ちくま新書

覚せい剤使用バッシング報道を前に、知っておくべきこと

9月新刊の松本俊彦『薬物依存症』(ちくま新書)の「はじめに」を公開いたします。報道や薬物乱用防止教育で広まった「薬物依存症」への誤解やステレオタイプなイメージを打ち破る本書。 「はじめに」だけ読んでも、気づくことが多くあります。ぜひお読みください。

†本書の構成
 さて、今回、私が筆を執り、本書を上梓しようと考えたのは、薬物依存症 ―― それも、とりわけわが国最大の薬物問題である覚せい剤の依存症 ―― に関して、多くの人が抱いている誤解を解きたいと考えたからです。そして、そのようにして誤解を解くことが、薬物依存症を抱えている本人とその家族が安心して助けを求められる社会、薬物依存症から回復しやすい社会を作り上げる端緒となり、結果的に、診察室で日々自分が向き合っている薬物依存症患者の回復にも資すると信じるからです。
 本書は、大まかに3つのセクションから構成されています。
 第Ⅰ部(第1章・第2章)では、薬物依存症とはどのような病気かを理解し、現在、わ
が国ではどのような薬物が問題となっているのかなど、薬物依存症に関する基本的な知識
を整理することを試みました。
 第Ⅱ部(第3章〜第7章)では、薬物問題を解決するための具体的な方策を吟味し、罰
則強化や規制強化の限界を明らかにし、必要とされる専門的な治療や支援を具体的に論じ
ています。
 そして第Ⅲ部(第8章・第9章)です。ここでは、薬物依存症を根っこまで掘り下げ、
社会として薬物問題とどのように向き合うべきなのかについて、私の考えるところを主張
しています。
 最後までおつきあいいただけますと幸いです。