世界マヌケ反乱の手引書刊行記念鼎談

マヌケ世界革命は始まっている【前編】

『世界マヌケ反乱の手引書――ふざけた場所の作り方』刊行記念トーク

●「NO LIMIT 東京自治区」とは?

松本 本の内容を紹介する前に、つい最近やったイベントについてお話しします。9月11~17日の約1週間、「NO LIMIT 東京自治区」というイベントをやりました。これは「海外のいろいろなところで知り合ったマヌケな奴らを全部東京に集めて、いっぺんにイベントをやろう!」という趣旨で開催されました。ミュージシャンとかアーティストとかいろいろな人を呼んだんですけど、とりあえず映像をお見せしながら説明します。

 まず、ライヴは、ライヴハウスで3回やりました。台湾や韓国、中国、香港、マレーシアなど、各地でいろいろやってる人たちをみんな集めよう、と。ただのミュージシャンではなく、「今の政府なんて冗談じゃない。すげえ資本主義にまみれて金、金言ってるなんて冗談じゃない!」という反骨心のある奴らを全員集めました。だから最高に面白い感じでやってます。「マヌケを大量に集めて何かやろう! 結託しよう!」という感じだったので、基本的には全部呼ぶ側で面倒を見ようと思いました。寝る場所も全部無料、ご飯も出しますということで呼んだんです。その代わり、交通費だけは出せないから何とか工面して日本に来てくれたら、全部無料で遊べますよ、と。そうやって呼びかけまくったら、180人ぐらい来たんですよ。それで毎日いろんなイベントをやりまくった。とにかく、いろいろなジャンルの人たちが来てライヴをやりました。

●「マヌケ社区(コミュニティ)サミット」

松本 ただの音楽イベントだけではなくて、他にもトークショーとかいろいろなことをやりました。これは「世界マヌケ社区サミット」というイベントです【写真】。

 

  あっ、立っているのは柄谷さんです。柄谷さんはこのとき、「自分はマヌケだ」ってすごく力説してました(笑)。自分たちでいろんな店を開いたりして生活圏をつくり、これを拠点として社会に対抗していく。そのために釜山や台湾、上海から来ている人たちと討論会をした。

「NO LIMIT 東京自治区」は、真面目なイベントから超くだらないイベントまで、1週間で51個もイベントがありました。そこで世界の人たちと交流を深めていった。最初はすごく大きな会場でライヴイベントをやったり物販をやったりするという計画もあったんですけど、それだとただ華々しい感じで終わりになっちゃう。それだと面白くないから、あちこちでイベントをやることにしたんです。東京でいろんなお店をやってる人たちがすごくたくさんいて、そういう人たちが全部の場所(10カ所以上)を使って1週間毎日イベントをやって、それぞれ交流を深めた。

 このイベント全体の目的は、ただ集まってみんなで遊ぶことじゃない。韓国で自分の活動をやってる人、日本でやってる人、台湾や香港、中国でやっている人たちがいるんだけど、そういう人たちは貧乏すぎることもあって、全然交流できてなかった。そういう人たちが集まって、友達になるというのが一番の目的です。お互いに「ああ、あそこにはああいうことをやってる人たちがいるんだな」ということをイメージできるような感じで仲良くなれば、今後すごく面白い動きが出てくるんじゃないかと思いました。

 原発デモの時もすごく盛り上がってたけど、日本は島国だから、日本の中だけでやってるような感じがした。ヨーロッパに行くと、どこかの国で大騒動が起こったら周辺のいろんな国からデモとかに援軍がいっぱい来て大混乱になって、それで問題が解決するなり敗北するなりしたら、みんなまた帰っていく。彼らはお互いに「あそこでは今、こういう問題がある」ということを認識してるんだけど、アジア圏ではそういう感覚が薄くて、お互いに全然協力できてないなと思った。こういう謎の大バカたちがみんな仲良しだったら、どこかの国で何かあった時にみんなが助けに行ったりするんじゃないかなと思ったんです。

●アジアの大人たちが平日昼間に公園で仲良く遊ぶ

松本 これは「東アジア東京オリンピック!」というイベントです【写真】。

 

 これはすごくくだらないイベントなんですけど。180人も来て言語も違ってるから、これはイベント期間1週間の前半で一度仲良くなっておかなきゃいけないなと思って。言葉がほとんど通じないからみんなルールとか全然守らなくて、スポーツが成り立たない(笑)。だから「ルール違う!」みたいなのばっかりで。多国籍の言葉の通じない奴ら、しかも大の大人が平日昼間に公園で遊ぶ(笑)。そういうバカみたいなことをしたら、みんな超仲良くなって。本当に基礎的なことですけど、こういうのをやるのもけっこう大事だなと思いました。たとえば台湾から音楽をやっている人たちが来た。彼らは、台湾で2014年3月18日に学生たちが立法院を占拠したことから始まる「ひまわり学生運動」にも参加していた。とにかく今回集まったのは、世界各地で何かをやっている人たちです。社会運動だけじゃなく、オルタナティヴ・スペースを開いている人同士がバカなことをやって仲良くなるというのが、すごくよかったですね。

●「鎖国反対パレード」

松本 あと、デモもやりました(「世界大バカ集結記念! 鎖国反対パレード」【写真】)。

 

 大量に外国人が来たから「じゃあ、鎖国反対デモをやろう!」ということになった。今、誰も「鎖国しよう」なんて言ってないんですけど(笑)、世の中の流れとしてはそういう傾向がありますよね。ヨーロッパでも移民を排斥するとかレイシズムみたいなのが出てきているし、世界のいろんなところで変な純血主義みたいになってきている。それじゃあ気持ち悪いから、世界大バカ集結記念イベントみたいなのをやったんです。数年前までよくやってたような、トラックの上にステージを作ってライブをしながら街を大混乱にするような感じ。デモは久しぶりだったんですけど、デモで何かやると警察が「あれやめろ、これやめろ」とか超うるさいので、それを何とかしようと思いました。で、今回考えたのが「白人作戦」。「日本の役所や警察は白人に弱い」っていうのをどこかで聞いたことがあるから、とりあえずトップバッターは白人のバンドにして(笑)。「よし、ドイツ人頼むぞ」って言ってドイツのパンク・バンドがうわーっとやったら、警察はどうしていいのかわからなくて「なんかすごく騒いでるけど、言葉が通じないからしょうがない」みたいな感じになった(笑)。そこで前例をつくったうえで台湾のバンド、沖縄のバンドがやるという作戦に出たらまんまと成功しました(笑)。もし途中から警察がダメだと言ったら「さっきの白人はいいのに、なんでうちらはダメなんですか」ということになるから。

 日本ではこういう感じのデモができるんですよね。中国の人も参加したんですけど、彼らはデモなんてほぼ参加したことがないから超興奮してるんですよ。「やべぇ! これがデモか!」みたいな感じで。彼らはこのデモに参加して、こういうのが日本の標準的なデモなのかと勘違いしてるはずです(笑)。今、マレーシアでもデモをやるのは大変なんですよね。すごくストイックで、機動隊と殴り合うようなデモしかないような国の人たちは、「こんなに楽しいデモ、初めて見た」みたいな感じですごく驚いていて。たまたま路上から参加したおばちゃんも、すごく喜んでましたね。「あんたたちはいいことやってる!」みたいなことをすごく言われて。まあ、こんな感じでデモが続くんです。

●駅前路上飲み会

松本 これは高円寺の駅前の路上飲みです【写真】。

 

  実は、これがすごくよかったんですよ。トークショーとかライヴイベントとかデモとかいろいろやったんですけど、イベントが終わった後に行き場がなくなって、結局みんな高円寺の駅前で飲み始めた。180人も外国人が来てて、さらに日本人も来てる。そんなにたくさん入れる飲み屋なんてないから、みんな高円寺駅前で飲んでた。お互い言葉が通じないし、しょうがないから飲んで無理やり交流したり、漢字を書いてコミュニケーションを取ったりしてた。本当にいろいろな人たちが連絡先を交換したり、情報交換したりしていて。「うち、こんな店やってます」とか「今度うちの国に来たら、遊びに来てください」とか、そういう感じでみんな仲良くなって。たとえば台湾と韓国って近いんだけど、それまでは全然交流がなかった。彼らはこのイベントですごく仲良くなって、真面目な社会問題について話し合う一方で、音楽やアートやすごくバカなことについても情報交換していた。

 普通、いきなり路上でこんな大人数で飲んでたら警察が来て「もう帰れ帰れ!」ということになるんですけど、毎日こんなふうになってたら許されるんですよ。だから最初から、やっちゃダメなんじゃないかと思い過ぎてたのかなと思って。やっちゃったら、案外と大丈夫なんだなと。警察は一応来て、「これ、どこから集まったんですか?」って聞いてきたんですけど、なかばとぼけて「いや、インターネットじゃないですかね」って答えて(笑)。「皆さん、お知り合いですか?」って聞かれても「いやあ、わかりませんね」って言ったら、「ああ、そうですか。じゃあほどほどにやってくださいね」みたいな感じでやたら優しくて(笑)。

井野 お巡りさんは「素人の乱」だって知ってたわけじゃなくて。

松本 いや、全然知らないですね。あとは高円寺駅前広場で焼き肉やったり。日本も意外と自由だなという感じがしましたね。

関連書籍