コールハース

スピードの先の、新たな歴史へ

レム・コールハース『S, M, L, XL+』刊行記念・連続書評

 もはや建築、都市の本とはいえない拡張感、スピード感がある。現代のグローバル資本主義、政治的混乱の本質の「良心的批判」を期待した読者は、間違いなく裏切られる。「良心」のかけらもない「反市民社会的」で「非合法」な著者の思考法に圧倒されて、ページを閉じたくなる読者(被害者)も多く出ることであろう。
 原著が出版された1995年は、オウムと阪神淡路大震災の年であり、中国の経済の拡張もはじまって、世界のタガがはずれたという感じがあった。そのカタストロフ感が全編に溢れていて、95年以降の世界のすべてがすでに預言されているかのごとき既視感、フラッシュバック感に襲われた。
 中国では、彼が北京に設計したCCTVを習近平が「奇々怪々建築」と呼んで嫌っているという噂がある。S,M,L,XL的なスケールとスピードの脱臼の起点が中国にあるとすれば、その脱臼した世界を、習近平はつなぎ直して、ソフトランディングさせようとしている様に、僕には読める。それがレム・コールハース的なスピード感への嫌悪感につながり、無意識にレムのCCTVを批判したのかもしれない。レムのスピードの先にある新たな歴史の足音(リズム感)を、行間から、読者自身が読みとってほしい。

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