こんにちは、「子どもの宿題や課題に見られる珍プレーを認知科学してみたい!」で始まった連載もついに最終回12回目を迎えました。ここまで読んでくださった皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。
今回は満を持して、ずっと気になっていた子どもの逆さま文字を取り上げたいです。そしてさらに、「鏡文字」と「鏡文字もどき」(逆さまだけど鏡像じゃない)の違いについて考えるきっかけになったいくつかの珍プレー答案をご紹介してみたいと思います。認知科学一般において、人間の能力のなかでも記憶に関わることと、操作(演算)に関わるしくみの違いをひもとくのはいわば共通の関心事だといえます。今回はそういう意味での心理言語学的な見方で「逆さま文字」を見ていく予定です。
さて前回は往年の(?)「犬」と「太」問題について取り上げました。漢字の記憶の単位としては「犬」も「太」も、まるごとのビジュアルで貯蔵されていて、その都度間違った方が取り出されていると考えるべきなのか?それともあるいは、「大」と「、」というパーツ(字素)に分かれていて、それらは別々の部品として存在するのか、犬真面目に考察しました。そして息子のやらかす「犬」と「太」事案の多くは、おそらく後者、つまりパーツの配置ミスだという見方ができるようだと。下の写真の左上(青丸で示す)の例を点の向きも含めてみてみると、「実在する字素(パーツ)の、実在しない組み合わせ」が、まさに配置ミスにより生成された例ではないかと思えます。