「何があったんだろう?」と思わせるような書き方になっています。授業で書く作文では、ここまで工夫しなくてもよいと思いますが、書けたらちょっと楽しいかもしれません。

 前回で言うと、「コバエ」に限らず「氷」に関する文章でも、同じような展開にできます。

1)今から氷について書きます。
→2)わたしは氷をたくさん作っています。
→3)わたしは毎日氷をたくさん作っています。
→4)最近は、氷の生産量には自信があります。

 「コバエ」の書き出しと同じように、情報量が少しずつ増えていっています。2)は「(わたしは)たくさん作っています」で、3)はそれに「毎日」という要素が加わっています。

 4)は「毎日たくさん氷を作っていること」を「最近の氷の生産量への自信」と言い換えています。

 最終的には「今から××について書きます」という書き出しは使わないとしても、「今から××について書きます」という書き出しは、どれだけ文章を書き慣れていない人も、考え込まずに使うことができる書き出しだと思います。そこに情報を足すことによって、書き出しっぽい文章というのはできていきます。

 作文用紙の裏、または空いたところに「今からコバエについて書きます」とうすく書いてください、とわたしが申し上げたのは、書き出しよりもさらに前の文、書き出しを一文目とするのであれば、ゼロ文目としてその文があれば、書き出しの文も決まりやすいのではないか、と考えたからです。うすく書いたゼロ文目である「今から××について書きます」という文の下に、一つだけ情報を付け加えた文を作り、その後もう一つ情報を足した文章を作る、というようなことをやっていけば、書き出しの文章を作っていくことができます。少しだけ時間を取りますが、作文用紙の白い升目を見つめながら、頭の中だけで文章を作り出そうとしているよりは、いくらかは負担が軽くなる方法だと思います。「書き出し」という比較的むずかしい相手に対する、補助輪だとか補助線を最初に作ってみるというふうに考えてもよいかもしれません。無事、作文用紙に文章を書き出すことができたら、うすく書いた文は消しゴムで消します。

 こう考えていくと、作文の書き出しは難しくもあるし、けれども簡単でもあると言えます。わたし自身は、書き出しは難しいものの、作文の中でいちばん難しい部分かというと、そうでもないというように思います。わたしは、書き出し以上に「書くことがなくなっていく」という状態がいちばん作文の中で難しいところだと思うのですが、書き出しが最初の一文であることを考えると、まだたくさん書くことが残されている状態で書く文なので、書くことがなくなってきた状態よりは比較的むずかしくないと言えます。

 ただ、何事に関してもやり始めることはとても難しいですし、作文もその一つではあります。なので、今回わたしが提案したゼロ文目から発展するやりかたでもいいですし、ただただ心をしずめて「書き出しはめちゃくちゃ難しいというわけでもない」と自分に言い聞かせてみるのでも大丈夫なので、思い切って書き始めてみてください。書き出しである一文目を書いてしまうと、その次の二文目は、それよりは楽になると思います。

 

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