ちくま新書

星座の探し方から神話、プラネタリウムの裏話まで

7月刊『カリスマ解説員の楽しい星空入門』の序章を公開します

星座探しの旅に出発

 最近、夜空を見上げていますか? 忙しい日々に追われ、頭の上に美しい世界が広がっていることを忘れていませんか? 都会に住んでいると星は見えにくいと思われがちです。
 私は渋谷のプラネタリウムに勤めています。渋谷は、日本でもとくに星の見えない街かもしれません。しかし街明りに負けない明るい星を毎晩見ています。季節ごとにちゃんと星座の移り変わりもわかります。
 星座はおよそ5000年前に、メソポタミア、現在のイラク付近で生まれました。最初にできた最も歴史のある星座は、誕生日の星座です。もともとこれは太陽の通り道、黄道上に見えている星を結んで作られました。占星術のために作られたのではもちろんありません。目的は「暦」を作るため。当時の人々は太陽の動きをよく見ていて、黄道上を太陽が1周する期間を1年と決め、雨季や乾季、種まきや収穫の時期を知りました。やがて黄道上の星座だけでなく、ギリシャ神話と一体になり、夜空は神話に関連する星座で埋められていきました。
 私たちが今晩夜空を見上げた時に見える星座は、数千年も昔の人が見上げた同じ星座です。私たちが目にするもので数千年前と同じように見えるものが星座の他にあるでしょうか。絵にしろ彫刻にしろ、長い時の移ろいとともに風化していく。なのに、星は当時のまま。少しも変わらず夜空に輝いているのです。みなさんは古の人々と同じように、星座を見ることができるのです。それを想像するだけでも気持ちが前向きになります。

おおぐま座とこぐま座。北斗七星から北極星を見つける(©Yasumaro Yaita + Yabu)

星座探しのコツ──場所、時間、方角
 星を見る場所は基本的にはどこからでも大丈夫。自宅からでも、学校や会社の帰りでもどこからでも見ることができますが、できればきれいに見えるところがいい。どこがいいか。
 それは空が開けていて、できるだけ暗いところ。山の中の深い森は、暗いので星がよく見えると思われがちですが、木々でまわりが覆われていると思いのほか空が遮られます。
 意外なお勧め場所は、道の駅です。ただし、駐車場で寝転がるのは危ないので気をつけてくださいね。私はいつも職場のある渋谷から星を眺めています。人間の目は暗闇になれるまで時間が多少かかります。10分くらいはじっくり夜空を見上げてください。徐々にたくさんの星が見えてくるはずです。自宅なら、部屋の電気は消してください。
 星座探しは想像力を磨くことになります。星座は神話の世界。数千年前に同じ星を見上げた人々の知識が受け継がれ、歴史がつながっていることを実感するのはロマンです。
 星座は、見つけやすい形や明るい星から順番に探します。
 たとえば冬ならばオリオン座を覚えてしまうことです。明るい星が多く、形も見つけやすいオリオン座は、一度覚えると目につきます。オリオン座を手掛かりに、順番に他の星をつないでいくのです。
 その際に、星座早見盤があれば完璧です。星座早見盤というのは、星空の地図のようなものです。内側に時間、外側に日付が書いてあり、重なっている2枚を合わせると見たい日付と時間の星の配置がわかるという優れもの。小さなもの大きなもの、紙製、プラスティック製とさまざまな種類があります。初めて購入するなら、大きめの星座早見盤が見やすくていいでしょう。科学館やプラネタリウムには、星座の図がのっているパンフレットがあるかもしれません。スマートフォンのアプリには、空に向けるとそこに見えている星座が出てくるものもあります。

へびつかい座のラス・アルハゲ、ヘルクレス座のラス・アルケチ、さそり座の心臓にあたる赤い星はアンタレス(©Yasumaro Yaita + Yabu)

プラネタリウムにはオペラグラスを持っていこう
 星を探す前に、とっておきの予習の場所はプラネタリウムです。星を見に行く直前にプラネタリウムに足を運んでみてください。プラネタリウムは、季節の星座の見つけ方を教えてくれます。ただ星を見るだけでもよいのですが、その星の名前やそこに伝わる神話などがわかると、星空はもっともっと魅力的に感じるはず。
 昔のプラネタリウムは、天の川を雲のようなフィルムを使って映していましたが、最近は映し出す星の数がとても増え、天の川も無数の星として映している館が多いです。星雲や星団、銀河など淡い天体や二重星も正確に映しています。肉眼で見えないものまでちゃんと映っているのですから、これを見ない手はありません。
 そこで、プラネタリウムに持っていくと面白いのは双眼鏡です。双眼鏡でプラネタリウムの星空を眺めてみると、まるで本物の夜空の星を眺めているような気分になれます。そしてプラネタリウムで覚えた星を、今度は本物の夜空で探してみてください。本物の夜空を見上げると、実際は星座がとっても大きいことに驚きます。
 さぁ、それではさっそく星座探しに出かけましょう。

夏の天の川(©Yasumaro Yaita)