冷やかな頭と熱した舌

第22回
本屋とメディア
―読者の〈未知〉を〈既知〉に変える「接点」

■本を買うことが「日常」の未来を作る

 これから本を取り巻く状況は、いっそう厳しくなってゆくことが予想される。集まってもらうのではなく、自ら飛び込んでゆく。コミュ障でも、本を愛するならこの危機に立ち上がるべき時である。待つのではなく、アイディアを携えて売りに行く。一人一人が本の魅力を語り、情報を発信しながら顧客を連れてくる。自分がメディアとなる自覚。作り手の背景を積極的に発信する姿勢。

 少し前の文豪ブームは、文豪の生きざまが受けたのだと思う。それならば、いまの書き手の背景まで読者に知ってもらったらどうだろう。文筆業に足場を置いたまま、よりタレント化する道はないものだろうか。そんなことを考えていたら、ひとつアイディアが浮かんだ。
 テレビというメディアの力を借りることになるが、「Battle of Literature(文学バトル)」という番組を各出版社の提供でお送りするのはいかがだろう。ある作家2人が、たとえば夏目漱石の『夢十夜』を題材にプレゼンし、バトル形式で闘うのだ。一方は、夢十夜のなかで「第三夜」が一番だと主張し、もう一方は「第九夜」が好きだという。第三夜における、書き手目線のすごいと思うポイントを挙げる作家に対し、もう一方の作家は、第九夜とベートーヴェンの「第九」の関係について語り始めた……。
 いかがだろう。プロの作り手が、自分なりの作品論と物語のどこに着目するかを明かしながらガチでプレゼンするバトル。略すとBLだから深夜枠がよいだろう。そっちの層も取り込める。いままで本に関する番組というと、単純な本の紹介や、感想を伝える番組が主だったが、作家自身がバトルするのである。バトルの前に本のあらすじを紹介するVTRと、格闘技大会のような決戦前の「あおりVTR」を用いると、より面白さが増す。ビブリオバトルよりも深く本の内容に踏み込めるし、作り手がどういう意図をもって作品に目をとおし、生み出しているのか知る機会にもなる。

 そこまで詳細に本の読み方、味わい方、作り方を示してやらないと、読書という行為に目を向けてくれないと僕は考えている。文学バトルが放映された翌日、バトルに用いられた本が書店で売り切れるぐらいじゃないと未来はない。いくつかの版元さんで、このアイディアを実現してくれないかなぁ。
 本を売ることを「努力」と捉える現状を変えるために、本を買うことが「日常」である未来を作りだすために、僕らができることは業界の外側から業界の内側を変えるアイディアを出し続けることではないだろうか。最近、そんなことを考えている。

テレビでコメンテーターをしている方々の著作を集めたフェア。テレビで様々な発言する彼らは本には何を書いているのか。ありそうでなかった興味深いORIORIでのフェア

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