多摩川飲み下り刊行記念

川を下って世界の酒でべろんべろん

『多摩川飲み下り』(大竹聡著 ちくま文庫)刊行記念対談

『多摩川飲み下り』(大竹聡著)刊行を記念して、下北沢の書店B&Bで大竹聡氏と高野秀行氏の対談が行なわれた(2016年12月26日)。 この本は、多摩川の川沿いに歩いては居酒屋や河原で酒を飲むエッセイだが、大竹氏は、この本に書かれなかった、とんでもエピソードを、そして高野氏は、アジアやアフリカの地で出会ったユニークな酒の話を、それぞれたくさんの写真を見せながら語った。 一杯やりながら、未知の酒の味を想像してご堪能ください。

●われら多摩育ち

大竹 根詰めたら馬鹿ですね。だって下るんですから(笑)。高野さんもご出身が八王子市なんですよね。僕が今住んでいるのは、八王子市の隣の多摩市です。昔の三多摩(西多摩郡、南多摩郡、北多摩郡)のうち、南多摩郡に当たるところです。高野さんが住んでおられたのは多摩の支流のほうですよね。

高野 北野のほうです。

大竹 京王八王子に行く電車と、高尾山口に行く電車が分かれるところ。

高野 そうですね。だから大竹さんのほうが偉いんですよ。本流の上流ですから上流階級なんです(笑)。僕は支流の支流ですから。

大竹 湯殿川で高野少年がいかに遊んだかということは、小説『またやぶけの夕焼け』(集英社、2012年)に書かれています。僕はそれを読ませていただいて、湯殿川の周辺を訪ねました。僕は三鷹で育ち、高野少年はこの川の近くで育った。やっぱり、似た感じがあるんだなと思って。生き物がいるし、探検しようと思えばいくらでもできる。その川が浅川に合流し、日野市を流れる程久保川と合流する。その直後、多摩川に合流して府中で太い流れになるんですけど。ここですね。

【府中四谷橋付近】

高野 素敵ですね。

大竹 疾走していくところがいいですよね。そこで多摩川と合流する。これが府中四谷橋、向こうに見えるのが関戸橋です。こちらが聖蹟桜ヶ丘で、こっちが高幡不動です。ご存知ない方にはまったくピンと来ない、ただの川の映像だと思いますけど。これぐらい空が広い風景が広がってくると、河原に降りてビールを飲んだりするのも大変美味しくなる。多摩川の中流階級に入るところですね。

高野 このへんは広いですよね。

大竹 ええ、このへんになるとすごく広くなって。

 
 
 

これは玉川上水で、多摩川の横を流れてる。

 

 これは拝島のあたりで多摩川に合流する小川が、こんなふうに流れています。魚を釣る人がひとりもいないという不思議な光景なんですけど。こういう橋の付近などでビールを飲んでたりすると、すれ違うおじいちゃんが「駅はこっちだよ」と言ってきたりね。駅がどこにあるかなんて、聞いてないんですけど(笑)。

 

高野 おそらく、何か言わなきゃまずいと思ったんでしょうね(笑)。こんなところでビール飲んでる人がいるから、ほっといたらいかんと。

大竹 僕たち多摩育ちからすると、こういうのってそんなに縁遠い光景じゃないですよね。

高野 なんか、原風景に近いものがありますよね。

大竹 先ほど「東京は奥深い」とおっしゃいましたけど、本当にここは東京なのかと。そういうところをのんびり歩いてきて文章にしたら、筑摩書房という大変奇特な出版社が本にしてくれたという(笑)。それで本日があるという感じですけど。

2017年2月20日更新

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大竹 聡(おおたけ さとし)

大竹 聡

1963年東京生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告会社、編集プロダクション勤務を経てフリーに。2002年10月、雑誌『酒とつまみ』創刊。著書に、『中央線で行く東京横断ホッピーマラソン』『酒呑まれ』『多摩川飲み下り』(ちくま文庫)、『愛と追憶のレモンサワー』(扶桑社)、『ぜんぜん酔ってません』『まだまだ酔ってません』『それでも酔ってません』(双葉文庫)、『ぶらり昼酒・散歩酒』(光文社文庫)、『五〇年酒場へ行こう』(新潮社)などがある。

高野 秀行(たかの ひでゆき)

高野 秀行

1966年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。同大探検部在籍時に執筆した『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)でデビュー。『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)で酒飲み書店員大賞受賞、『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)で講談社ノンフィクション賞、梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞。近著に『地図のない場所で眠りたい』(角幡唯介との共著、講談社文庫)がある。

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