冷やかな頭と熱した舌

第18回 
母さん、ぼく店長になるよ。

5月20日に盛岡駅ビル、フェザンに2店舗目の出店をするさわや書店、そのフェザンⅡ号店(仮)店長を務めることになった松本大介さんによる開店までの道のりを〈店長日記〉として公開します。
本屋の店長は、その任を受けて開店までにどんな準備、業務をしていくのか? ぜひご一読ください。

■店長日記①

2月19日(日)
予定を前倒しして東京へ。なぜなら数日前に「新店舗の店長はおまえだ!」と言われたから。昔そんなオチの怪談があったことを思い出す。訪れた人をビックリさせるため、都内の書店数店舗を回る。日暮里の「パンの本屋」を訪れて、店長の花田菜々子さんと話した。このように素敵な店にできればよいなと思う。夕方、阿佐ヶ谷の「書源」へ。建物が老朽化したため、この日が最終日。店内は多くのお客さんで賑わっていた。あらためて素晴らしい棚だと思った。同時に、整頓されすぎなくても、カオスでもいいんじゃないかとの考えが芽生えた。頭のメモに書きつける。その後、この連載を担当してくれているKさんとKさんの奥さんの3人で「つきのや」で飲んだ。

2月20日(月)~2月22日(水)
東京にて朝から出版社回り。新店舗の図面を携え報告がてら、あらためて新店舗のコンセプトを説明し協力を仰ぐ。A日出版社でH本さん、A女さんにとてもよいヒントをもらった。〈体験型〉というコンセプトに新たな側面が加わった気がする。と同時に今度の店舗ではやはりPC書がカギになるかも知れないと決意を新たにする。E出版社ではEナレッジのM田さんとも会うことができて力になってもらい、とても嬉しかった。

2月25日(金)
駅ビルのフェザンから正式に出店がリリースされ、衆目を集めるところとなった。常連のお客様より「さわや書店フェザン店、移転するの?」との問い合わせが相次ぐ。「もう一店舗出すんですよ」と答えると皆さん一様にホッとした表情。愛されている店だなと再認識した。

2月28日(木)
フェザン店で自分が持っていた担当、「新書」「文芸書」「人文書」「一般書」の担当を段階的に武蔵と長江に引き渡していっていたが、本日付で完全に自分の手を離れた。出版社の方々から営業でいただく電話にも、状況を説明して二人に取り次ぐ。一抹の寂しさ。明日より新店準備室(そんなのはないが)へと異動します。4年半のさわや書店フェザン店での日々。教えられることばかりで、彼らに何かを残せたのかと懊悩。しかし酒を飲んだらどうでもよくなった。ま、いっか。

3月8日(水)
ぐずぐずと1週間売り場に手を出して、新店の選書を伸び伸びにしていたが今日からやろう手をつけるが、なにせ一人なので何から手をつけていいのか迷う。使えるパソコンがないから自前のiPadを持ってきたら予想以上に時間がかかりビックリ。予定の10分の1くらいしか進まなかった。ちなみに新店の名前はまだ決まっていない。

3月9日(木)
前日の教訓から、自前のノートパソコンを持ち込んで作業をしようと試みるも、iPadのデータをノートパソコンに移すのに手間取った。「自分、不器用ですから」で済ませられたらどんなに人生楽だろう。「選書、選書、きりせんしょ」という言葉がずっと頭を駆け巡っている。「きりせんしょ」とは、岩手の郷土和菓子で表面がギザギザの形になっている餅。死んだばあちゃんがよく作ってくれたっけ。ノートパソコン投入も大した成果は上げられず。果して間に合うのだろうか。


 

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