単行本

素晴らしき宮沢さんの世界

宮沢章夫著『素晴らしきテクの世界』

 宮沢章夫さんの新刊『素晴らしきテクの世界』に絵を描かせてもらった。いつものようにヘンテコなどうしようもないヒトだかなんだかワカラナイものたちだ。もう何冊目になるんだろう、ずいぶんいろいろな本に描かせてもらった。
 ボクは宮沢さんの本に絵を描かせてもらうのがモノスゴク好きだ。そりゃああんなエンピツだか筆だかでヒョイヒョイと描いてるだけだから楽しいだろうよ、と思われるだろうがそれだけではないのだ。
 ボクは宮沢さんから絵を描く仕事をもらうのがスゴクうれしい。それは宮沢さんがすごい劇作家で演出家でエッセイストだからではなく、大学の先輩だからでもなく、辛いものを食わせてもらったからでもない。
 宮沢さんから発せられる「言葉」がもうボクには宝物なのだよ。あの「言葉」にインスパイアされてボクは絵が描けるんだよ。「茫然とする技術」? なんだそれ? 「百年目の青空」? えーっ?
 何の変哲もない言葉が宮沢さんから発せられると、それはもう今までのそれではなく妙な生きものに生まれ変わって、人のひざを後ろからカクンとやったり首筋をなでたり、イタズラを始める。そしてボクはそんな言葉に導かれるように、戯れるように、絵が描けるんだよね。
 それはそれは楽しい時間なんだよ。言葉に絵をつけるとその言葉も表情を持つ。違う絵をつけると言葉もまた別の表情を持つ。そうして何枚も何枚もバカな子供のようにくだらない絵を描くんだよ。コピー用紙に鉛筆で描くもんだからもう下書きも本番もないし、いくらでも描けるし、ただ「言葉」に対して「これでもかっ」「これでどうだっ」みたいなキモチで次から次に描くんだよ。それはもう楽しくないわけがない。
 最初はもう二十年前になるのかな? 「彼岸からの言葉」という作品だった。月刊誌への連載中から絵をつけさせてもらったんだけど、初めて宮沢さんの文章を読んでビックリした。それまでの昭和軽薄体っていうのかな? 「……しちゃったのね」みたいに重いことをことさら軽く書くような文体と違って、くだらないことを重々しく間をつけて「……だ。」と結ぶなんとも新鮮なスタイル。
 そこから醸し出される「この世界はとてつもなくくだらない、けれどもだから愛おしい」みたいなメッセージ。新しいオモシロさにビックリした。「彼岸からの言葉」の単行本の時はサラリーマンやっててヒマがないのに気合い入れてリキテックスで表紙描いたりした。提灯ぶらさげた子供が「言葉」を発してる絵だったなー。
 あれから二十年「牛への道」とか「わからなくなってきました」とかいろんな「言葉」をもらって絵を描いてきた。「牛への道」ってなんだよ? とか「わからなくなってきました」ってこっちがわからないよ(笑)。その都度戸惑ってそしてその戸惑わされるのがうれしくて描いてきた。
 宮沢さんから「言葉」をいただく。
 応えて描く。
 ヘンなオヤジみたいのや ワケのわからないのや 言葉が降ってくる なんとか受け止める それはそれは楽しい 至福の時間 宮沢さんの言葉が空から降ってくればいいのに。 宮沢さん、もっともっと言葉をください。 もっと。 宮沢さんが毎日新刊出せばいいのに。

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