確認ライダーが行く

第25回 デパ地下の確認

 どんなことがあった日でも、行くと少し落ち着く。それがデパ地下なのだった。
 わたしがよく利用するのは、というか、デパ地下ならほぼここなのだけれど、渋谷の東急百貨店(東横店)の「フードショー」である。
 夕飯のおかずを買うこともあれば、手土産を選びに行くことも。手土産を選びに行って決めきれず、自分のおやつだけ買って帰るなんてのはしょっちゅう。
 たいてい地下鉄連絡口から入場する。渋谷のハチ公やスクランブル交差点に近い入り口である。
 入ってすぐはパン屋の「アンデルセン」。いつも込み合っていて、夕方のレジには長蛇の列。季節の菓子パン(子供の日や、ハロウィン、クリスマスなど)も楽しく、ここを通ってまず四季を味わう。
 さらに進むと、心が躍るチョコレートやケーキショップのゾーンである。
「柿の木坂キャトル」のうふプリンは、かわいい。本物の卵の殻の中に流し込まれたプリンたち。紙の卵ケースに入れられてショーケースに並んでいる。一度、帰省土産にしたところ、親戚一同から「わーっ、おもしろーい!」と大歓声。
「食べたあと、卵の殻、もらっていい?」
 子供たちがはしゃいでいた様子が、店の前を通るたびによみがえる。またいつか買いたい、と思って数年が過ぎている。
 その向かいの「ファウンドリー」のフルーツケーキは、旬のフルーツをてんこ盛りにするのが流儀のようだ。メロンの季節はメロン山盛りケーキ、桃の季節は桃山盛りケーキ。痩せたいと思っているときに見るとクラクラする。いや、いつも痩せたいと思っているのだから、毎度クラクラ……。
もう少し進むと、週ごとに出店が代わるお楽しみエリア。
「今週はなにかな~」
 と、確認したいお客で大にぎわい。
 地方のパン屋や、団子屋。有名店の唐揚げ、老舗の鰻屋、広島焼き屋など、いろんなお店がやってくる。おいしい香りがミックスされ、甘いもの? 辛いもの? 今、なにが食べたいのかわからなくなってくる。
 時間がないときは、このあたりまで確認し、買い物を済ませておわりなのだけれど、余裕があればさらに前進。
 たこ焼き屋や総菜屋の前を練り歩き、「崎陽軒」で一旦、立ち止まる。
 焼売の名店、崎陽軒。この店ではちょっと贅沢してもいいことに決めている。買うのは「特製シウマイ」6個入740円。レギュラーの「昔ながらのシウマイ」は6個入300円であるからして、お値段、倍以上だ。「昔ながら」も好きだけれど、特製シウマイは大振りでホタテもたっぷり。夕方にはたいてい売り切れの人気商品だから、あれば買っている。
 ここから先は、野菜や肉、鮮魚のコーナー。これらのものは荷物になるしデパ地下では買わず、地元のスーパーで買うので関係ないのだが、一応チェック。
 そして、最後の砦。日本各地の名産が並ぶ「諸国銘産」だ。奥まったところにある地味なコーナーゆえ、ここまで来る日は、相当、ヒマな日、あるいは、まっすぐ家に帰りたくないような、なんとはなしに空しい日である。
北海道、東北から関西、四国、九州と、その土地、その土地の諸国名産をぼんやりと眺める夕暮れ時。
 自分にはまったく馴染みがない菓子も、そこの出身地の人が見れば数々の思い出が蘇ってくるのであろう。そう思って手に取ればすべての菓子が愛おしい。
 さて、戻るとしますか。
 満喫し、もときた道ではない順路で出口へ向かう。
 デパ地下は、外の世界からわたしを切り離し、空白の時間を与えてくれる。なにも考えたくないときも、なにかを考えたいときも。人ごみの中だからこそひとりになれることもある。
 デパ地下に、宝石やブランドのバッグは並んでいない。少々高い肉であっても奮発すれば持ち帰れる。
 デパートだけど、欲しいものがすべて手に入るフロアにいるのだ!
 ということで気が晴れる日もある。少なくとも、わたしには。

 

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