苦手から始める作文教室

第11回 伝わる文章とはどんなもの?

書く立場ではなく、受け取る立場に立って考える。さて、どんな文章が伝わってくるだろう。今回は「伝わる作文」のための手法的な部分を紹介して考えます。

 今回の主題は「伝わる文章」です。わたしは作文についてずいぶん書いてきた気がしますが、「伝わる文章」は書けていますでしょうか? わたしにはぜんぜんわかりません。

 このように、突き詰めて言うと、書き手の側から「伝わる文章」を書けているかどうかは、実はまったくわからないことです。まったく、と言い切ってしまうのは、自分が書いたことを自分が理解しているかということと、自分が書いたことを他の人が理解してくれるかということの間には、100と1ぐらいの違いがあるからです。

 たとえば、人間は自分の考えていることはわかっても、目の前の人の考えていることはわかりませんよね。仮に距離が30センチのところに相手が近付いてきてくれたとしてもです。ただ「何を考えていますか?」とこちらがたずねて、目の前の人が「それはこうです」とわかりやすく話してくれたとしたら、考えていることはこちらに伝わってきます。作文というのは、目の前の人がわかりやすく「それはこうです」と話してくれるように、自分が「それはこうです」と文章で説明する作業のようなものです。

 では、どのように書いたら「それはこうです」が伝わりやすくなるのでしょうか。わたしがききたいぐらいなんですが、自分自身が他の人の文章を読んでいてわかりやすいなと思うのは、まずは「何々があった」ということがはっきり書かれている文章です。体育祭についての作文なら「体育祭があった」、友達と遊びに行ったことについての作文なら「友達とカラオケに行った」、ゲームについての作文なら「〈マインクラフト〉をやっている」、というような情報が書かれている文章です。

 でもはっきりとした「何々」がない、「日々思っていること」みたいな文章ももちろんあります。たとえば、第6回のてんぷらについての文章はそうです。その場合は「てんぷらが好きだ」と書けばいいですし、好きでもないし、特定の出来事や場所や対象がないところから始めるのであれば、「最近暑くなってきた」「いきなり寒くなった」みたいなことを書いてもかまいません。その場合は、「暑くなったから自分はこう感じている」とか「暑くなったから世の中はこんなふうに変化しているように見える」といったことをさらに書いたらよいと思います。

 体育祭やカラオケやマインクラフトの話に戻すと、一応書かれていると親切だなとわたしが思うのは、「5月に体育祭があった」とか「最近よくカラオケに行く」とか「ここ2年ぐらいマインクラフトをやっている」みたいな時間の情報です。文に書かれるべき情報として、わたしは英語の5W1H(when where who what why how)を持ち出してもっともらしく説明しようとしましたが、やめることにしました。なぜなら、体育祭は学校でやるのに「where(どこで)」と明記する必要はないし(妹の学校の体育祭、とかなら別です)、マインクラフトをどこでやるのかはそんなに重要だと思わないからです(塾の授業中にやっている、とかなら別です)。

 なので、最低限作文の中で明かされていたらこちらに状況が伝わってくるな、ということは、「what(なに)」で、あったら親切だな、というのは「when(いつ)」です。さらに、それについての「how(どう)」があれば、作文らしくなると思います。あとは必要に応じて、「where(どこ)」や「who(誰が、誰と)」などの情報を加えていけばよいでしょう。

 実例として、体育祭の文に情報を足していった文を書いていくことにします。

 1)体育祭があった。
 2)5月に体育祭があった。
 3)5月に体育祭があって、楽しかった。
 4)5月に体育祭があって、わたしは障害物競走に出た。楽しかった。

 できれば作文の中にあるとおもしろいな、と思う情報は、「why(なぜ)」です。上の文章で言うと、「楽しかった理由」という情報が「why(なぜ)」にあたります。たとえば、「障害物競走に出て楽しかった」という文章なら、「平均台でバランスをくずして落っこちそうになったけど、ちゃんと乗り切れたから楽しかった」というように、何か感じたことに関して理由を思いつくのなら、それを書いてみてください。

 ものすごくざっくり言うと、作文は〈何を・いつ・どこで、などの状況の説明〉〈それによってどう感じたのか〉〈なぜそう感じたのか、自分が思うところ〉を書いていくと、いつのまにか書けるものであると言えます。

 

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