オトナノオンナ

第9回  木枯らし一号

おとなびた幼稚園児がいる、少女のような老婆がいる……。さまざまな年代の女性の仕事、生活、恋愛、を丁寧に追いながらそれぞれの「オトナノオンナ」を描く、一話読み切り小説。 

 アーイ、そろそろおりてこいよー。
 したで、とうさんが呼んでる。
 ダウンきて、ランドセルひっかける。帽子とマフラーつかんで、階段をおりて、靴はく。トースト、いいにおい。このにおいがうれしいうちは、元気。風邪ひいたときは、おえって思うから。だいじょうぶ、学校いける。長い鏡に、にっこりする
 修司さんと育ちゃんが結婚して、駅前のマンションに引越して二か月くらいたった。父さんとふたりだと、なんかまだへんなかんじがする。
 トーストとサラダと、ミルクティー。お店モーニングのAセット、音の消えてるテレビを見て食べる。レジのお釣りを数えたとうさんは、新聞をならべたり、お店のまえに水をまいたり、ひとりだと忙しそう。こないだまでは、修司さんがトーストにバターをぬってくれて、学校のはなしとかしてた。つめたいバターは、うまく塗れないから、しかくのかたまりをのっけたまま、かじる。これはこれで好き。
 ……このごろ、おとなしいよな。
 カウンターでエプロンを巻きながら、とうさんがいった。
 ……そんなことないよ。修司さん、いないだけでしょ。
 そうだよね、とうさんは、ははっと笑った。笑ってるのに、太い眉はこまってる。うちの三人は、みんなおんなじ眉毛。まあ、アイはじいちゃん子だからな。でも、修司さんも育ちゃんも、どっちも好きだろ。ふたりが幸せなんだし、学校から帰ったらいままでどおり、修司さんいるんだし。朝くらい、ゆっくりさせてやろうよ。新婚さんのこと。
 うん。もちろん、それがいいよ。
 にっこりトーストをかじる。ごくんとしても、粘土をのんじゃったみたいに、かたまりがつまって、紅茶をごくごく飲んだ。
 ふたりが幸せで、すごくよかったよ。べつに修司さんがここに住んでなくても、ちっともさびしくないよ。とうさんが四十二才なのに、法律では三十四才の育ちゃんがおばあちゃんになるのも、へんだけど反対じゃないです。近所のおばさんたちにいろいろ聞かれても、知りませんっていえばいいって、とうさんも修司さんもいってました。
 営業中のふだをかけにいった父さんといっしょに、はんこやさんの織田さんも入ってきた。おお、さむいさむい。木枯らし一号なんだってな。いつものね。織田さんのいつものは、Aセットのサラダぬき。野菜がきらいだから。五百円が四百円になる。
 ……なんだい愛子ちゃん、うすら寒い顔して。宿題できなかったのか。子どもは風の子だぞ。
 ……えっ、ぜんぜん寒くないです。それに宿題なんて、学校で終わらせるし。
 あれっ、そうなの、えらいんだねえ。織田さんは、スポーツ新聞をひろげた。とうさんは、あれって顔してこっち見た。いっぱい話すとよくない。
 歯、みがいてくる。きょうは女子会だから、晩ごはんいらないよ、学校終わったら、ミコちゃんちにまっすぐいくからね。
 ……あっ、その日か。了解、気をつけていっといで。
 はなしを変えたので、とうさんは気がつかなかったみたい。ほっとした。立ちあがると、おじさんは、新聞のおっぱいのページを一生けん命読んでいた。
 いってきまーす。
 裏口からおもてに出て、またはーっと息をはく。くちのなかに、つめたい冬がすうすう入ってきた。
 集合場所には、六年生も一年生も来てた。この班に、おなじ学年の子がいなくて、よかった。ずうっと歩いていたいのに、すぐ学校についちゃって、教室に入ると、ちくっとおなかがいたい。これもよかった。うそつかないで、保健室にいける。ほっとして、ランドセルを置く。となりの机と、ちょっとはなれてる。なおそうとしたら、ばかのサカイがとんできた。
 ……かってにさわるなよ。ばいきんつくだろ。
 くちをとんがらせて、ばかな顔でいった。
 ……そんなわかりやすいことすると、先生があんたがいじめしてるって、わかっちゃうよ。
 サカイはばかだから、くちをとんがらせたまんま、机をもどした。
 うしろで、だれか、きいてる。くすくす笑ってるひともいるけど、こわくてそっちは見れなかった。でも、みんなの目が、しろく光ってるのはわかった。
 長田先生は、やさしくて、どんかんな先生です。
 一時間めは、算数で、テストもあった。テストをくばるとき、まえの後藤さんが、指でつまむみたいにしてた。うしろの柳沢さんにわたすと、やっぱりつまむみたいにして受けとった。ふたりとも、そのあとだれかとくすくす笑った。あーあ、いじめ菌が、教室じゅうにデンセンしちゃったんだ。この菌がインフルエンザなら、みんな休んでくれるのになあ。
 テストが終わって、十分休憩になったので、先生のところにいった。先生、おなかいたいです。
 ……あら、秋山さん。ちょっと続いてるわね。だいじょうぶ。
 ……はい。ちょっとだけ、みたいです。
 そう、それなら、保健室にいきましょう。だいじょうぶです、ひとりでいけます。そういったら、先生はいつもどおり、にっこりした。そうね、あなたはしっかりしてるから。
二時間めになった廊下は、雨のあとみたいなにおいがする。だれもいない。歩くと、上ばきが、にちっにちっと音がした。なみだがぽたぽた出てきて、トイレに走って、顔あらって、鼻かんだ。
 保健室の先生は、きのうとおんなじように、熱をはかったあと、手のひらにビオフェルミンをくれた。すこしおなかが疲れてるのかな。そうして、ベッドでやすみなさいといった。
 二時間めは、国語。いまごろみんな、あたらしい漢字を習ってる。
 夏休みに図書館の子ども室で、第二小の子と仲よくなった。国語の宿題のノートを見たら、あたらしい漢字を書くところに、書き順も書いていた。修司さんが、書き順を正しくしなさいっていつもいうから、まねして書くようにした。夏休みが終わって、国語のノートを見た長田先生が、それはとてもいいわね、これからみんなも秋山さんのをお手本にしましょうっていった。それから、男の子に文句をいわれて、女の子もこそこそいうようになった。
 いつまで続くのかなあ。
 しろいベッドのなかで、しろいおふとんに入って、しろい天井をながめているうちに、チャイムがなっちゃった。ぼんやりする時間は、あっというまだった。
なおりました。保健室の先生は、よかったねとにっこりした。教室にもどるとき、職員室のまえで長田先生に会った。やっぱり、なおってよかったねってにっこりした。そして、国語の書きとりの宿題は、黒板に書いてありますから、うつしてねといった。
 教室にはいると、男子がぞうきん投げあっていて、うるさい。宿題は、八十ページから八十二ページのあたらしい漢字を十回ずつ書いてくる。
 ……あーあ、だれかさんのせいで、書き順もかかなくっちゃなんないからなあ。
 あの声は、オシオだ。
 ……ほんと、たいへんだよねえ。
 この女子は、だれだっけ。ふりむかないで、肩をぎゅっとさせて、国語のノートにページを書いた。目をつぶる。
 三時間めは理科、四時間めは図工。給食は、苦手なスパゲティサラダが入ってた。半分くらいのこした。掃除して、みんなが遊んでるときに、図書室で宿題をちょっとやって、ちいさいときに好きだったロッタちゃんの絵本を読んだ。いいな、ロッタちゃんは。引越しして、おままごとしてればいいんだから。
 チャイムがなって、教室にもどるとき。うしろから風が吹いてきた。沖本さん、追い越して、ちょっとふりむいて、また走っていっちゃった。あの子、体育のときは足が遅いのになあと思った。

 五時間めは音楽。六時間目は社会。そうして、先生、みなさん、なんとかさようなら。きょうも、だれともおしゃべりしない。
 やっと終わった。商店街を走って、ちらっと見た。喫茶エバンスはいつもどおり。とうさんと修司さんが、カウンターにいる。
 そのままお店のうしろにまわって、いとこのミコちゃんちにいった。
 ミコちゃんのおじさんとおばさんは、いまは北海道にいるから、ミコちゃんは毎日うちにご飯を食べにくる。でもきょうは育ちゃんとの女子会だから、じぶんちにいた。
 これなーんだ。
 ミコちゃんが、紅茶をいれてくれた。
 オレンジペコ。
 ピンポーン。
 ミコちゃんにいろいろ教わったから、紅茶の色と香りであてられる。ことしのお正月から、いつかふたりでスリランカにいこうって、お年玉を貯金している。
 ……それで、どうだったよ、きょうは。
 ……おんなじだったよ。でも、国語のときだけ、保健室にいっちゃったけど。
 で、どうする、そろそろとうさんに話そうか。
 だめ。すぐいった。
 ミコちゃんとは、生まれるまえからのつきあいだから、かくしごとはできない。ノートのことも、ミコちゃんにだけはなした。ほかのひとには、ぜったいいわないでって、たのんでいる。
 ……アイは、背が高いじゃん。あと、おとなばっかりのなかで育ってるし。そういうとこが、しっかりしてるとか、優等生とかってみられるんだよね。ノートも、いいことだけど、先生がほめたから、めだっちゃったんだね。秋山家って、みんなそうだったみたいだよ。
 ……ミコちゃんも、そうだったんでしょ。
 ミコちゃんは、中学のとき部活の先輩からいじめにあって、ぜんぜん学校にいかなかったみたい。それでも高校にいけて、いまは大学にも入れてる。いかなくても、けっこういけるよって、いう。
 みんな、まるごと悪い子なわけじゃないんだけどね。
 そうなの。だから、こまっちゃうの。
 ……でも、アイは悪くないよ。
 うん。
 ……でも、無理しちゃだめだからね、まだ小学生なんだから。
 うん。
 じゃあ、そろそろいこうか。ちょっと服とか見て、それからごはんね。
 紅茶カップを渡す。ねえ、ミコちゃん。
 わかってる、育ちゃんには、話さないよ。
 月にいちどの女子会は、育ちゃんが結婚してからも続けようねっていってる。
 三十四才と、二十一才と十才でも、とっても楽しい。
 もともとミコちゃんは育ちゃんに髪を切ってもらってて、七五三のときにつれていってもらった。それからうちもみんな切ってもらうようになって、育ちゃんがエバンスにくるようになった。育ちゃんのおかあさんも、喫茶店をしてて、夏にみんなで会いにいった。やさしいおばさん、ホットケーキおいしかった。
 ミコちゃんは、とうさんからお金あずかったからって、ほしかったジーンズとスニーカーを選んでくれた。ミコちゃんは、ポンポンのついてる帽子を買って、そのままここでかぶりますっていった。
 それから、伊勢丹のうしろのお店で、ピザとサラダと、いつもは飲んじゃいけないコーラものんでたら、育ちゃんが入ってきた。
 ……ごめんね。ちょっと店に寄ったら、遅くなっちゃって。
 育ちゃんは、このごろ若くなった、みたいだった。お化粧がうすくなったのと、爪がみじかくなったのと、へんないろのネイルをやめたのと。ミコちゃんは、ぜんぶまとめてニイヅマノイロケっていう。
 ビール飲むと思ったら、ノンアルコールビールだった。
 修司さん働いてるから、悪いなって。首をすくめた。これが、のろけてるっていうのなんだと思った。
 アイちゃん、どう、学校は。
 うん、ふつう。育ちゃんは、あたらしいマンションは、かたづいたの。
 食いしん坊だから、ミコちゃんは、ピザを食べながら、育ちゃんのサンドウィッチ食べたーいっていった。
 ……そうね、今月末には、みんなを呼べると思うよ。でも、修司さん腰がいたいって。段ボールをたくさん持ったからだって。
 ……しかたないよ。だって、あのひと、この子のおじいちゃんだもん。
 ミコちゃんは、ビールでほっぺたがあかい。たしかにねえ。三人でわらった。
 かくしごとしてるって思ったら、さっきまでおいしかったピザが、また粘土の味になった。育ちゃんと、ぱっちり目があった。
 ……育ちゃんの、お母さんもくるの。
 そうねえ、呼ばなきゃなんないわねえ。育ちゃんの眉毛は細い。秋山チームとはちがう。
 ……もう、あのひとったらさあ。引越してから毎週電話してきて、挨拶にくるくるって。
 もう一本たのもうかな。育ちゃんは、ノンアルコールビールをごくってのんだ。ちょっといやだなって思ったら、もう声になっちゃってた。
 ……育ちゃん、あんなやさしいおかあさんのこと、あのひとなんていっちゃだめだよ。育ちゃんのこと、心配してくれてるんでしょ。おかあさんて、やさしいんでしょ。
 育ちゃんが、びっくりした。ミコちゃんが、秋山チームなのに細くしてる眉毛をぎゅっとやってる。
 こういうの、なんていうんだっけ。アラカセギ、だっけ。
 トイレいってくる。ぼんやり考えて、立った。

 トイレってふしぎだ。したくないのに、入るとしたくなる。
 おしっこして出てくると、ミコちゃんがいた。
 ……こらアイ、なにやつあたりしてるの。
 そうだ、それだった。
 ミコちゃんは、こわい顔のまんま、ちいさいころの女の約束覚えてるってきいた。
 もちろんおぼえてる。
 ……秋山みな子と愛子は、ふたりきりのいとこで、親友だから、最強だから、こまったら、たすけあう。
 ……そう。あのときは、ちっちゃいアイが助けてくれたの。こんどは、はんたい。アイを助ける番なんだよ。育ちゃんには、アイがやきもちやいたってごまかしてきたけど、あした、ちゃんと総司さんに話すからね。みんなで考えよう、どうしたらいいか。
 ええー、まだいいよ。
 よくない。
 ミコちゃんは、金髪をざばざばふった。だって、いやなんだもん。アイが、ちっちゃいのにがまんして、しょんぼりしてるの。ミコちゃんは、成人式もしたおとなのくせに、泣き虫でこまる。
 テーブルにもどって、育ちゃんにあやまった。ごめんなさい、育ちゃん。
 育ちゃんは、じぶんこそごめんねっていった。育ちゃんは、さっぱりしてて、やっぱりとってもいいひとだなって思った。
 そのあとは、三人でカラオケ二時間して、帰ってきた。
 お店には、常連のおじさんおばさんたち、それと、なぜかうちのクラスの沖本さんがいる。となりのひとは、お母さんみたいだった。
 ……アイ、沖本さんが、はなしがあるんだって来てくれたよ。あっちでふたりで話しておいで。
 とうさんが、トレイに紅茶セットをのせてよこした。怒ってるみたい。もう、ばれたんだ。
 ミコちゃんをこっそり見ると、こくこくうなずいてる。育ちゃんは、修司さんのほうにいって、沖本さんのお母さんにあいさつしてる。
 出窓の席は、いつもカップルのひとにすすめることになってる。沖本さんは、きれいな椅子だねっていって、深呼吸した。
 アイぴょん、ごめんねえ。
 おおきい声でいったので、お店のひとがみんなこっち見た。もう泣きべそになってる。
 ……べつに、オッキーは悪くないじゃん。
 そんなことないよ、悪いよう。オッキーはミコちゃんよりもっとぽたぽた泣いて、ハンカチをポケットから出した。
 ……あのね、きょうね、おうちで宿題やってたの。したら、おかあさんに、二学期になって、字がきれいになったねって、ほめられたの。それって、アイぴょんがノートの書き方あたらしく教えてくれたからだって、わかったの。それなのにさ、それなのにさあ、みんなちっともわかってないんだもん。先生もさあ、ぜんぜんわかんないんだもん。したら、悲しくなったら、おかあさんがどうしたのっていって、それではなしたら、アイぴょんにごめんなさいっていいなさいって。
 そうなんだあ。ははって笑って、この笑いかた、とうさんに似てるって思った。おかあさんって、よけいなこと心配するんだね。育ちゃんの気もちが、ちょっとわかった。横目でカウンターを見ると、とうさんとオッキーのおかあさんは、おとなの言葉ではなしてるみたいだった。
 ……オッキーありがとう。でも、明日学校では無理しなくていいよ。ほんとにいやになったら、ちゃんと先生にいうから。保健室の先生にもいうから。
 紅茶のんで、カウンターにいっしょにもどった。
 じゃあ、明日ね。
 ばいばい。
 オッキーは、うさぎみたいな目で、でもさっぱりした顔で、おかあさんと手をつないで帰っていった。
 ……ミコは、知ってたね。
 とうさんが、いった。
 ごめんなさい。ミコちゃんがあやまると、修司さんが助けてくれた。アイは、とうさんに心配かけたくないと思ったんだよな。そういうことを考えるだけ、おおきくなったってことだな。育ちゃんは、だまってじっとこっちを見てる。
 ……きょうは、遅いから、もう風呂はいって寝てなさい。そのかわり、明日は六時に起きなさい。とうさん、どうしたらいいか考えてみるから。
 ……アイ、きょうは心配しないでよく寝ることだよ。あしたはあしたの風が吹くから、大丈夫。
 修司さんが、いつもの口ぐせをいった。それをきいたら、ほっとした。
 じゃあ、みなさんおやすみなさい。
 二階にいって、歯みがいて、お風呂にはいった。いろんなことがあったなあ。パジャマ着て出たら、育ちゃんとミコちゃんがいた。ミコちゃんは、置きっぱなしで忘れてたランドセルを持ってきてくれてた。
 アイちゃん、髪切ってあげる。育ちゃんがいった。
 お店じゃないのに、だいじょうぶなの。
 ……だいじょうぶよ、きょうは飲んでないし。親友がこまってるときは、助けあわないとね。
 ……女の約束に、育ちゃんも入ってもらったんだ。
 ミコちゃんは、酔っぱらってるので、にやにやしてる。
 床に新聞をしいて、首にケープまいて、椅子にすわった。
 どんなふうにする、のばしてるんだから、前髪と、伸びたとこそろえとこうか、それだけでも、さっぱりするよ。
 育ちゃんは、明日の朝、修司さんの髪を切ってあげようと思って、お店からはさみとケープを持ってきてたんだって。
 ええとね、いっぱい切って。
 えっ、いいの。寒いよ。ふたりとも、ちょっと心配そうだった。
 ……いいの。みんなのこと、びっくりさせる。
 よし、わかった。まかせなさい。そうして育ちゃんは、しゃかしゃかとはさみで切ってる。うわー、ばっさりやってますー。ミコちゃんは、したから長い鏡をもってきて、動画で撮影してる。
 さいごに、ドライヤーで、がーっとかわかした。
 ……どうですか。
 おおおー。また三人で声をあげた。
 かるーい、男の子みたーい。頭が、ふらふらするよー。さっぱりしたよー。
 ふたりとも、いいよ、にあうよ、かわいいっていってくれた。
 このまま寝ちゃって、明日の朝、とうさんをびっくりさせなよ。でも、寝てから部屋に入ってきたら、ばれちゃう。そういったら、ミコちゃんが、今日買ったばっかの帽子、これかぶっとけばいいってかしてくれた。
 じゃあ、明日、がんばんなね。おやすみ。ふたりが帰った。
 毛糸の帽子かぶって、ベッドにもぐりこむ。おふとんが、ひやっとして、からだをいっぱい動かす。
 オッキー、なんていうかなあ。超びっくりするだろうなあ。きょうから、育ちゃんも親友になったんだ。
 あしたって、いやなこともあるけど、ちょっとおもしろい。木枯らし一号はおわった。木枯らし二号がきても、あしたぜったい学校にいく。

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