多摩川飲み下り刊行記念

川を下って世界の酒でべろんべろん

『多摩川飲み下り』(大竹聡著 ちくま文庫)刊行記念対談

『多摩川飲み下り』(大竹聡著)刊行を記念して、下北沢の書店B&Bで大竹聡氏と高野秀行氏の対談が行なわれた(2016年12月26日)。 この本は、多摩川の川沿いに歩いては居酒屋や河原で酒を飲むエッセイだが、大竹氏は、この本に書かれなかった、とんでもエピソードを、そして高野氏は、アジアやアフリカの地で出会ったユニークな酒の話を、それぞれたくさんの写真を見せながら語った。 一杯やりながら、未知の酒の味を想像してご堪能ください。

●チェーン店とは思えない会話

高野 せっかくだから、写真を上流階級のほうから見てみましょう。

大竹 これは無人駅になってる二俣尾駅です。

 
 この間、この近くで熊が出て大騒ぎになりましたね。熊が飲食店の冷蔵庫を開けて、食べ物を探してた。結局は捕獲されたんだけど。これは鰻屋の鰻の肝です。
【青梅の鰻屋】
 
【田村酒造】

 この酒蔵は知らなかったんですけど。福生からちょっと歩いたところにある田村酒造場です。

高野 福生辺りに大竹さんも知らない酒蔵があるというのは、すごいですね。しかも、すごく立派じゃないですか。

大竹 すごい板塀で、蔵っぽい建物があって。大きな駐車場もあるから、蔵の見学ツアーみたいなこともやってるみたいで。煙突が見えたから確信して、入っていった。季節が夏だったので酒をつくってはいなかったんですけど、事務所はやってて酒を売ってくれて。あと街道沿いに有名なピザ屋があって。30年ぐらい前に行ったことがあるんですよ。懐かしかったですね。

 ここは車も通れないようなところなんですけど、左側の草がバーッと生えてるところの向こう側に広い多摩川があって、その向こう側は八王子市です。

 

【啓明学園付近】

 八王子とあきる野の間。啓明学園っていうすごく大きな私立の学校がすぐ近くにあります。小学校から高校まであって、地元では大変有名な学校だとうかがいましたけど。ここをずーっと歩いていく道には本当に何もなくて夏場は厳しい感じだったんですけど、それがとてもよくて。

高野 いい感じですよね。

大竹 その後たどり着いた飲み屋が「大吉」という赤い看板が目印のチェーン店です。

 

 聞いたところによると、ここは全国で800店ぐらいあるらしくて。この仕事以降、普段行かないチェーン飲み屋を解禁したんですよ。今まではあまりチェーン店に行かなかったんですけど、チェーン店解禁でそこの「大吉」に入ったらすごく美味かったんですよ。感動しました。親父さんも同い年で、いろいろ喋ってたらお互いに子どもが3人いることがわかって「そうなのか!」と。親父さんは5人つくりたかったんだけど、奥さんから「焼き鳥屋の収入では3人が限界よ!」と言われた。「俺、そう言われて諦めたんすよ」って言われて「そうなのか」みたいな。

高野 とてもチェーン居酒屋とは思えない(笑)。

大竹 思えないでしょう。そこは大変思い出深い飲み屋になりまして。

 先ほどの府中四谷橋付近ですね。広い道に出るちょっと前、程久保川は護岸がある普通の川なんですけど、この脇だけすごくきれいに整備されている。

 

 春は桜が咲いてものすごくきれいなんですけど、ここは時々歩きます。

高野 大竹さんがこんなに美しい爽やかな写真を見せるなんて。

大竹 いやいや。わりかし、そういう子どもだったんですよ(笑)。

高野 何だか全然わからない(笑)。

●高尾山の天狗が現われた?

大竹 先ほど女の人が自転車でゴーッと行く土手をお見せしましたよね。あの土手を朝歩いてたら、川上のほうから黒ずくめの人がどこからともなく小走りでやってきた。「誰だろう。高尾山の天狗なのかしら。カラスかしら」と思ってたらやっぱり吉田類さんだったんです(笑)。

高野 「やっぱり」って(笑)。

大竹 僕が「吉田さん、おはようございます」と言ったら「誰?」って言うから、「大竹です」って言ったら「おお、大竹君じゃないか」ということでがっちりと握手して。

高野 面識はあったんですか?

大竹 ええ。「お互い、今日も夕方から美味しく飲みたいもんな」とか言って(笑)。

高野 吉田さんは何してたんですか?

大竹 ジョギングしてたんです。

高野 吉田さんは鍛えてるって言いますよね。

大竹 僕も柄にもなく、手でキコキコやるトレーニング器具を持ってたんですよ。吉田さんはそれを見て「やってるね!じゃあまた!」って(笑)。

高野 酒飲み二巨頭が偶然出会った。それは美しい話ですね(笑)

2017年2月20日更新

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大竹 聡(おおたけ さとし)

大竹 聡

1963年東京生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告会社、編集プロダクション勤務を経てフリーに。2002年10月、雑誌『酒とつまみ』創刊。著書に、『中央線で行く東京横断ホッピーマラソン』『酒呑まれ』『多摩川飲み下り』(ちくま文庫)、『愛と追憶のレモンサワー』(扶桑社)、『ぜんぜん酔ってません』『まだまだ酔ってません』『それでも酔ってません』(双葉文庫)、『ぶらり昼酒・散歩酒』(光文社文庫)、『五〇年酒場へ行こう』(新潮社)などがある。

高野 秀行(たかの ひでゆき)

高野 秀行

1966年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。同大探検部在籍時に執筆した『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)でデビュー。『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)で酒飲み書店員大賞受賞、『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)で講談社ノンフィクション賞、梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞。近著に『地図のない場所で眠りたい』(角幡唯介との共著、講談社文庫)がある。

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