佐藤文香のネオ歳時記

第11回「あけましておめでたう」「同窓会」【新年】

「ダークマター」「ビットコイン」「線上降水帯」etc.ぞくぞく新語が現れる現代、俳句にしようとも「これって季語? いつの?」と悩んで夜も眠れぬ諸姉諸兄のためにひとりの俳人がいま立ち上がる!! 佐藤文香が生まれたてほやほや、あるいは新たな意味が付与された言葉たちを作例とともにやさしく歳時記へとガイドします。

【季節・新年 分類・行事】
同窓会
傍題 クラス会

 卒業ウン十年とか、ウン十歳の区切りに、と大々的に開かれる同窓会もあれば、毎年のように集合することになっているクラスの仲間たち集団もあるだろう。どちらにせよ、上京組が地元に帰る盆か年末、正月に開催されることが多い。ここでは大きめの会を想定して、新年の季語とした。
 私が初めて大規模な同窓会に出席したのは2016年の1月3日。30歳で集まろうと地元に残っているメンバーが中心になって企画してくれたのだった。日中は中学の同窓会、夜は高校の同窓会と同日に開催された。
 同窓会に行くのは怖かった。中学・高校・大学の同級生の結婚式に一度も行ったことがないくらいには友人と疎遠で、高校時代に至ってはそもそも友人がいたのかすらあやしかった。卒業しても付き合いがあるのは何人かだけ、男子のみ。中学・高校時代通して、容姿・性格ともに「イタい」という言葉がジャストにフィットする生徒だったから(今もそう大きくは変わっていないが)、当時同様多くの人からの微妙な距離感を感じてつらい気持ちになることが予想された。
 しかし、行ってみると自分は案外人気者で、中学時代イケてるグループで私をイジり倒していた男子に「サトゥー、マジで本出してるん? すごくない?」と驚かれたり、ほとんど話したことのない女の子から急に「佐藤さん! 応援してるよ!」と言われたり、多くの人からテレビで見ただのラジオで聴いただの言ってもらえた。たしかに、今のところ私の学年からはメディアで活躍するタイプの、いわゆる「有名人」は出ていない。よって、相対的に私がその役割を担うことになったようだった。テレビといっても、たまに出演していたNHKラジオの番宣が、地元でのみテレビで流れていたというくらいだが、知り合いがテレビに映っている、というのは嬉しいらしい。私も友達がテレビに出るとちょっと嬉しいから、それだな。
 というわけで、同窓会というのは、ある程度学生時代のヒエラルキーを解除するものとして機能することがわかった。そして私は、酒好きなヤツらと酒の話をしながら酒を飲んだ。学生時代の話をするよりも、今うまい酒の話をする方が楽しかった。子連れ可だったから、子連れの人たちは子供たちと盛り上がっていた。何人か来ていた先生たちはほとんど変わっておらず、我々ばかりが大人になっていた。同じクラスだった男の子が二人死んでしまっていた。ふたりの顔も、声も、思い出せた。


〈例句〉
商店街のデカいポストや同窓会  佐藤文香
クラス会はじめて話すやさしい人